其の百四十七 親殺し

悟空と悟天による二度目の親子対決。しかし、それは血を分けた親子での殺し合いという最悪な展開となった。ここまでは悟天の一方的な展開が続き、悟空が後手に回っていた。

悟空は、反撃に打って出るため、超サイヤ人5の変身を解き、両手を大きく上に挙げた。ところが、このポーズを見た悟天は、悟空が何を意図しているのか分かった。

「元気玉か・・・。この状況を打開するには、それしか方法が無いだろうな。しかし、俺には通用しないぞ!」

悟空が頭上に手を挙げれば、元気玉を作る以外に考えられない。悟天は、元気玉が完成するのを阻止する為、悟空に向けて気功弾を放った。悟空の頭上に作成途中の元気玉が無いので、元気玉は悟空の体内で作られている。その場合、悟空が攻撃を受けると、元気玉が四散する。ところが、悟空は、気功弾が当たる直前に姿を消し、気功弾が通過したら再び姿を現した。その後も悟天が気功弾を何発も放ったが、その度に悟空が一瞬だけ姿を消して気功弾を避けた。

焦れた悟天が突進すると、悟空は、悟天の動きを見計らって太陽拳を使った。悟天は、目が眩んで突進を止めた。その間に悟空は、元気玉を作り続けるのではなく、早くも悟天に放った。作成時間が短いので、まだ放たないだろうと高を括っていた悟天は、完全に不意を衝かれ、元気玉に命中した。そして、絶叫して倒れたが、すぐに立ち上がった。しかし、受けたダメージは決して小さくなかった。一方、悟空は、再び超サイヤ人5に変身した。

「元気玉を作る時間は短かったのに、何故ここまで威力があるんだ?」
「ロボベジット戦の時の事を忘れたのか?あの時も短い時間で作った元気玉で、ロボベジットに大きなダメージを与えた。俺は、修行で元気玉を作る時間を短くする事が出来るようになった。さっきは同じ技を使い続けていると言われたが、日々改良しているんだ。同じ技ばかり使ってるからって馬鹿にするなよ」

ロボベジット戦の時よりも、今回の方が元気玉を作る時間は短かった。しかし、惑星レードに多くの生物がおり、周りの星にもたくさんの生物が住んでいる事が幸いした。また、悟空の元気玉を集める技術が、半年前より大きく向上していた。その為、短い時間で作った割には元気玉の威力が髙かった。もしロボベジット戦の時と同じ位の時間を掛けられれば、あの時より遥かに威力のある元気玉を作れるのは確実だった。

「太陽拳で俺の動きを止めたから、もっと時間を掛けて元気玉を作れたはずだ。どうしてすぐに放った?」
「視界を封じても、俺の気を感じれば位置が分かり、俺に攻撃出来る。それに、元気玉を作っていると既に知られているから、躱される事も考えられる。なので、お前に確実に当てるには、あのタイミングで放つのがベストだと判断した」

悟空は、元気玉で悟天を倒そうとは思っていなかった。倒すつもりなら、もっと時間を掛けて作る必要があった。しかし、欲を出して更に強力なものを作ろうと時間を掛け過ぎれば、その間に悟天に対処する時間を与える事になる。それが災いして、結果として悟天に元気玉を当てるのを失敗する事を懸念した。それよりは、未完成な元気玉でも良いから確実に当て、少しでもダメージを与える事を優先した。その方が、より勝利に近付くと判断した。

「くっ。余計なダメージを負ったが、まだまだ俺の方が有利だ。こいつを再度喰らえ!」

悟天は、気を取り直して超かめかめ波を放った。それに対して悟空は、多重残像拳で超かめかめ波を惑わせた。そして、超かめかめ波が戸惑っている隙に、背後から超かめはめ波を放って超かめかめ波を消滅させた。悟天は、自慢の必殺技を簡単に破られたので、悔しがった。

「俺に何度も同じ手は通用しない。超かめかめ波が自らの意思で追跡してくるなら、生き物だと思って混乱させれば動きを止められる。当てが外れて残念だったな」
「くそっ!同じ手が通用しないと言うなら、こいつも破ってみろ!」

悟天は、速気弾を放った。悟空は、再び速気弾を頭に喰らった。

「ふっ。またアルテマアタックで防いだらどうだ?エネルギーを大量に消耗するがな」
「もうアルテマアタックは使わねえ。そんな事をしなくても、この技を破る事は出来る」

悟空は、身を固めながら突進し、悟天の側に立った。悟天は、悟空から距離を置こうとしたが、しつこく悟空が追い駆けてきた。このやり取りをしばらく続けた後、悟天は、速気弾を空の彼方に飛ばし、速気弾による攻撃を諦めた。それから悟天は、悟空から離れたが、今度は悟空が追ってこなかった。

