ブロリーは、自分の体の周囲にアルテマ膜を張った状態で悟空に迫った。それに対して悟空は、逃げようとしなかった。そして、二人が衝突した瞬間、会場全体に大きな衝撃音が鳴り響いた。
この時、控え室ではパンがモニターから目を背けた。悟空が殺される場面を観たくなかったからである。それからモニターを恐る恐る観ると、何と悟空が無事に生きていた。対するブロリーは、悟空の前方で浮かんでいたが、何故かアルテマ膜を張っていなかった。そして、何故か悟空の周囲の壁や床が抉れていた。パンは、悟空が無事だった事を喜びつつも、自分が目を背けている間に何が起きたのか分からなかったので、側に居る悟飯に尋ねた。
「パパ、何が起きたの?どうしてお爺ちゃんが無事なの?」
「肝心な場面を観てなかったから、分からないのも無理はない。まあ、観ていたとしても、パンには分からなかったかもな。余りにも速過ぎたから」
そう言う悟飯は、口元こそ笑っていたが、額からは汗が流れていた。悟飯ですら悟空が助かるかどうかは直前まで読めなかった。それは控え室内の他の仲間達も同様だった。
話を闘技場に戻すと、ブロリーが悔しそうに顔を歪ませていた。
「ぐっ・・・。おのれ、カカロットめ」
「へへへ・・・。何とか上手くいったぞ」
悟空は、呼吸が乱れていたが、満足した笑みを浮かべていた。
「只の超サイヤ人の分際で、伝説の超サイヤ人の必殺技であるアルテマアタックを使うとは・・・」
「あの場面では、あれしか助かる方法が無かったからな。それにしても、凄い疲れる技だな。一瞬だけしか使っていないのに・・・。お前みたいに技をしたまま飛び回るなんて、とても無理だ」
悟空は、ブロリーが直前に迫った瞬間、自身の周囲にアルテマ膜を張った。アルテマアタックは触れるもの全てを消滅させる技。ならばアルテマアタックを防ぐには、同じアルテマアタックしか無いと悟空は考えた。そして、見よう見まねでアルテマ膜を張り、アルテマ膜同士が衝突し、共に消滅した。悟空の周りの壁や床が抉れているのは、悟空が張ったアルテマ膜に触れたからだった。
アルテマアタックは余りにも大量のエネルギーを消耗する技の為、普通の超サイヤ人の体力では、とても使いこなせるものではなかった。伝説の超サイヤ人でもない、それと同じ才能を持っている訳でもないサイヤ人である悟空が使ったのは、史上初めてだった。伝説の超サイヤ人程ではないにしても悟空の体力が並外れているからこそ可能だった。ちなみに、以前に邪悪龍と化した魔神龍が使えたのは、回復力に長けた体だったからである。
悟空は、一瞬だけとはいえアルテマ膜を張って少し疲れていた。ところが、疲れているのは悟空だけではなかった。ブロリーにも疲労が見られた。ブロリーは、気が技を使う前より落ちており、呼吸が大きく乱れ、全身から汗が滴り落ちていた。五分以上、しかも技をしたまま動き回っていたので、疲労の度合いが悟空より遥かに大きかった。その為、さしものタフなブロリーでも疲労の色を隠せなかった。
「伝説の超サイヤ人と言っても、体力が無限にある訳じゃねえんだな。少し安心したぞ」
「黙れ!アルテマアタックのやり過ぎで、少し疲れただけだ!これで俺に勝てると思ったら、大間違いだぞ!」
「・・・かもな。こっちが先に潰れるかもしれねえしな」
「潰れる前に潰してやる。この技でな」
ブロリーは、両手を上に向けると、それぞれの手の平の約二十センチ上の空中に、直径十センチ位の小さな緑色の玉が出現した。その二つの玉を、最初は気の固まりかと思った悟空だが、その後すぐに正体を見抜いた。
「ま、まさか、アルテマアタックの小型版か!?」
「よく見抜いたな。これぞ俺のオリジナル技『アルテマボール』。お前に避けられるかな?」
ブロリーが作ったのは、小さなボール状のアルテマ膜だった。自分の周囲に張り続ける従来のやり方とは違い、これだとエネルギーの消費を少なく抑えられる。ブロリーは、二つのアルテマボールを自分が触れないように注意しながら、悟空に投げつけた。
