レードの新能力「バージョン」の四番目は、ロボベジットだった。その最大の武器である擬似超サイヤ人6に変身したレードは、容赦なく悟飯に襲い掛かった。そして、次々と悟飯に攻撃を浴びせた。一方、悟飯も少ない回数ではあったがレードに攻撃を当てていた。先のバージョン3の際、悟飯の一撃でレードの腹部に罅が入ったが、その罅が今も残っていたので、悟飯は、その罅を集中的に攻撃した。
他方、この試合を控え室で観戦していた悟空達は、試合をしている二人の会話を聞けなくても、気を察知してレードがロボベジットと同等の力を持った事が分かっていた。ところが、レードの闘い方に疑問を抱いていた。
「今のレードの気は、あの時のロボベジット程じゃない。どうやら気を抑えて闘っているようだ。レードは、本気にならなくても、悟飯さんに勝てると侮っているのか?」
「確かにレードは、気を抑えている。しかし、悟飯に攻撃を当てる直前に気を高めている。攻撃を当てた後は、また気を抑えている。それでも一瞬で最大まで気を高められないから、ロボベジットに比べると、攻撃が緩いと言えるだろう」
レードが気を高める時間が余りにも短かったので、ほとんどの者がレードの狙いに気付かなかった。トランクスは、レードが悟飯を軽んじ、手を抜いて闘っているのではないかとさえ思った。他の者も同じ考えだった。唯一、悟空だけは気付いていた。
「以前、オラも同じ様に闘った事があるから分かるが、あれをするとエネルギーの消費を抑えられるんだ。超サイヤ人6は、エネルギーの消耗が激しいからな。でも、それだけが理由じゃねえと思う。レードは、悟飯のタフさを警戒している。フルパワーになって一気に攻めても、悟飯を確実に倒せるとは限らねえ。悟飯が耐え抜き、レードが先にエネルギー切れになる可能性もある。レードは、少しでも長く今の状態を保つ為に、あんな闘い方をしているんだと思う」
悟空の読みは当たっていた。レードは、悟飯のタフさに脅威を抱いていた。自分と悟飯との闘いが、事実上の決勝戦になるとさえ思っていた。そして、どうすれば悟飯に勝てるかを考えた。フルパワーになって闘うのは、戦法としては楽だが、もし悟飯が耐え抜けば、レードのエネルギーが先に尽きる。それならば気を抑えて闘えば、与えられるダメージが小さくなるが、エネルギーを長く持たせられる。こちらの方が悟飯に勝てる確率が高いという結論に達した。
「レードがこんな手の込んだ闘い方をするのは、悟飯を倒すのに細心の注意を払っている証だ。レードは、あれだけの強さを誇りながら、全く油断していない。これでは悟飯に勝機が無いかもしれない」
ロボベジットと違い、レードにとって幸運だったのは、対戦相手が一人だけだった事である。ロボベジットは、自分以上の強さを持ったゴジータや、自分に準ずる力を持ったレリーザ、更には彼等に比べて実力が数段劣っても、決して油断のならない悟空達を次々と相手にしなければならなかった。その為、戦闘中のロボベジットに気の休まる暇が無かった。一方、レードは、悟飯だけを見て、悟飯だけと闘えば良かった。周りに気を配る必要なんて無かった。
幾ら悟飯がタフとはいえ限度がある。自分より強いレードの攻撃を受け続け、気が先程より小さくなっていた。しかし、これが他の者ならば、とっくに死んでいる程のダメージを受けているので、レードは、改めて悟飯のタフさに驚嘆していた。
「ふうっ。ドクター・ハートが録画したドクター・ブレイン戦の映像を観た時、こいつのタフネスには驚嘆したが、改めて自分が闘ってみると、想定以上だ。・・・あれを試しにやってみるか」
レードは、複数の気円斬を悟飯に投げつけた。そして、悟飯が上空に飛び上がったのを確認すると、全ての気円斬を遠隔操作して、上空に向かわせた。
悟飯は、気円斬と気円斬の間を通り抜けて急降下した。そして、気円斬が自分を追って落下してくるのを確認しつつ、地上に居るレードの足元に向けて小さな気功波を出した。気功波が床に当たって煙が発生し、レードの視界を遮った。その直後、地上に降りて気円斬を引き付けてから、再び上空に飛び上がった。レードは、気円斬の進行方向を急に変える事が出来ず、何発かに命中した。
悟飯は、上空で地上の様子を見守っていた。やがて煙が晴れると、バージョン3になったレードが立っていた。気円斬は、レードがバージョン3になった後に当たったので、レードの体を切り裂けずに消滅していた。
レードは、残った気円斬を悟飯に向かわせた。そして、悟飯が動くより先に背後に回り込み、羽交い絞めにした。そして、悟飯がレードを振り解く前に気円斬が飛来し、次々と悟飯に命中した。ところが、悟飯の体は切り刻まれなかった。気円斬は、悟飯の体を切り裂けず、薄皮一枚切った程度で消滅した。