「ちっ、忌々しい奴め。まさか、あんな手を使うとは・・・」

悟天は、苛立たしげに悟空を睨んだ。一方、悟空は、得意気に語り始めた。

「あの技は、速さが売りだが、それが同時に弱点でもある。相手が自分の近くに居ると、誤って自分に当ててしまう可能性がある。だから俺がお前の側に居れば、お前は技を使えなくなる。わざわざアルテマアタックを使うまでもない」

速気弾は、悟天が自由に操作出来るが、標的が自分の近くに居れば、速さが逆に災いして、自分にも当てないよう注意しなければならない。だから技を出してる間は、標的から距離を置くのが無難だった。悟空は、それを見抜いたからこそ悟天との距離を詰めた。

「技を幾つも作れるのは大したものだが、お前の技は底が浅い。だから簡単に破られるんだ。それだったら天津飯の技の方が、よっぽど手強い。少しは先輩を見習ったらどうだ?」

天津飯の技は、三つ目人の先人達が長い年月を掛けて編み出した技の中から厳選したものである。技の内容を知っていても、他者が容易に破れるものではない。しかも天津飯は、技の使い方まで工夫してきたから、更に厄介だった。

「同じ技でも、使い方を変えれば磨きが掛かるんだ。この技で、お前に引導を渡してやる」

悟空は、龍拳を出す構えをした。悟天も後に続いた。ところが、悟空は、技を出す直前に瞬間移動し、悟天の側に移動した。そして、悟天に向けて至近距離から龍拳を放った。悟天は、不意を衝かれたものの、急いで身を反らして龍拳の直撃を避けた。しかし、龍拳は悟天の左の脇腹を掠ったので、悟天は、脇腹に大きな傷を負った。

「お、おのれー!殺してやる!」

悟天は、怒りの形相で悟空の首を両手で締めた。ところが、悟空は、悟天の傷付いた脇腹を殴った。悟天が痛さの余りに手を離すと、悟天の脇腹を蹴った。悟天が脇腹を庇うと、頭や胸部といった脇腹以外の箇所を攻撃した。悟天が頭や胸部を守ると、再び脇腹を攻撃した。悟天は、何度も攻撃を受け、血だらけとなった。それでも悟空は、攻撃を止めなかった。しかし、次の瞬間、事態は急変した。

「痛いよ・・・。父さん」

悟天は、怯えた表情で呟いた。この一言を聞いた悟空は、振り上げた拳を下ろし、攻撃を止めた。この時、悟空は、戦士から父親になった。これまで悟天を倒すべき敵と見なしていたからこそ闘えたが、息子と見なすと闘えるはずがなかった。少なくとも殺し合いという状況下では。そして、何て残酷な事をしてしまったんだろうと自分自身を責め、悟天を労わろうとした。ところが、それは大きなミスであった。

悟天の表情が一変し、父親の顔をしていた悟空を殴り飛ばした。悟天は、間髪入れずに追撃し、悟空に反撃の機会を与えなかった。そして、一方的に悟空を攻撃した。対する悟空は、防御する事も出来ず、ただ攻撃を喰らい続けた。勝つ為とはいえ、悟空の親心を利用した悟天の最低な作戦だった。

悟天は、渾身の力を込めて悟空の左胸を殴った。悟空は、大量の血を吐き、超サイヤ人5の変身が解け、力なく倒れた。次の瞬間、悟天の頭にあった輪の繋ぎ目が外れ、床に落ちた。輪は、悟空を標的と見なし、悟空の生命反応が途切れるまで外れない設定となっていた。それが外れたという事は、悟空の死を意味していた。悟天は、念の為に悟空の左胸に手を当て、悟空の心臓が動いていない事を確認した。そして、悟天の勝利を告げるアナウンスが流れた。

この衝撃の場面を、控え室では悟飯以下全員が呆然として観ていた。誰もが大きなショックを受け、言葉を発する事が出来なかった。それとは対照的に、別の控え室では、ドクター・ハートが狂喜していた。しかし、最も嬉しいはずのゴカンは、喜びもせず、モニターを凝視していた。

悟天は、変身を解き、その場に座り込んでいた。そして、物を言わぬ悟空を見ていた。これまで悟空を殺す事だけを考えて行動してきたが、いざ殺してみると、何の達成感も得られなかった。心にあるのは喜びでも悲しみでもなく、虚しさのみであった。

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