悟空は、アルテマボールを上手に避けたが、ブロリーは、次々とボールを作り、悟空に投げつけてきた。悟空は、巧みなステップで避け続けたが、避けられそうもないと判断すると、自分の体の周囲にアルテマ膜を張って防いだ。一方、悟空が避けたアルテマボールは、そのまま客席を貫き、市街地にまで飛んで行った。市街地には人が住んでいる。もしアルテマボールに人が当たったら、無事では済まないのが明白だった。
「くっ。ブロリーの奴、恐ろしい事をしやがって・・・。もう迷ってる場合じゃねえ!早目に終わらせねえと」
これまで悟空は、ブロリーを殺さないよう配慮して闘っていた。しかし、遂に殺してでも闘いを終わらせる覚悟を固めた。そして、ブロリーの側面に回り込んで十倍かめはめ波を放った。ブロリーは、アルテマボールを放つのを止め、バリヤーを張って十倍かめはめ波を凌いだ。ならばと悟空は、ブロリーがバリヤーを解いた瞬間に龍拳を放った。悟空の腕から出現した黄金の龍は、ブロリーの体を貫き、ブロリーの体に巻き付いた。そして、眩しい光を放った。
「ぐおおおー!カカロットー!」
ブロリーは、龍と共に光の中に消えた。その光が消えると、ブロリーが倒れていた。しかし、生きており、気力を振り絞って立ち上がってきた。流石に大ダメージを負っていて、気が大分落ちていたが、戦意を失っていなかった。
「はあっ、はあっ。おのれ!カカロット!」
「龍拳で体を貫かれてるのに、よく立てるな。死んだと思ってたけど、とんでもねえタフだな」
「当たり前だ!こんなので俺が死ぬか!」
「安心したぞ。これで殺さずに終わらせられる」
悟空は、ブロリーの背後に一瞬で回り込み、後頭部を殴った。ブロリーは、意識を失って倒れた。そして、ブロリーの変身が全て解け、子供の姿に戻った。この瞬間、悟空の勝利を告げるアナウンスが流れた。悟空は、変身を解き、跪いてブロリーの頬を軽く叩いた。ブロリーは、ゆっくりと目を開いた。
「ぐっ・・・孫悟空」
「どうやらゴカンに人格が戻ったようだな」
「何を訳の分からない事を言ってるんだ?」
ブロリーの意識が途切れたので、再び人格はゴカンになった。ところが、ゴカンは、ブロリーでいる間の記憶が無かった。その為、自分が意識を失ってから、これまで起こった出来事を何も知らなかった。
「おい、大丈夫か?立てるか?手を貸してやるぞ」
「俺に触るな!」
悟空は、ゴカンに手を差し伸べたが、ゴカンは、それを払い除けた。そして、よろけながらも自力で起き上がった。それから悟空に飛び掛かろうとしたが、悟空が首を左右に振ったので、飛び掛かるのを止めて尋ねた。
「孫悟空。もしかして俺は負けたのか?」
「ああ。でも、凄かったぞ。オラ、びっくりした。よく修行してるな」
自分が負けたと知ったゴカンは、大きなショックを受けた。そして、両目から悔し涙を流した。大声で泣きながら出口に向かって歩き出した。
「おい。そんな体で歩いて大丈夫か?」
「五月蠅い!お前の助けなんか要らない!うわーん!」
ゴカンは、腕で涙を拭きながら、闘技場を後にした。悟空は、ゴカンの背中を見ながら、ほくそ笑んだ。
「子供のくせに、大人のオラに負けて、泣く程悔しがるとはな・・・。何て負けず嫌いな奴だ。あいつは、もっと強くなる。ここで死なせるのは勿体ねえ」
ゴカンを生かしておくという事は、この先、何時でもブロリーが目覚める危険がある。ブロリーの恐ろしさを考えれば、今この場でゴカンを殺し、将来の禍根を断つ方が良いかもしれない。悟空の仲間達の中には、それを主張する者も居るだろう。しかし、悟空は、ゴカンを生かしたいと思った。自分の孫だからという理由ではない。更に強くなったブロリーと再戦したいという気持ちはあるが、何よりも、その才能を平和を守る為に活かしたかった。
将来、ゴカンが悟空の望み通りに平和を守る戦士になるか、それともブロリーが目覚めて宇宙を滅ぼす破壊者となるか。それは誰にも分からないが、悟空は、ゴカンの将来性に大いに期待した。それが危険な賭けであると分かっていても。


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