「行くぞ!かーめーかーめー波ー!」
悟天は、悟空に向けてエネルギーの玉を放った。エネルギーの玉の中央に長い横線が入り、その線が口を開く様に大きく裂けた。そして、エネルギーの玉からは「カメーカメー」という奇妙な音がした。この奇抜なエネルギーの玉に唖然とした悟空だが、すぐに気を取り直し、躱す為に上空に飛び上がった。しかし、エネルギーの玉が途中で向きを変え、口の様な裂け目を開閉させながら、上空の悟空を追いかけてきた。
「なるほど。あれに捕まると、あの口みたいなのに噛まれるみてえだな。だから、かめかめ波か・・・」
悟空は、エネルギーの玉を消滅させる為、気功弾を放った。ところが、エネルギーの玉が気功弾を避けながら悟空に迫ってきた。ならばとエネルギーの玉から距離を置きつつ、気功弾を何発も放ったが、エネルギーの玉に全て避けられた。
悟空は、床に降り、悟天の目の前まで移動した。そして、エネルギーの玉の動きを見ながら、悟天の背後に回り込んだ。そのままエネルギーの玉が悟天に向かって突進したが、悟天の目の前で迂回し、悟天の背後に居る悟空の左腕に噛み付いた。
「な、何で、悟天に嚙みつかなかったんだ?」
「こいつは自動操縦ではない。貴様を標的とし、貴様だけを噛みつく為に追いかけていた。つまり意思を持っている。ゴテンクスの超ゴーストカミカゼアタックのお化け達の様にな。しかも、お化け達の様に間抜けではないから、誤って俺を噛むミスをしない」
「なるほど。だから背後に回り込まれても、平然としていられた訳か・・・」
悟空は、自分の左腕に噛み付いているエネルギー球を、右手で握って力任せに引き剥がした。そして、右手から放った気功波でエネルギー球を吹き飛ばした。ようやく厄介なエネルギー球を消滅させたが、悟空の左腕の噛まれた箇所からは血が溢れ出ていた。
「何て噛む力が強いんだ。他の奴だったら、噛み千切られていたぞ。これが超かめかめ波か・・・」
「今のは超かめかめ波ではなく、かめかめ波だ。これから見せるのが本当の超かめかめ波だ」
「何だと!?」
悟天は、再度かめはめ波を撃つ体勢になった。そして、先程かめはめ波を撃った時よりも大きな気を、両手の平に集めた。
「受けてみろー!超かめかめ波ー!」
悟天の両手の平から直径三メートルもある大きなエネルギーの玉が飛び出した。それからかめかめ波同様に中央が裂け、大きな口の様なものを開閉させながら悟空に襲い掛かってきた。そして、超かめかめ波は、「カメー!カメー!」と爆音を響かせていた。
「あんなのに噛み付かれちゃ、体を真っ二つにされちまうぞ。でも、大きいのは、こっちにとって都合が良い事もある。それは的が大きくて、攻撃を当てやすい事だ」
悟空は、強めの気功波を放った。ところが、超かめかめ波は、残像拳で気功波を躱した。これには悟空も意表を突かれて動きが一瞬止まり、その間に真上から超かめかめ波に噛み付かれた。悟空の上半身が超かめかめ波に覆われ、腰の辺りを噛み付かれた。超かめかめ波は、大きいだけでなく、技のくせに技を使った。これには流石の悟空も予想しておらず、一本取られた。
悟空は、必死になって超かめかめ波から脱出しようとしたが、超かめかめ波の力が強く、中々思うようにはいかなかった。それでも諦めずに何度か挑戦して、遂に超かめかめ波を気合で吹き飛ばした。何とか危機を脱したが、腰に大きなダメージを負い、片膝を突いた。
「あ、危なかった・・・。もう少しで噛み千切られる所だった。何て恐ろしい技だ」
「魔人ブウ戦でゴテンクスが色々な技を出したが、あれ等は俺とトランクスで考えたものだ。あの時と同様に俺は、次々と新しい技を生み出せる。何時までも同じ技しか使わない貴様では到底出来まい。進化しない貴様では、進化する俺に勝てない。貴様の時代は終わりだ!」
「お前が勝手に決めるな!糞餓鬼!」
悟空は、悟天の勝手な言い草に怒りながら立ち上がった。
「俺の引き際は、俺が決める!お前に口出しされる言われはねえ!」
「諦めの悪い奴め。ならば引導を渡してやろう」
悟天は、右手を上に向け、左手で右手首を掴んだ。そして、右手に気を集中させた。すると右手から、直径十センチ位の小さな気の玉が飛び出した。
「これで貴様の戦意を喪失させてやる。速気弾!」
