其の百五十 ボラリスを超えたボラリス

準決勝第二試合の悟飯対レード戦の序盤は、悟飯が優勢だった。レードは、状況を打開する為、バージョンを更に上げる事にした。そして、レードが「バージョン3!」と叫んだ途端、レードの全身が白一色になった。また、レードから気が全く感じられなくなった。たったそれだけなのに、悟飯は、レードがどう変化したのかを悟った。

「今度はポラリスか・・・。確か全宇宙で最も軽く、最も硬い金属だったな。そして、ポラリスが人型になったボラリスを倒すのに、父さん達が随分と苦戦したと聞いている」
「そうだ。お前に小細工は通用しない。ならば、真っ向勝負で倒すまでだ」

悟飯の指摘通り、レードの体は、内側の一部を除いて、全てポラリスになった。つまり、レードは、生物でなく金属になった。その為、レードからは気が感じられなくなった。

ジンには無数の特殊能力があるが、改造されて日が浅いレードが多くの能力を使いこなせるはずがなかった。簡単な能力なら使えたが、どれも悟飯に通用しそうにない。一方、気を使えず、発光する以外には何の特技も無いボラリスだが、身体能力に優れていた。レードは、ジンの特技を使って闘うより、ボラリスになって闘う方が、悟飯を倒せる可能性があると判断した。

ドクター・ハートがレードにボラリス化する機能を搭載した時の苦労は、ジンに改造した時の比ではなかった。レードをジンに改造するのは、自分の体をジンに改造したドクター・キドニーから送られてきたジンの設計図があったので、設計図通りにレードを改造すれば良かった。

しかし、ポラリスを発明したドクター・ストマックは、無生物が人型になり、人の様に意思を持って動く元素コアを発明したが、人の体を金属に変える手段を編み出した訳ではなかった。生物と金属とでは明らかに属性が違う。その属性を自由に変えられなければならない。その方法を、ドクター・ハートは、苦労して編み出した。

「どうやらサイボーグ化した貴様は、死んだジニア人達が造り出した戦士達になれるようだな。しかし、父さんが言ってたぞ。ボラリスは、五十八号より弱かったとな。俺は、その五十八号を倒した。ならば、ボラリスになっても俺には通用しないんじゃないのか?」
「今の俺を、孫悟空達が闘ったボラリスと同列視するようでは、まだ俺の恐ろしさを分かっていないな。すぐに思い知らせてやる」

レードは、猛スピードで悟飯に迫り、悟飯の左頬を殴った。続けて悟飯の腹部を蹴り、最後に尻尾で悟飯を吹っ飛ばした。吹っ飛ばされた悟飯は、両手で着地したが、すぐにレードが突っ込んで体当たりされ、再び吹っ飛ばされた。

悟飯は、上手く受け身を取れず、床に激突した。レードは、仰向けに倒れている悟飯に馬乗りとなり、マウントポジションの体勢で悟飯の顔を何度も殴った。悟飯は、ブリッジの体勢になってレードを上空に飛ばし、レードに向かって拳を突き上げた。しかし、レードは、パンチを避けて床の上に降り立った。悟飯は、気を取り直して攻撃を何度も繰り出したが、レードは、全ての攻撃を避けた。

この光景を控え室で観ていたトランクスは、レードのスピードに疑問を抱いた。

「おかしい。レードがボラリスになったのは分かるが、それにしては動きが俊敏過ぎる。以前に悟空さん達が闘ったボラリスは、あそこまで速くはなかったと思う。同じボラリスなら、同じスピードでないとおかしいのではないか?」

以前ボラリスが闘うのを実際に観ていたトランクスは、ボラリスが動く速度を知っていた。それと比較し、今のレードの方が速いように感じられた。この疑問に悟空が答えた。

「オラ達が闘ったボラリスは、誕生したばかりで自分の体を上手に制御出来なかったんだと思う。十の距離を移動しようとしても、結果として二十も三十も移動してしまっただろう。体が軽過ぎるからだ。なので動き過ぎないよう、スピードを抑えていたんだろう。一方、レードは、今の体を存分に使いこなしている。十の距離を移動しようとすれば、きっちり十だけ移動するはずだ。だからレードの方が速く感じられるんだ」

悟空の指摘は正しかった。ボラリスは、産み出されて、すぐに悟空達と闘わされた為、自分の体を上手く使いこなせずに振り回されていた。それでも悟空達を苦しめる事が出来たのは、秀で過ぎた身体能力を持っていたからだった。

「それにレードは、ボラリスの失敗を教訓にしているようだ。多少の攻撃を喰らっても平気なはずなのに、それでも全ての攻撃を避けている。ポラリスボディと言えども完璧でない事を知っているんだ。悟飯の攻撃を喰らい続けていれば、幾ら頑丈な体でも劣化して、いずれ破壊される。それを避ける為に攻撃を躱しているんだ。こいつは思ったより厄介だぞ」

