メカ神龍のエターナルペインを喰らった悟空と悟天は、一定間隔で体の何処かにダメージを受け、それを止める手段が無いので、後は死を待つばかりという絶体絶命のピンチに陥った。ところが、何故か笑っていた。
「何がおかしい?恐怖に気でも触れたか?」
「おかしい?そうかもしれないな。うぐっ!俺一人だけじゃなく、父さんと痛みを共有している。ぎゃっ!そう思うだけで、何故か笑いが止まらなくなる。うげっ!」
「悟天が耐えてるのに、俺が弱音を吐く訳にはいかない。げえっ!一人なら耐えられなかったかもしれねえが、二人なら耐えられる。ぐわっ!」
悟空達は、共に絶望的な状況だと認識していながら、互いが互いの存在を頼もしく感じる余り、悲観する所か笑ってしまった。そして、二人揃ってメカ神龍に飛び掛かった。血みどろの体となっても、衰えを全く感じさせない二人の気迫に圧倒されたメカ神龍は、攻撃を次々と喰らった。
「死が間近に迫っているのに、こいつ等の何処に、これだけの力があるんだ!?」
「どうせ死ぬなら、その前に貴様を殺しておく。おぎゃ!今の俺達なら、誰が相手でも負ける気がしねえ。ぐえっ!」
「冗談じゃない!こんな連中と闘っていられるか!」
メカ神龍は、悟空達との戦闘を避け、上空に飛び上がった。放っておいても死ぬので、それまで危険を回避して待てば良いと思っての行動だった。
上空のメカ神龍に向け、悟天がかめはめ波を放った。それに気付いたメカ神龍は、エネルギー波を放って応戦した。ところが、悟空が悟天と並んで同じくかめはめ波を出した。二つのかめはめ波は合体し、一つの巨大なかめはめ波となってエネルギー波を押し退け、メカ神龍に迫った。メカ神龍は、両手で巨大かめはめ波を防ごうとしたが、巨大かめはめ波が余りにも強過ぎて防ぎきれなかった。神龍の力を使って回避する間も無かった。
「ぜ、全宇宙の覇者となるはずの俺様が、こんな所で・・・。ぐはっ!」
メカ神龍は、巨大かめはめ波に抗い切れず、飲み込まれて消滅した。その瞬間から悟空と悟天は、傷を負わなくなった。
「ふうっ。どうやらメカ神龍が死ぬと、奴の力の効果が切れるようだ。良かった。これで死ななくて・・・」
メカ神龍が滅びた事により、悟空達は、エターナルペインの呪縛から解放された。ところが、緊張の糸が切れた途端、悟空は、変身が解けて倒れた。悟天も変身が解けて尻餅を付いた。二人とも全身が血だらけで、体の多くの箇所が負傷していた。折れている骨の数も少なくなかった。エターナルペインによって受けたダメージは、決して軽くなかった。おまけに体力も余り残っていなかった。
更に間が悪い事に、身動き取れなかったはずのレードが動き出した。メカ神龍の死により、レードは、金縛りが解けて動けるようになっていた。そして、悟空達に向かって唸り声を上げながら近付いてきた。悟天は、立ち上がって超サイヤ人6ではなく、超サイヤ人5に変身したが、それすら辛く感じ、すぐに超サイヤ人4にランクダウンした。悟空程ではないにしろ、悟天も満身創痍の状態だった。しかし、気力を振り絞ってレードと相対した。
「レード様。あなたを倒します。それが俺に残された、あなたを救う唯一の方法だからです」
悟天とレードは、同時に飛び掛かって交戦した。レードは、メカ神龍に付与された超サイヤ人6の力を失っていたが、それでも今の弱った悟天には充分過ぎる程の強敵だった。対する悟天は、必死に抗ったが、レードから何度も攻撃を受け、悟空の居る所まで吹っ飛ばされた。それでも勝負を諦めずに立ち上がろうとした悟天だが、その手首を悟空が掴んだ。
「悟天。おめえじゃ勝てねえ。オラが闘う」
「分かった。俺達二人掛かりで闘えば、もしかしたら勝てるかもしれない」
「勘違いするな。これは元々オラとレードの闘いだ。相手がレード一人になったから、こちらもオラ一人で闘う。おめえは下がっていてくれ」
「一人で!?無茶だ!父さんは闘える状態じゃない。ここは俺に任せて」
悟天は、悟空を気遣って一人で闘おうとしたが、悟空が承知しなかった。
「今のオラが一人で闘っても勝てないのは分かっている。だから、おめえの残ったエネルギーをオラにくれ。ただし、全部じゃねえぞ。少しは残しておけ」
「・・・そこまで言うなら、後は任せるよ」
悟天は、悟空の手の平に気を送った。そして、エネルギーを送り終えた悟天は、その場に倒れ伏した。
「受け取ったぞ、悟天。おめえのエネルギーも、おめえの想いもな」
