長かった第二回宇宙一武道会も、いよいよ大詰め。遂に決勝戦の火蓋が切られた。闘うのは悟空とレード。悟空は超サイヤ人5に、レードはバージョン2に姿を変え、序盤から激しい攻防戦が繰り広げられた。
最初は小手調べの為に手の内を見せない両者だったが、闘いが進むに連れ、地力で勝る悟空が優勢になった。悟空は、レードの顔面に肘鉄を食らわせ、続けて蹴りを胸部に何発も見舞った。更に腹部を殴り、動きを止めた。
悟空が続けて攻撃しようとした時、レードは、口を大きく開けて息を吐き出した。この息を吸うと身体能力が一時的に低下するが、悟空は、攻撃を中断して体を回転させ、レードが吐いた息を四散させた。ならばとレードは、目を大きく開いて悟空を石化させようとしたが、悟空は、素早くレードの背後に回り、レードの背中を蹴った。レードは、バランスを崩したが倒れず、後ろを振り向いて悟空を睨み付けた。
「初めて見る特技に上手く対処している。さては孫悟飯からジンの情報を聞いたな?」
「ああ。決勝戦を待っている間、回復した悟飯からジンとかいう奴の特技を教えてもらった。その対処法もな。それが無かったら、お前の術中に陥っていたかもしれない。それにしても、俺達が知らない間に、お前達は、こんな敵と闘っていたなんてな・・・。ずりいぞ。俺達も呼んでくれよ」
先の準決勝の試合において、レードが変身ならぬバージョンアップして、過去に闘ったジニア人の戦士達の特徴なり特技を用いてくる事を知った悟飯は、決勝戦でレードと闘う悟空を懸念し、悟空を少しでも有利に闘わせる為、決勝戦までの長いインターバルの時間を利用して、知っている情報を伝えていた。
「ジンの能力が通じないなら、バージョン2で闘う意味が無い。バージョンを上げざるを得んな」
レードは、バージョン3のポラリスモードになった。そして、悟空と激突した。
一方、この試合の模様を控え室で観戦していたドクター・ハートは、レードの闘い振りに腹を立てていた。
「レードは、何をやってるのよ!さっさとバージョン4で闘えば良いのに・・・」
ドクター・ハートは 、悟空が試合中に超サイヤ人6に覚醒する確率が高いので、その前にレードが速攻で決着を付けるべきだと思っていた。その為、今のレードの闘い方が気に食わなかった。そのドクター・ハートを悟天が諫めた。
「レード様にはレード様なりの考えがあるんだ。黙って観ていろ」
「実力もお頭も無い、役立たずは黙ってなさい!孫悟空に時間を与えては駄目なのよ!ぼやぼやしてたら、後で取り返しが付かない事になるわ!」
このドクター・ハートの暴言に、流石の悟天も苛ついた。しかし、急に態度を一変して、ドクター・ハートを冷笑した。
「他人を非難する前に、自分自身を見つめ直したらどうだ?お前には死相が見えるぞ」
「何が死相よ?馬鹿馬鹿しい!」
「気付いてないのか?お前の命を刈りに、死神が近付いている事を」
「はあ?何処に死神が・・・」
ドクター・ハートが話し終える前に、控え室のドアが蹴破られた。そして、悟飯が控え室の中に入ってきた。ただし、悟飯の突然の来訪に驚いてるのはドクター・ハートだけで、悟天とゴカンは、 悟飯の気を察知していたので平然としていた。
「何でここに!?控え室の外にはロボットやサイボーグが居て、部外者を近付かせなかったはずなのに・・・」
「ロボット達なら全て片付けた。音を立てずにな」
ドクター・ハートは、己の身を守る為、控え室の外にロボットやサイボーグを警護の為に配置していた。しかし、悟飯にとっては妨害にすらならなかった。
「くっ、何しに来たのよ!?」
「ここに来た理由は色々あるが、まずは宇宙に巣くう害虫の駆除だ。ハートボーグは倒した。ロボット達も全滅させた。もうお前を守ってくれる奴は居ない。大人しく観念しろ!」
「最低ね!か弱い女性を殺そうとするなんて、正義の味方が聞いて呆れるわ」
「お前の身柄を銀河パトロールに引き渡す。そこで裁きを受けろ!」
悟飯とて人間である。長年に渡って酷い目に遭わせてきたドクター・ハートに自らの手で鉄槌を下したい気持ちはあるが、そこは我慢して、大勢の人の命を奪ってきた罪を法に基づいて裁かれるべきだと思っていた。しかし、大人しく捕まるドクター・ハートではなかった。
「これで私を追い詰めたつもりでいるなんて、随分と浅はかねえ。自分の身を守る為、奥の手を用意するに決まっているでしょ」
ドクター・ハートは、着衣していた白衣のポケットから注射器を取り出し、その針を自らの腕に刺した。するとドクター・ハートの体が人間から怪物の姿に変化した。
「これぞ美と強さを兼ね備えた究極の生命体。あなたには私の強さを試す実験台になってもらうわ」
怪物と化したドクター・ハートからは強い気を感じられた。そして、余裕の表情を浮かべたドクター・ハートは、猛烈な勢いで悟飯に襲い掛かり、殴り飛ばした。殴られた悟飯は、後方の壁に激突した。
「くっ、速い。避けられなかった・・・」
「ふっふっふ・・・。私の頭脳があれば、実戦経験が無くても、観ているだけで達人の動きをコピー出来るのよ」
ドクター・ハートの動きには無駄が無く、とても初めての実戦とは思えなかった。
「そうか・・・。なら、これならどうかな?」
勢いよく立ち上がった悟飯は、多重残像拳でドクター・ハートの周りを取り囲んだ。そして、呆気に取られるドクター・ハートを背後から蹴飛ばした。
「お前は、相手の動きを目で追っている。だから、こういう技に引っ掛かり易いんだ。どんなに優れた能力があろうと、所詮は素人。基本が出来ても、応用が利かない。そんなんじゃ俺の敵にはなれない。さあ、観念するんだ!」
悟飯は、ドクター・ハートに勝ち目が無いと諭し、降参を促した。しかし、往生際が悪いドクター・ハートは、尚も食い下がった。
「まだよ。まだ足りない。もっと強くなれば、あんな奴・・・」
追い詰められたドクター・ハートは、新たな注射器を取り出し、自分の腕に刺そうとした。
「よせ!次に刺せば、命に関わるぞ!」
「五月蠅い!」
悟飯の忠告を無視したドクター・ハートは、またしても注射器の針を自らの腕に刺した。ところが、次の瞬間、苦しむ間も無く体が爆発した。
「頭が良くても馬鹿な奴だ。一回の注射で人間から怪物に変える程に強力なんだ。二回も注射して体が耐えられるはずがない。そんな事も分からないなんて、前後の見境が無い位に逆上していたんだな。まあ、外道に相応しい最期とも言えるな・・・」
ドクター・ハートが開発した人間を怪物に変える薬は、一回の使用を想定して作られた物で、複数回の使用を想定したものではない。当然、それを作ったドクター・ハートもその事を分かっていたのだが、そんな大事な事を忘れる位に逆上していた。短気でヒステリックになり易いドクター・ハートの呆気無い自滅だった。
「さてと、一つの問題は解決した。もう一つの問題も解決しないとな」
悟飯は、傍らで観ていた悟天の方に視線を移した。


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