悟空と悟天の二度目の親子対決は、激闘の末に悟空の勝利で幕を閉じた。闘いを終えた悟空は、倒れそうになったが、客席に居た悟飯が急いで飛んできて、倒れかけた悟空を支えた。一方、敗れた悟天は、倒れたまま、悟空に話し掛けた。
「俺を殺せ。生き恥を晒してまで生きていたくない」
「恥?何処が恥なんだ?強い奴だらけの武道会で準決勝まで勝ち進み、ここまでオラを苦戦させたんだ。誇りに思えば良い」
「俺を生かしておけば、いずれ貴様を殺すぞ」
「おめえには無理だ。実力うんぬんの話じゃねえ。おめえ自身が望んでねえからだ」
話し終えた悟空は、悟飯に支えられながら退場した。悟天は、その後姿を見えなくなるまで名残惜しそうに見つめていた。
悟空は、仲間達が居る控え室までの通路を歩きながら、笑みを浮かべていた。それを見た悟飯が悟空に話し掛けた。
「父さん。随分と嬉しそうですね」
「ああ。悟天があんなに強くなったんだからな。それに悟天は、必ずオラ達の元に戻ってくる。オラは、それを確信した」
控え室に戻った悟空は、すぐに餃子に回復してもらった。そして、回復が済んだ悟空は、チチに話し掛けた。
「悪いな、チチ。悟天を殺せなかった」
「悟空さは悪かねえ。オラの方が間違ってただ。オラは、いつか悟天が戻ってくるのを信じて待つ事にするだ」
チチは、悟空と悟天の試合を観て、自分の考えが間違っていた事に気付いた。悟天が変わってしまったからといって、その殺害を悟空に頼むのは間違いだった。悟空の様に悟天を信じるのが大事だと悟った。そして、悟天を信じる事で気分が楽になった。
一方、悟天は、レードの部下達によって、メディカルマシーンがある部屋に連れてきてもらっていた。ところが、部屋の中にドクター・ハートが待ち構えており、悟天を痛烈に批判した。悟空を殺しておきながら生き返らせようとし、しかも勝利が決まっていた試合を再開させて敗れた事が許せなかったからである。それに対して悟天は、反論せず、終始無言を貫いた。やがてドクター・ハートは、舌打ちして部屋から出、レード側の控え室に戻った。
それから十分が過ぎ、二十分が過ぎたが、次の試合の開始を告げるアナウンスが流れなかった。
「変ねえ。もうとっくに始まっても良いはずなのに・・・。何をしてるのかしら?」
「レードが会場に居ないから試合を始められないんだ。気から察するに、レードは、会場から離れた場所に居る。他の奴ならともかく、あいつが不戦敗にはならないだろう」
そして、三十分が過ぎ、ようやく悟飯とレードの登場を促すアナウンスが流れた。悟飯は、すぐに闘技場に姿を現したが、レードが一向に現れなかった。
「レードは、何をしているんだ?わざと遅れて俺を苛立たせ、闘いを少しでも有利に進めようという魂胆か?」
悟飯は、闘技場の中央で腕を組み、レードの登場を待った。その間にレード側の控え室では、メディカルマシーンによって回復した悟天が戻ってきた。ゴカンは、悟天に話し掛けた。
「父ちゃん。もうちょっとで勝てたのに、惜しかったな」
「惜しいも糞も無い。負けは負けだ」
悟天は、負けた割には晴れやかな顔をしていた。その理由がゴカンには分からなかった。この親子のやり取りを、側に居たドクター・ハートは、冷ややかな目で見ていた。
更に十分が過ぎ、ようやくレードが空の彼方から飛んで来た。レードは、悟飯の目の前で着地した。
「待たせたな」
「余りにも来るのが遅いから、怖気付いて逃げ出したのかと思ったぞ」
「馬鹿を言え。色々とやる事があって忙しいんだ。ここに来る前に、これまでの経緯を聞いた。孫悟天が一度は試合に勝っておきながら、試合を続行させて負けたと聞いた時は驚いたがな。まあ、俺が決勝戦で孫悟空と決着を付ければ済む話だ。その前に、最も厄介な貴様を殺す」
