宇宙一武道会の決勝戦が繰り広げられている会場内で、悟飯達と悟天による話し合いが行われていた。そして、悟飯の諭しにより、ようやく元の素直で優しい悟天に戻った。それから悟飯達は、悟天を伴って、仲間達が居る控え室に移動した。これまでの経緯もあり、流石に大歓迎で悟天を迎え入れる者は居なかった。むしろ悟天を警戒するか、恐れる反応をしていた。
「悟天に対して含む所はあるでしょうが、悟天は誰よりも苦しんでいたんです。ここは俺の顔に免じて、悟天を許してやってくれませんか?お願いします」
悟飯は、仲間達に向けて頭を下げた。続けて悟天も、「本当に申し訳ありませんでした」と言って頭を下げた。これに対してチチは、悟天の目の前に来て、悟天の頬を平手打ちした。
「これで勘弁してやるだ。もう二度と親を悲しませる事をすんでねえぞ」
「うん・・・。分かった。御免よ、母さん」
元は武道家だったとはいえ、今は年老いているチチに叩かれた位で、悟天の頬が腫れるはずがない。逆に叩いたチチの手の方が真っ赤に腫れていた。しかし、悟天には体よりも心に沁みる痛みがあった。
舞台裏でこんな事が起こっているとは知らない悟空は、バージョン4にまで上げたレードと闘っていた。そして、擬似超サイヤ人6に変身したレードを相手に大苦戦を強いられていた。
「どうした、孫悟空?息子の孫悟飯なら、この程度の攻撃を受けても平然としていたぞ」
悟空は、レードの攻撃を何度も受け、足元が覚束ない程のダメージを負っていた。
「へへへ・・・。怒った悟飯ですら勝てなかった相手だ。流石に手強いな」
この半年間、悟空は、悟飯と組手の修行をし、片方が倒れたら、もう片方が神殿に居るデンデの所まで倒れた者を運んで回復してもらっていた。回復が済んだら、元の場所に戻り、組手の修行を再開した。そして、倒れる回数は悟空の方が圧倒的に多かった。しかも修行中の悟飯は、当たり前だが怒っていなかった。その悟飯が怒っても勝てなかったのが今の対戦相手であるレードである。まともに闘っては悟空の分が悪いのは、自明の理だった。
悟空は、レードのパンチを喰らって変身が解け、仰向けに倒れた。この時、レードは、違和感を覚えた。
「妙だな・・・。幾ら俺の方が強いとはいえ、この程度の攻撃を受けただけで孫悟空が倒れるか?単なる俺の買い被りか?それとも、異常なまでにタフ過ぎた孫悟飯と闘ったばかりだから、俺の感覚がずれているのか?もう一つ気になる点がある。孫悟空は、得意の大技を一度も使わなかった。技を使う暇が無い程に俺が追い込んでいたかもしれんが・・・。むっ!」
レードは、悟空が倒れた状態のまま、両手を上に挙げている事に気付いた。
「元気玉か・・・。小賢しい!」
レードは、右手の人差し指を悟空に向け、エネルギー弾を放った。それに対して悟空は、エネルギー弾が当たる直前に姿を消し、直撃を避けた。そして、レードの背後に瞬間移動し、立った体勢で両手を挙げていた。
「しぶとい奴め。最後の悪足掻きか?」
レードは、悟空に向かって飛び掛かったが、悟空に避けられた。更に悟空は、無数の残像を発生させ、レードを翻弄した。
「ちっ、無駄な足掻きをしおって・・・」
レードは、周囲に衝撃波を放ち、悟空の残像を全て消した。しかし、悟空本人は、衝撃波を避けていたので、ダメージを負っていなかった。そして、相変わらず両手を挙げていたので、レードは、次第に焦ってきた。悟空の元気玉を作るスキルは、以前に比べて格段に上がり、短時間でも強力な元気玉を作れるようになっていたからである。悟空が両手を挙げてから、既に一分以上が経過していたので、相当強力な元気玉が作られているはずだった。
一刻も早く悟空の元気玉作りを阻止する為にレードは、悟空が反応するより速く悟空の背後に回り込み、悟空の後頭部を殴った。殴られた悟空は、仰向けに倒れた。
「これで元気玉の完成を防いだ・・・。何!?」
レードは、悟空の顔の表情を見て驚いた。悟空は、最後の頼みの綱である元気玉の作成を止められたのに、何故か笑みを浮かべていた。そして、元気に立ち上がり、超サイヤ人5に変身した。
「孫悟空。本当は元気玉を作っていなかったな?作る素振りをしていただけだ」
