遂にフリーザとの因縁に決着を付けたベジータは、控え室に戻って餃子に回復してもらった。そして、フリーザから聞き出した悟天が豹変した理由を悟空達に話した。それを平静に聞いていられる者は一人も居らず、彼等の反応は、フリーザ達に対して怒るか、悟天に同情して涙を流すかに分かれた。
「あいつ等!何て事をしてくれたんだ!許せない!ドラゴンボールで生き返らせて、もう一度殺してやりたい位だ!」
最も怒りを露にしたのは悟飯だった。普段は冷静沈着な悟飯が人前で怒るのは、大変珍しかった。
「フリーザとセルがした事は、決して許せません!しかし、この事を悟天に伝えれば、あいつの目が覚めるでしょう。悟空さんを憎むのは間違いだと気付くはずです。そして、俺達の元に戻ってきます。今のあいつが戻ってくれば、大きな戦力になります」
トランクスも怒りを感じていたが、これで悟天を正気に戻せると楽観的な意見を述べた。これには多くの者が同調した。
「そう上手くいけば良いがな・・・」
トランクスの意見に懐疑的な悟空が呟いた。余りにも小さな声で喋ったので、ピッコロ以外は聞き取れなかった。
「悟空さん。何か言いましたか?」
「あ。いや、レードは何を考えてるんだろうなって言ったんだ」
折角の盛り上がりを自分の不用意な発言で壊したくなかった悟空は、咄嗟に誤魔化した。ピッコロは、悟空の心情を見抜き、敢えて突っ込まなかった。
「そう言われてみれば、最近のレードは変でしたよね。以前に比べて暗くなったと言うか・・・。やはり大事な娘を死なせたからでしょうか?」
「だろうな。それよりレードは、前の試合で父親のフリーザがベジータに殺されたんだ。ベジータの仲間であるおめえに怒りをぶつけてくるかもしんねえ。充分に注意しろよ」
「はい。勝てないまでも、今度こそ一矢報いてきます」
またしても初戦でレードと闘う事になったウーブは、前回同様にレードに勝てないだろうと思っていた。しかし、あれから修行して大幅に強くなった今の自分なら、レードに一泡吹かせられると思っていた。
この時、第六試合の開始を告げるアナウンスが流れた。ウーブは、控え室を出て、闘技場に移動した。前の試合で観客が全員居なくなったので、広い空間の中で孤独を感じた。すぐにレードも現れ、ウーブの前に立った。レードの様子を見た限りでは、怒っているようには見えなかった。そして、二人に試合の開始を促すアナウンスが流れた。
「初戦の相手が、またもやお前とはな・・・。俺達には不思議と縁があるらしい。それとも俺と再び闘いたくて、わざと組み合わせを弄ったのか?」
悟空達は、武道会の組み合わせが抽選ではなく、レードが独自の判断で決めた事を知らなかった。しかし、実はそうなんじゃないかと疑っていたウーブは、敢えて言ってみた。
「下らぬ詮索をしないで、とっとと掛かって来い」
「そうか・・・。なら遠慮なく行かせて貰おうか」
ウーブは、少し拍子抜けしながらも魔人化し、レードに飛び掛かった。そして、序盤から激しい攻防戦を繰り広げた。
交戦中にウーブが感じたのは、まだ全力ではないだろうが、レードが意外に強くない事だった。元々強いレードがサイボーグに改造されたのだから、その強さは全出場選手の中で随一だと思っていた。しかし、サイボーグになってこの程度なら、後で見せる予定の力を使えば、ひょっとして勝てるんじゃないかとさえ思えた。
お互い攻撃を数発ずつ当てた所で、一旦離れた。
「そろそろ本気で闘ったらどうだ?力を温存して負けたら、悔やんでも悔やみきれまい」
「そう言うお前こそ、まだ本気で闘っていない。俺が見抜けないとでも思ったのか?」
「先にこっちが本気になれと言いたい訳か・・・。相変わらず大物振りやがって。良いだろう。見せてやるぞ!俺の新たな力をな!メタモルフォーゼ!」