速気弾という名の気の玉は、猛スピードで悟空に迫った。それに対して悟空は、反応すら出来ず、額に喰らってバランスを崩した。速気弾は、悟天の右手の人差し指と中指に遠隔操作され、引き返してきた。そして、悟空の後頭部に命中した。その後も引き返してきて、幾度となく悟空を攻撃した。
この様子を控え室のモニターで観て、真っ先に反応したのはヤムチャだった。
「あれは俺の操気弾そっくりじゃないか!悟天は、操気弾を知らないはずなのに、何であんな技が出来るんだ!?」
技の出し方といい、指で自在に操作する点といい、確かにヤムチャの操気弾とそっくりだった。
「ヤムチャさん。悟天は、操気弾を直接見た事がなくても、話で聞いた事はあると思います。それを自分なりに改良したんでしょう。俺が見た所、あの技は本家の操気弾よりスリム化し、威力が落ちますがスピードを上げています。しかも何度も攻撃してきます。一回一回のダメージは小さくても、繰り返し喰らえば大きなダメージになります。失礼ながら、本家より遥かに恐ろしい技です」
悟天は、速気弾を完全に自分のオリジナル技だと思い込んでいたが、実は子供の頃に話で聞いたヤムチャの操気弾を何となく覚えていて、それをヒントに速気弾を編み出していた。
悟空は、速気弾を回避しようとしたが、余りにも速過ぎて一度も成功しなかった。そして、クリリンの指摘通り、ダメージを蓄積していた。
速気弾を避けられないと判断した悟空は、回避ではなく防御する事にした。頭ばかり攻撃されていたので、頭をガードした。それによって頭への攻撃を防ぐ事が出来た。しかし、所詮は付け焼刃だった。悟天は、速気弾を当てる体の箇所を毎回変え、次に何処を狙っているのか分からなくした。これによって悟空は、体の何処を防御すれば良いか分からなくなり、再び速気弾を喰らう展開に逆戻りした。
これまで有効な対策が無く、速気弾を受け続けた悟空だったが、これで終わるはずがなかった。悟空は、速気弾の軌道を読めなくても、一度当てられてから、どれ位の間隔で次に当てられるのか時間を計っていた。そして、次に当てられる直前にアルテマ膜を自分の体の周囲に張り、突っ込んできた速気弾を消滅させた。
どうにか今回も危機を脱した悟空だったが、受けたダメージが大きかった。全身傷だらけで、息が乱れていた。その悟空に対し、外傷が余り無い悟天が余裕の表情で話し掛けてきた。
「これで助かったなんて思うなよ。速気弾は、消耗するエネルギーが少ないから、幾らでも作れる。それに対し、その技を貴様は何回使えるんだ?知っているぞ。例え一瞬でも、かなりのエネルギーを消耗する技だとな。この先も今の様な防ぎ方をしていけば、貴様のエネルギーが早く底を突く」
「そうだな。別の防ぐ手段を考えねえと、確かにまずいな」
悟天は、悟空のエネルギーの残量を気に掛けていた。ただ強いだけではない。恐ろしい技があるだけではない。冷静さを併せ持っていた。悟天は、人としてはともかく、戦士として大きく成長したと悟空は思った。
「さっきのといい、今のといい、凄い技ばかりだ。この半年の間に身に付けたのか?」
「いいや。もっと前から出来るようになっていたが、それがどうした?」
「どうしてロボベジットやドクター・ブレインと闘った時に使わなかったんだ?もし使ってくれていたら、大分助かったぞ」
ロボベジット戦は、危ない場面が何度もあったが、何とか勝てた闘いだった。ドクター・ブレイン戦は、悟飯が助けに来なければ、間違いなく全滅していた。
「この二つの技は、貴様を倒す為に会得したものだ。貴様を助ける為ではない。だから貴様と闘う前に、貴様の前で使う訳にはいかなかった。それによって例え俺自身の命を落とす事になっていたとしても、最後まで使わなかっただろう」
二戦とも厳しい闘いだったにも拘わらず、悟天は、頑なに新技を使おうとしなかった。己の技を秘める事に固執し、その為に命を落としても構わなかった。悟天の頭の中には、ジニア人との闘いの最中でも、悟空を倒す事しかなかった。
「勝負あったな」
「もう勝った気でいるのか?甘いぞ!ここからが俺の本領発揮だ!」
悟空は、圧倒的に不利な状況だが、決して勝負を諦めていなかった。そして、一時間のタイムリミットが刻一刻と迫っていた。


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