「そうだ。どうせ作っても、途中で阻止されるのが分かっていたから作らなかった」
「どうして作る素振りをした?」
「お前のエネルギーを減らす時間を稼ぐ為だ。もどきとは言え超サイヤ人6になっている間は、エネルギーの減りが激しい。例え何もしなくてもな」
レードは、自分の観察が甘かった事に気付いた。悟空が元気玉を作っている間は、意識を集中させなければならない。片手間に残像拳など出来るはずがない。
「超サイヤ人6の最大の弱点は、エネルギーの消耗が激しい事だ。その為にお前は、気を抑えてエネルギーの持続に努めていたが、それだと折角の超サイヤ人6の力を存分に使えない。それだったら、超サイヤ人6もどきに変身するべきじゃなかった。どうせ変身するなら、フルパワーで一気に勝負を決めるべきだったな」
話し終えた悟空は、気を高めた。気を限界以上に高め、超サイヤ人6に変身する狙いだった。ところが、そう簡単に限界を越えられるはずがなかった。気が一定の高さまで上がると、それ以降は変化なかった。それでも諦めずに気を高める努力をした。
それヵら一分後、遂に悟空に変化が表れた。顔と手の平と足の裏を除く体の表面が毛に覆われ、超サイヤ人3の様に顔から眉毛が消えた。また、体の周囲を飛び交う火花の量が倍に増えた。気も段違いに大きくなった。とうとう悟空は、超サイヤ人6に変身した。
「準決勝の試合を経て、更に強くなった今なら変身出来るんじゃないかと思って試してみたら出来た。一か八かの賭けだったけどな」
「どうせ試すつもりなら、もっと早い時点で試すべきだったんじゃないのか?超サイヤ人5のままで闘うから、余計なダメージを負った。試す前に殺される可能性だってあった。俺のエネルギーを多く消耗させる目的なら、見事な作戦とは言えない」
超サイヤ人6の力に超サイヤ人5で対抗するのは、どう考えても不利である。すぐに殺される可能性だってあった。今回は何とか耐え抜き、無事に超サイヤ人6に変身出来たから良かったものの、ハイリスクローリターンな作戦だった。
「もう一つの準決勝の試合で、お前は、エネルギーを少しでも長く持続させる為、力を抑えて闘っていた。それを観て俺は、決勝でも同じ戦法を取るんじゃないかと思った。なので、お前が超サイヤ人6もどきになったら、まず防御に徹してダメージを少しでも減らし、エネルギーを温存した。もしフルパワーで一気に勝負を決めに来られたら、やばかったけどな。今回は、お前の慎重さに救われた。そして、機が熟したら超サイヤ人6になるつもりだった」
悟空が危険を冒してまで超サイヤ人6の力に超サイヤ人5で挑んだのは、レードにエネルギーを使わせる一方で、自分はエネルギーを温存し、最終的にエネルギーの残量で少しでも有利に立つ為だった。それこそがレードに勝つ唯一の手段だと信じなければ出来ない作戦だった。
遂に超サイヤ人6になった悟空は、いきなりフルパワーになった。対するレードもフルパワーになった。互いにフルパワー同士で激突し、激しい攻防戦を繰り広げたが、レードが先にエネルギー切れになると、悟空の独壇場となった。
悟空は、レードの顔面を殴り、殴り飛ばされたレードを追い駆け、両手を握り締めてレードを上から殴打した。レードは、床に叩きつけられた後、側面に飛んだが、悟空が放った衝撃波で吹っ飛ばされた。フルパワーでいられる時間が短いだけに悟空に容赦は無かった。最後にかめはめ波を受けたレードは、擬似超サイヤ人6の変身が解けてしまった。悟空も即座に変身を解いた。
「まさか俺が出し抜かれるとはな・・・。俺のレードアイですら、お前が超サイヤ人6に変身すると見抜けなかった。つまり、お前が確実に超サイヤ人6に変身出来るとは限らなかった。もし超サイヤ人6になれなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「その時はその時さ。別の作戦を考えた」
「嫌がってる場合じゃない。やるしかない。バージョン5を」


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