「ば、馬鹿な!?貴様の体は、一体どうなっているんだ!?」
レードが動揺している間に、悟飯は、レードを振り解き、レードの腹部を攻撃した。度重なる腹部への攻撃で、レードの腹部に小さな穴が開いた。レードが腹部をガードすると、レードの顔面を蹴飛ばした。レードは、吹っ飛ばされながらバージョン4になり、更に擬似超サイヤ人6に変身して着地した。
「奴は、地獄以上の地獄を生き抜き、とても修行や実戦では身に付かない頑丈さを手に入れたようだ。もはや常識では測りしれん。レードアイも役に立たん。測定不能だ」
悟飯も地上に降り立ち、レードと向かい合った。そして、レードに飛び掛かったが、レードは、両手に気の剣を作り、それぞれ悟飯の左右の足に投げて突き刺し、悟飯を動けなくした。それから気を最大に高め、悟飯に向けてかめはめ波を放った。それによって闘技場全体が煙に覆われた。続けて二発三発と放った。ここまですれば、流石に死んだと思った。ところが、煙が晴れると、防御している悟飯が立っていた。気が大分減っていたが、それでも生きていた。
「化物め!まだ生きていたか!しぶとい奴め!」
「それはこっちの台詞だ。とてつもないパワーだ。流石に死んだかと思ったぞ」
悟飯は、自分の限界が近い事を悟り、もう勝ち目が無いと思った。ならば敗れる前に、明らかにさせておきたい事を尋ねた。
「レード!答えろ!お前は、父さんと悟天を闘わせる為だけの理由で、アイスを殺したのか?」
先刻、ベジータ対フリーザ戦で、フリーザは、レードを唆したとだけ話し、当時の会話の内容まで伝えていなかった。フリーザが隠したかった訳ではなく、何年も前の事なので、詳しく覚えていなかった。
「またその話か・・・。アイスを殺したのは、俺が甘さを捨て、冷酷非情な真の帝王となる為だ」
「何が真の帝王だ!そんな事の為に、お前は、大事な娘を死なせたのか!?」
レードは、痛い所を突かれ、つい感情的になって声を荒げた。
「黙れ!ならば貴様に尋ねる!もし地球を守る為に、貴様の娘を死なせなければならないとしたら、どうする気だ!?結局は貴様も娘を犠牲にしていたはずだ!」
「違う!もしそんな状況になったら、俺は、必死で考える!どちらも助けられる方法をな!お前は、考えたのか!?」
レードは、返答に窮した。悟飯は、畳み掛けた。
「お前は、普段は冷静沈着なくせに、アイスに関する時だけ感情的になる。つい我を忘れる程、大切に思っているからだ!そして、冷静さを失って短絡的にしか考えられないから、フリーザ達の口車に乗せられたんだ!それと、帝王になる為に殺したと言ったな!実際に殺して、真の帝王とやらになれたのか?違うだろ!本当は今でも後悔しているんじゃないのか?」
「黙れ!これ以上は喋るな!」
悟飯が発した言葉の一言一句は、レードの胸に鋭く突き刺さった。レードは、悟飯の言葉を聞くのが耐えられなくなり、悟飯を一刻も早く黙らせるべく、猛烈な勢いで襲い掛かった。エネルギーの配分を気にしない程に逆上し、悟飯を激しく攻撃し続けた。怒りで悲しみを掻き消すかのように。
悟飯は、攻撃を受けて何度も倒れたが、その度に起き上がった。しかし、レードも諦めずに攻撃を続けた。今のレードには、エネルギーの残量を気に掛ける余裕など無かった。最早どちらが先に力尽きるかの根競べだった。やがて悟飯は、再び起き上がってこなかった。レードの勝利が宣告されたが、レードは、尚も攻撃を続けようとした。しかし、超サイヤ人6もどきの変身が解け、バランスを崩して片膝を付いた。
「い、今、孫悟飯を殺しておかなければ・・・」
レードは、残った力を振り絞って、悟飯の元まで歩いた。ところが、この時、悟空が瞬間移動で闘技場に現れた。悟空は、倒れている悟飯を抱え上げた。その悟空にレードが話し掛けた。
「俺を殺すなら、今がチャンスだぞ」
「そんな事はしねえ。おめえとは決勝戦で正々堂々と決着を付ける。本来なら十分後に次の試合が始まるが、流石に十分じゃ回復出来ねえだろ?おめえが完全に回復するまで、試合の開始を待っててやる。じゃあ後でな」
悟空は、悟飯と共に闘技場を後にした。
「くっ・・・。バージョン5を使わずに孫悟飯に勝てたのは、奇跡と言える。あれだけは出来れば使いたくなかった。しかし、孫悟飯を殺せなかった事を考えると、やはり使うべきだったかもしれない」


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