悟空達と闘ったボラリスは、自分の体の硬さに自惚れ、わざと攻撃を受けていた。そのせいで劣化が進み、最終的に破壊されて倒された。しかし、ドクター・ハートは、以前ハートボーグ達に入手させた悟空の記憶から、ボラリスが敗れた経緯を知った。そして、それをレードに教えた。

レードは、自分の体の硬さに慢心せずに攻撃を避けた。攻撃を受けなければ劣化のしようがない。仮に攻撃を喰らっても、少々の衝撃ではビクともしない。悟空達は、今のレードが自分達が闘ったボラリスより何倍も厄介な相手だと思った。それでも悟飯が負けるとは思わなかった。誰もが悟飯の強さに信頼を寄せていた。

悟飯は、攻撃を避けられても諦めずに攻撃を続け、少しずつレードに攻撃を当てられるようになった。しかし、どれも掠った程度なので、レードの体に損傷が無かった。一方、その何倍もの攻撃を受け、体に傷が増えていった。ここまでは不利な展開だったが、機を捉えてレードの両手首を掴む事に成功した。

「打撃は余り効きそうもないが、これならどうかな?」

悟飯は、両腕を左右に大きく広げた。レードの体は悟飯より小さい為、両腕を横に広げた時の長さもレードの方が短かった。しかも硬さのせいで伸張しなかった。それ等の要因により、レードの両腕は根元から捥げた。悟飯は、捥ぎ取ったレードの両腕を放り投げた。

「硬さと軽さが、今度は仇になったな」
「ぐっ・・・馬鹿力め」

レードは、悟飯から離れると、バージョン2にダウンした。そして、両腕を再生させ、再びバージョン3に戻した。ボラリスの体には再生能力が無いから、レードは、ジンの形態になって両腕を再生させた。これには流石の悟飯も面食らった。ボラリス形態時のレードを頑張って傷付けても、レードがジンの形態になって再生させれば、これまでの努力が水泡に帰すからである。次にレードを傷付けたら、ジンの形態になる前に倒す必要があると悟飯は認識した。

悟飯は、別の戦法でレードを攻略する事にした。まず衝撃波を放ってレードを吹き飛ばした。軽過ぎる体重の為にレードは、その場に留まる事が出来なかった。そして、吹き飛ばされている間、自分の体を制御出来なかった。悟飯は、それを見越してレードを追い、レードの腹部を激しく殴打した。悟飯の拳は傷付いたが、レードの殴られた箇所に罅が入った。レードは、着地してから罅に気付き、思わず動揺した。

「こ、この体に一回の攻撃で傷を付けるとは・・・」
「ポラリスは確かに硬いが、俺の力でも破壊出来ない硬さではない。俺の体が壊れるのが先か、お前の体が壊れるのが先か。もう再生はさせない。次にジンの形態になったら、再生させる前に貴様を倒す」

悟飯は、レードの動きを封じれば、狙った箇所に攻撃を当てられると見抜いた。同じ箇所を何度も攻撃すれば、そこが致命傷になる。そして、レードの動きを止める有効な手段は、風圧だった。衝撃波や気合砲等でレードを吹き飛ばせば、わずかな時間ではあるが、レードは、自身の体を制御出来なくなる。その間、レードの体を自由に攻撃出来る。

悟飯の考えている事は、レードにも分かった。そして、どうにもならない事も分かった。軽過ぎる体重だから、わずかな風圧でも簡単に吹き飛んでしまう。一箇所からの衝撃波なら避けられるが、四方に衝撃波を出されれば、躱しようがない。そして、自分が吹き飛ばされている間は、悟飯の独壇場になる。レードは、ボラリスの意外な落とし穴に愕然とした。

「仕方ない。こうなったらバージョン4だ!」

バージョン3に見切りを付けたレードは、バージョンを一段上げた。外見は元のレードと同じになり、気が感じられるようになった。そして、レードが気を高めると、顔と手の平と足の裏を除く体の表面が毛に覆われた。更に体の周囲を飛び交う火花の量が倍に増えた。この変化だけでも悟飯を驚かせるには充分だったが、何より悟飯を驚かせたのは、その気の大きさだった。

「な、何て気だ・・・」
「バージョン4は、ロボベジットだ。このバージョンでの特筆すべき点は、超サイヤ人6もどきに変身出来る点だ。幾らタフな貴様でも、超サイヤ人6の力による攻撃には耐えられまい」
「これが超サイヤ人6か・・・。話には聞いていたけど、想像以上に大きな気だ」

ドクター・ハートは、ドクター・ラングと協力してロボベジットを製造した。そして、作業に関わる内に、製造工程を全て把握した。その為、ロボベジットと同じ能力を持つようレードを改造するのは、造作も無い事だった。

また、ロボベジットは、ゼロベースからスタートし、事前に計算した強さになるよう試行錯誤を重ね、限りなく人間に近いロボットとなるよう製造されたので、完成までに時間を要した。しかし、今回は原型があり、限りなく人間に近くする必要なんてないから、バージョン4の内蔵に時間が掛からなかった。

一方、控え室で観戦していた悟空達は、レードの気に圧倒され、初めて不安そうな顔になった。

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