悟空は、立ち上がってレードと向かい合った。レードは、悟空に向かって飛び掛かり、何度もパンチを放った。悟空は、全てではないにしろ、レードのパンチを避け続けた。そして、何故か反撃しなかった。反撃する素振りすら無かった。今の自分の力では、まともに闘っても勝てないと分かっていたので、余計な攻撃をしないで狙っていた。一撃でレードを倒す事を。そこで致命傷となる攻撃だけは確実に避け、機会が訪れるのを待っていた。
レードは、絶え間なく攻撃を続け、中々悟空に機会を与えなかった。しかし、レードが左の拳を振り翳した瞬間、悟空は、遂に動いた。素早く超サイヤ人5に変身すると、レードの左胸にパンチを放った。そして、悟空の拳がレードの左胸を貫通した。その後、すぐに変身を解き、右腕をレードの体から引き抜いた。レードは、動きを止め、それから何と喋った。
「み、見事だ。孫悟空よ。がはっ!」
レードは、血を吐きながら仰向けに倒れた。そして、悟空の勝利を告げるアナウンスが流れた。しかし、悟空は、勝利の余韻に浸る事なく、跪いてレードに話し掛けた。
「おめえ、理性を失ったんじゃなかったのか!?」
「メカ神龍が死んだら理性を取り戻していた。二度と元には戻らないと言っておきながら、あの役立たずめ」
「じゃあ、途中から理性を失った振りをしていた訳か・・・。何故そんな真似を?」
「自棄になって理性を失うよう願っておきながら、元に戻っては立つ瀬が無いからだ」
悟空とレードが話し合ってる間に、悟天が這って近付いてきた。
「レード様。あの時、アイスを殺す以外の選択肢は無かったのですか?」
「孫悟天。お前には悪い事をした。あの時の俺は、冷静さを欠いていた。あれは俺の人生最大の誤りだった。後に、どれだけ後悔した事か・・・。あれ以降、俺の人生は終わった様なものだった。あの時から自分の死に場所を探していたのかもしれない。これで、やっと死ねる」
アイスが死んでから、レードは、ずっと苦しみ続けていた。ようやく苦しみから解放されるのかという安堵感があった。
「もしアイスが死んだのを、もっと早くオラ達が知っていれば、ドラゴンボールで生き返らせる事が出来た。ドラゴンボールで生き返らせる事が出来るのは、死後一年以内なんでな。まあ、それは以前の設定で、もしかしたら今じゃ数年前に死んだ者でも生き返らせる事が出来るかもな」
ドラゴンボールは、以前に比べて大幅に機能が向上された。願い事を叶えられる数が増えただけでなく、クリリンの様に以前にドラゴンボールで生き返った者が再び死んでも、また生き返らせる事が可能になっていた。これはデンデの龍族としての能力が向上した事で、最初に調整しなくても、後から変更出来るようになったからである。
「余計なお世話だ。例えアイスを生き返らせても、俺は、アイスに顔向け出来ない。アイスが真相を知っても知らなくても、アイスが傍に居るだけで胸が引き裂かれる思いをしていただろう。それは今も変わらない。俺が死ぬと、俺が行くのは地獄。アイスが居るのは天国。俺達が会う事はないだろう。だが、それで良い。アイスに会うつもりはない」
アイスに会いたくても会おうとしないのは、悲しいまでのレードの意地だった。
「さあ。早くここから離れろ。俺は、もうじき爆発する。大した爆発ではないだろうが、今の弱った貴様等では、爆発に巻き込まれたら、どうなるか分からない」
悟空は頷き、悟天を抱えて歩き出した。一人その場に残ったレードは、空を見上げながら小さな声で呟いた。
「アイスよ・・・。俺を憎め」
悟空達の後方で爆発音が鳴り響いた。それがレードの最期だった。
「レードの最大の不幸は、フリーザの子供として生まれた事かもしんねえな。あいつが普通の男として生まれていれば、変な野望に取りつかれる事も無く普通に育ち、結婚して子を持ち、それなりに幸せな人生を送れただろうな」
控え室に戻る途中の廊下で、やるせない思いの悟空が口を開いた。
「レード様を救えるのは自分だけだと思い上がっていたけど、それは違っていた。あの人の苦しみは、俺が想像していたよりも、ずっと深かった。死なせる事が救う事だと思ったけど、それも間違いかもしれない。もしかしたら死んでからも、ずっと苦しみ続けるかもしれない。願わくば、レード様があの世でアイスと会い、アイスが許してくれれば・・・」
悟天は、レードを哀れみ、涙を流した。


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