悟空と悟天の宿命の対決が幕を開けた。序盤は悟天が優勢で、悟空が何度も攻撃を喰らった。そして、ドクター・ハートは、控え室でモニター越しに試合を観戦し、冷笑を浮かべていた。その場にメディカルマシーンで傷を回復させたゴカンが急いで駆けつけてきた。
「ああっ!もう始まっちゃったか!おい!今はどっちが勝ってるんだ!?」
「騒がしいわね。安心しなさい。今の所は孫悟天が勝ってるわよ」
「まあ、当然だな。・・・あれ?何だ?あの金の輪は?」
ゴカンは、早くも悟天の頭に金の輪が装着されている事に気付いた。
「おい!さっきまで父ちゃんは、あんなのを頭に付けてなかったぞ。それに、あんなのを父ちゃんは持ってない。お前が父ちゃんの頭に付けさせたのか?」
「渡したのは確かに私だけど、孫悟天が自分の意思で自らの頭に付けたのよ」
「あの輪は何だ?お前の持ち物なら、何か仕掛けがしてあるはずだ」
「子猿のくせに、勘だけは鋭いのね。良いわ。教えてあげる」
ドクター・ハートは、悟天にしたのと同じ説明をゴカンにもした。説明を聞いてる内に、ゴカンの表情が険しくなっていった。
「一時間以内に孫悟空を殺さないと、父ちゃんが死ぬだと!?幾ら父ちゃんが強くても、一時間で孫悟空を倒すのは無理だ!よくもあんな物を・・・」
「もし時間が短いと孫悟天が判断していれば、その場で抗議していたはずよ。でも、『一時間も要らん。三十分で充分だ』と言ったのよ。仮に時間切れで死んでも、自業自得よ」
「くそっ!俺がその場に居れば止めたのに・・・」
ゴカンは、ドクター・ハートの言う事を疑っていたが、今は闘っている最中の悟天に真偽を確かめられないので、言われた事を鵜呑みにするしかなかった。
一方、別の控え室では、悟飯達がモニター越しに試合を観戦し、悟空の劣勢に表情が青ざめていた。
「あの悟空さんが押されるなんて・・・。悟天は、俺と闘った時より強い」
「確かに悟天は強い。しかし、カカロットが弱い」
「ベジータさん!何て事を言うんですか!悟空さんを弱いだなんて・・・」
「落ち着け、ウーブ。父さんの実力は、あんなものじゃない。一緒に修行した俺には分かる。父さんが本来の力を出せないのは、悩んでいるからだ。悟天をどうすべきかでな」
悟飯の指摘は正しかった。悟空は、悩みながら闘っているせいで、動きに精彩さが欠けていた。そして、いつもなら避けられる攻撃を喰らっていた。
「相手が明らかな格下なら、悩みながら闘っても、問題無いだろう。しかし、今の悟天は、そうじゃない。悩みながら闘って勝てる相手ではない。悟空は、悟天を生かすべきか殺すべきか決めるべきだ。そうしないと、何も出来ずに殺されるぞ」
「自分の子供を殺す決断なんて、出来る訳ないじゃない!これが武道会でなければ、お爺ちゃんの加勢をしたいのに・・・」
悟空の不振には、悟天も気付いていた。悟天は、次第に苛立ちを募らせ、遂に爆発した。
「孫悟空!俺を殺すつもりで掛かって来いと言っただろう!もっと真面目にやれ!これ以上ふざけた闘い方をしていると、すぐにでも殺すぞ!」
「くそー。ど、どうすりゃ良いんだ!?」
悟空にとっての理想の展開は、悟天を殺さずに勝ち、その後に話し合って仲直りする事だった。そして、そうする為には、悟空が悟天より一回り強くなければならなかった。何故なら、悟天は、悟空を殺すつもりだから、危険な技や、汚い戦法も使える。そんな何でもありの悟天に対し、正攻法で勝つには、実力が互角や僅差で上回っている程度では物足りなかった。
しかし、悟空の想像以上に悟天が強かった。まだ悟空は、悟天の真の実力を把握しきれていないが、変身前でこれだけ強く、しかも余裕があるので、自分と互角か、それ以上かもしれないと思った。そんな強敵を相手に悩みながら闘って、勝てるはずがなかった。
ところが、悟空に長く考える時間は無かった。いずれ悟天が本腰を入れ、悟空を殺しに向かってくるのが明らかだからである。そうなれば、今の悟空なら間違いなく殺されてしまう。そうなる前に決断する必要があった。
「結局やるか、やられるかしかねえ。・・・仕方ねえ!」
悟空は、悩みに悩んだ末、ようやく悟天を殺す覚悟を固めた。殺すと決めると、行動が迅速だった。超サイヤ人5に変身し、気を限界まで高めた。
「ふっ。やっと、その気になったか。待ち兼ねたぞ」
悟天も超サイヤ人5に変身し、気を急速に高めた。
「もうどうなっても知らねえぞ!龍拳!」
悟空は、龍拳を放った。この技は、威力があり過ぎる為、まともに喰らえば悟天といえども只では済まない。普通の試合では絶対に使えなかった。悟天を殺すと決断したからこそ使えた。ところが、悟天も同じく龍拳を放った。二つの龍拳は激突して共に消滅し、互いの拳を傷付けた。
「何だと!?何でお前が龍拳を?」
「くっくっく・・・。俺を殺す気になったんだろ?もう終わりか?」
「だったらこれならどうだ!十倍かめはめ波!」
悟空は、十倍かめはめ波を放った。龍拳と同じく殺傷力が高い危険な技である。やはり普通の試合では使えない。しかし、悟天も十倍かめはめ波を放ち、双方の間で二つの十倍かめはめ波が激突した。
「なっ!?十倍かめはめ波まで!?」
「ふはははは・・・!読みが甘いぞ、孫悟空!はあっ!」
悟天の十倍かめはめ波は、更に勢いを増した。その為、悟空の十倍かめはめ波は、押されてきた。悟空は、無理して対抗せずに早目に見切りを付け、瞬間移動で脱出して悟天の背後に回り、悟天の背中を蹴った。悟天は側面に吹っ飛び、二つの十倍かめはめ波が空の彼方に飛んで行った。
「ま、まさか、十倍かめはめ波まで使えるなんて・・・」
龍拳も十倍かめはめ波も、悟空が苦労して身に付けた必殺技である。他人がそう簡単に出来る技ではない。しかし、悟天は、事も無げにやってのけた。驚く悟空の元に、悟天は、笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
「どうして龍拳や十倍かめはめ波が出来るんだ?」
「貴様を殺すと決めた時、実力で上回るだけでは不十分だと思った。貴様の技は相当な威力があって厄介だから、対抗するには同じ技を使える必要があると判断した。そして、貴様が技を出す所は何度も観ているから、それを見様見真似で練習して出来るようになった」
「ちっ。こういう状況でなければ、褒めてやりたいんだがな・・・」
悟空は、悟天に脅威を抱いたが、内心は誇らしくもあった。
「もしかして瞬間移動や元気玉も使えるのか?」
「いいや。貴様の技を全て覚えようとすれば、時間が掛かり過ぎる。それに猿真似だけでは、貴様に追いつく事は出来ても、追い抜く事は出来ない。貴様を越す為には、新たな技も必要だと俺は思った」
そう言うと悟天は、かめはめ波を撃つ体勢になった。
「見せてやろう。貴様を倒す為に会得した俺の新必殺技『超かめかめ波』をな」
「超かめかめ波?何だそりゃ?」
ふざけたネーミングの技だが、これによって悟空は、更に追い込まれる事となる。


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