レードは、悟空よりも悟飯に脅威を感じていた。悟空は、破壊力のある必殺技を有しているが、その分エネルギーの消耗が激しく、何度も出来ない。それに対して悟飯は、驚異的なタフさがある。それに加え、超サイヤ人に変身しないので、エネルギーの消費も大幅に抑えられる。悟飯と闘えば、長期戦になるのが必至で、エネルギー配分を考えないと、レードの方が強くても敗れる可能性がある。そういう意味で悟飯は、レードにとって厄介この上ない相手だった。
「・・・そうか。お前が遅れて来た事は、特に気にしていない。そんな事より、どうしてアイスを死なせた?お前の大事な娘だったんじゃないのか!?」
「・・・どうやら真相を知ったようだな。しかし、お前には関係ない話だ」
「関係ない訳あるか!そのせいで父さんと悟天が殺し合う悲しい闘いが繰り広げられたんだぞ!それに、自分の娘を策略の道具に使うとは許せない!娘を持つ親としてな!」
悟飯が唯一レードを評価していた点は、娘のアイスを大事にしていた事だった。しかし、アイスを無残に死なせた事で、レードに対する悟飯の評価が地に落ちた。そして、家族を大事にしないレードのやり方が許せなかった。
「孫悟飯が怒る前に片付けたかったが、そうはいかないようだな」
レードは、バージョン2でジンモードになった。今のままでは、試合開始早々に瞬殺されるかもしれないと思ったからである。
試合の開始を告げるアナウンスが流れた。悟飯とレードは、同時に身構え、しばらく互いを見つめ合った。先に動いたのは悟飯だった。悟飯が果敢に攻め、それに対してレードは、応戦しようとしたが、悟飯の動きが速くて対応出来ず、殴り飛ばされた。悟飯は、レードを追い、更に何発も殴った。レードは、殴られながら息を吐いたが、それに気付いた悟飯は、体を回転させてレードが吐いた息を四方に分散させた。
「今の息を吸うと、能力を一時的に低下させる効果がある。そうだろ?」
「何だと!?何故それを知っているんだ!?」
レードが吐いた息は、ジンが吐いたのと同じだった。かつてレードは、ジンと対戦した際、ジンが吐く息の異常性に、すぐには気付かず術中に陥ったが、悟飯は、即座に気付いて的確に対処した。レードは、悟飯の状況判断の見事さに仰天した。
ならばとレードは、上体を反らし、胸部と腹部の間の穴から複数のシャボン玉を出した。ところが、悟飯は、レードの背後に回りこみ、レードを前方に蹴飛ばし、レード自身にシャボン玉を当てた。シャボン玉に当たった肉体の部位は溶けてしまった。しかし、レードの肉体は、すぐに元通りに再生した。
「そのシャボン玉は、触れたものを溶かしてしまうんだろ?残念だったな。俺に当てられなくて」
レードは、悟飯の余りにも適切な対応に疑問を持った。そして、一つの答えを導き出した。
「貴様・・・。俺がジンの能力を持っている事を知っているな?」
「ああ。俺は、惑星ジニアに何年も居たから、ジンとかいう怪物の情報も耳に入っていた。五十七号と闘った時に居た分身も、ジンの能力によって産み出したものだろ?先程は気付かなかったが、後になって思い出した」
ドクター・ブレインの元には、他のジニア人の発明品についての報告が頻繁に届いていた。その報告を、彼の傍に居た協力者達も同時に聞いていた。そして、悟飯は、ドクター・ブレインの協力者達がジンの能力について話していたのを側で聞いていた。悟飯を含め実験体となった人達は、どうせ死ぬと思われていたので、協力者達は、彼等の前で平気で話していた。その為に悟飯は、ジンと実際に会った事がなくても、ジンの能力を知っていた。
レードは、驚嘆した。悟飯の強さは予測済みだが、怒りながらも物事を冷静に分析している事に驚きを禁じ得なかった。
「・・・流石は孫悟飯だ。バージョン2では歯が立たないようだ。更にバージョンを上げざるを得んな」


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