後日談 復活のアイ

悟空がレードとの激闘を終え、仲間達と共に地球に帰ってから三日経った。

天界では、悟天の息子であるゴカンが修行をさせられていた。修行とは言っても、腕を磨く修行ではなく、精神を鍛える修行であった。そして、ゴカンの修行を見ていたのは、引退したベジータであった。ゴカンは、正座して両手を合わせ、目を閉じていた。しかし、この修行に不満で、舌打ちばかりしていた。そして、遂に不満が爆発した。

「こんな詰まらない事、何時までさせる気だよ!?」

ゴカンは、立ち上がり、目の前で立っているベジータに向けて怒鳴った。それに対してベジータは、ゴカンの剣幕に臆せず、冷静に諭した。

「心を改めるまでだ。貴様は、俺が言うのも何だが、素行が悪過ぎる。このまま成長していけば、宇宙を滅ぼす存在となるかもしれない。そうならないよう心の修行が必要なんだ」
「そんなの知った事か!終わりだ終わり!やってられるか!」
「いい加減にしろ!老いたとは言え、貴様を押さえつける力は、まだ十分に残っているぞ!」

ベジータは、ゴカンを睨み付けた。ベジータの鋭い眼力に怖じ気付いたゴカンは、不貞腐れながらも黙って座り、修行を再開した。

「やれやれ・・・。子供の頃の俺にそっくりだ。こいつを改心させるのは、相当骨が折れそうだな」

ベジータは、昔の自分を思い出し、自分を改心させるとしたら、どうすべきか考えたが、答えが出なかった。当時のベジータは、誰の言う事も真面目に聞かなかった。力尽くで言う事を聞かせられても、心服した訳ではないので、その場限りに過ぎなかった。要するに打つ手が無かった。それが今のゴカンにも当てはまった。だからゴカンの改心には相当な困難を伴うと予想された。

一方、悟飯は、惑星ジニアに来ていた。悟飯にとっては忌まわしい星で、出来れば二度と足を踏み入れたくなかったが、ある目的の為に来ていた。その目的とは、今は亡きドクター・ラングのロボット技術を探し出し、それを地球に持ち帰る事だった。

ドクター・ラングは、限りなく人間に近いロボットを製造する技術を有していた。その製造技術をブルマが習得すれば、彼女がリマの新たな肉体を造れるかもしれない。もしそれが成功すれば、現在ピッコロの体に取り付いているリマの魂が新たな肉体に移るので、ピッコロが楽になる。つまりピッコロの負担を無くす為だった。

しかし、悟飯が惑星ジニアに来て最初に行ったのは、惑星ジニアに無理やり連れてこられ、無慈悲な人体実験や、残酷な処刑方法で命を落とした大勢の人達の墓を作る事だった。彼等の死体は、大きな穴の中に放り投げられ、そのまま放置されていた。悟飯は、その穴に土を盛って埋め、その上に石を置いて墓石とした。

場面を再び地球に戻すと、悟天がトランクスに稽古をつけていた。余りにも大きく開いてしまった両者の実力差を埋める為にトランクスが考えたのは、悟天に稽古をつけてもらう事だった。勿論トランクスにとって屈辱以外の何物でもなかったが、そうでもしなければ永久に悟天に追いつけないかもしれないと思ったトランクスは、プライドを捨てて悟天に頼んだ。それに対して悟天は、快く応じ、それ以来厳しい修業の日々が続いていた。

修行の内容は、いつも通りの組手であるが、全身全霊で立ち向かうトランクスに対し、悟天は、片手のみだった。それでも悟天が終始優勢で、トランクスは、何度も倒され、体が汗と埃まみれだった。対する悟天は、汗を掻いてすらいなかった。そんな二人を、パンとブラが少し離れた所から見見詰めていた。

他方、悟空は、何と破壊神ビルスが住む星に来ていた。そして、久し振りに目覚めたビルスと拳を交えたが、何と完勝してしまった。当然ビルスにとっては面白くなく、歯軋りして悔しがっていた。

「くそー!こんなはずはない!もう一度だ!」

敗北を受け入れられないビルスは、悟空と再戦しようとしたが、傍で観戦していた従者のウイスに止められた。

「もう止めた方が良いですよ。何度やっても結果は変わりません。それに、勝てないのも当然です。悟空さんが修行していた間、ビルス様は、ずっと寝ていたんですから」
「僕は、破壊神だぞ!ただの人間が破壊神より強いなんて間違っている!」
「残念ながら、ビルス様より強いと思われる者が他にも居ます。悔しかったら、ビルス様も修行したらどうですか?久し振りに稽古を付けてあげますよ」

ビルスは、悔しさの余り、言葉が出なかった。遂にはその場で横になり、不貞寝してしまった。

「やれやれ・・・。仕方ないですねえ。後でベッドまで運ばないといけませんね」
「なあ、ウイスさん。オラといっちょ勝負しねえか?」
「遠慮しておきます。勝ち目の無い闘いをするつもりはありません。何より、私達天使が稽古以外で闘うと、消滅してしまいます」

完敗しても負けを認めないビルスとは対照的に、ウイスは、闘わなくても悟空の方が自分より上だと認めていた。

「それより、悟空さん。これからゴカンさんをどうするおつもりですか?」
「え!?あいつは、性格が荒いから、まずそれを変える。それから地球を守る戦士に育てるつもりだけど・・・」
「お言葉ですが、悟空さん。今のままでは、何時まで経っても改心しないと思いますよ」

ウイスは、地球から持ってきたパフェを食しながら話を続けた。

「今のゴカンさんは、周りの人達を全て敵だと認識しています。父親である悟天さんを含めてね。まずは味方を作ってあげないといけません」
「そんな事を言われても、誰がゴカンの味方になってあげれば良いんだ?」
「ゴカンさんは、まだ子供です。子供の一番の味方は、母親じゃありませんか」
「なるほど・・・。じゃあ、悟天が結婚すれば良いんだな?誰か居ねえかな?」

悟空は、悟天が誰かと結婚すれば問題が解決すると考えたが、ウィスの考えは違っていた。

「母親になる人間は、誰でも良いのではありません。ゴカンさんが味方と思ってくれないと、意味がありません。私は、アイスさんを生き返らせるのが唯一の解決策だと思いますが、どうして生き返らせないのですか?」

ウィスの考えは、ゴカンが心を開いてくれる相手は、実の母親であるアイスしか居ない。代わりなど居ない。悟空達にはドラゴンボールで死んだ人を生き返らせる術があるのに、何故それを使わないのかが疑問だった。

「実は地球に帰った後、悟天にアイスを生き返らせる事を勧めたんだ。でも、悟天は、『アイスと顔を合わせるのが辛い』と言って、断ったんだ。考えてみれば、自分の意志ではないにしろ、自らの手で殺してしまったからな」
「そうは言っても、本心では会いたがっていると思いますよ。何よりアイスさんが居れば、ゴカンさんも変わるでしょう」

悟天にとって複雑な思いはあるだろうが、このまま精神の修行を続けても、ゴカンが改心する見通しが立たなかった。

「分かった。地球に帰ったら、悟天と話してみるよ」

地球に帰った悟空は、その夜、悟天と会ってウイスの助言を伝えた。悟天は、一晩考え、朝になってからアイスを生き返らせる事に同意した。そして、地球のドラゴンボールを全て集めて神龍を呼び出し、一つ目の願いでアイスを生き返らせた。二つ目の願いで、リマも生き返らせた。悟飯は、惑星ジニアからドクター・ラングのロボット技術を持ち帰っていたが、余りにも高度過ぎて、ブルマが習得出来なかったからである。三つ目の願いは断った。

ピッコロの体から出て、元の体に戻ったリマは、魔界へと帰っていった。しかし、現在の魔王に挑戦して再び魔王の座に就こうとはせず、天津飯や餃子と一緒に静かに暮らすようになった。

アイスは、惑星レードに埋葬されていたので、そこで蘇った。悟天は、アイスを迎えに惑星レードに行った。そして、アイスと対面し、「御免」とだけ言った。それに対してアイスは、無言で悟天を抱き締めた。

「自分を責めないで。全て分かっているから」

その後、悟天と共に地球に来たアイスは、初めて見る地球の景色を嬉しそうに眺めていた。

「ここが地球か・・・。何か良さそうな所ね」
「母ちゃん!」

二人が振り返ると、そこにはゴカンが立っていた。ゴカンは、目に涙を浮かべつつ、アイスに抱きついた。そして、大声で泣き出した。やがて泣き疲れ、アイスの腕の中で眠りについた。周囲の大人達に敵意剥き出しで、ずっと気を張っていたので、夜になっても眠れなかった。しかし、アイスに会い、緊張の糸が一気に切れた。

「さみしい思いをさせて御免ね。これからはずっと一緒だから」

再びアイスと暮らすようになったゴカンは、徐々にではあるが、刺々しさが消えていった。

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