ウーブが気を高めると、全身が黒いオーラに包まれた。そして、体が巨大化し、全身が鎧に似た外皮に覆われた。その為、ウーブが鎧を身に纏っているように見えた。また、表情が険しくなり、実際は怒ってないが、怒っているように見えた。このウーブの変貌にはレードも、控え室で観戦している悟空達も驚いた。その一方、天津飯と餃子は平然としていた。
「ウ、ウーブの奴、一体どうなったんだ!?」
「メタモルフォーゼだ。かなりの力と魔力がある魔族のみ出来る。人の体から魔物の体に切り替わるから、変身とは違う。ウーブがメタモルフォーゼをするのに力は申し分無かったが、魔力が足りなかった。しかし、魔界で魔力を高めたウーブは、メタモルフォーゼが出来るようになった」
ウーブは、魔人化して力を得た。しかし、次々と現れる強敵達を前にして、魔人化だけでは物足りないと感じていた。そこで目を付けたのが、このメタモルフォーゼだった。見た目が大きく変わる事に躊躇いはあった。また、ジニア人と闘っていた時は、一週間に一回は操縦者の護衛として宇宙船に乗船していた為、何ヶ月も悟空達の元を離れられなかった。しかし、ジニア人との闘いを終えた後、意を決して魔界で修行した。ただし、悟空達には、その理由を伝えなかった。
魔界に来たウーブは、天津飯に会い、メタモルフォーゼが出来るようになりたいと伝えた。力に関しては自信があった。しかし、魔力は足りないと感じていたので、魔力を高める為の最適な場所を天津飯に案内してもらった。そして、魔界で修行する目的を悟空達に秘密にしてくれと頼んだ。いきなり見せて驚かせたかったからである。そして、たまに天津飯の組手の相手をする時以外は魔力を高める修行に専念した。
長い修行の末にウーブは、メタモルフォーゼが出来るようになった。確かに外見は変わったが、リマやサキョーに比べると、極端に変わったとは言えなかった。これはウーブが強過ぎるからだった。魔力のせいで外見は変わるが、肉体の強さが上回り、大きく変貌しなかった。天津飯曰く、ウーブが更に強くなれば、メタモルフォーゼしても外見が人間の時と余り変わらず、体の大きさも変わらないそうである。
半人半魔の魔人化と違い、メタモルフォーゼは完全な魔物化だった。その分、パワーは魔人化した時よりも遥かに上回っていた。しかも理性を保っていられた為、その力を最初から自由にコントロール出来た。体の大きさや外見の変化さえ我慢すれば、理想的なパワーアップだった。
「魔界で半年も修行した割には強さが余り変わったように見えなかったので心配してたけど、そういう事だったのか・・・」
「半年でメタモルフォーゼが出来るようになったのは、実は凄い事だぞ。リマでさえ一年近く掛かったからな。まあ、リマの場合、魔王としての職務を熟しつつだったがな」
「凄え気だ。もしかしたら一矢報いる所か、勝てるかもしんねえぞ」
ウーブは、左足でレードを踏みつけようとしたが、レードに飛び上がって回避された。そこを待ち構えて右拳でパンチしたが、レードが途中で停止したので当たらなかった。しかし、全身から放電し、感電したレードが墜落した。続いて両目からビームを出して追撃したが、レードに避けられた。レードは、お返しとばかりにエネルギー波を何発も放った。ウーブは、体が大き過ぎるので避けられないと判断し、身を固めてエネルギー波を耐え忍んだ。
レードのエネルギー波は、ウーブの外皮に遮られた。レードがエネルギー波を放つのを止めると、ウーブは、口から衝撃波を出した。レードは、走って衝撃波を躱しつつ、ウーブの股下を走り抜け、ウーブの背後に回った。そして、ウーブの膝を後ろから蹴った。ウーブは、バランスを崩して尻餅を付いた。しかし、続けて飛び掛かってきたレードを鷲掴みにし、握り締めた。レードは、苦しみながらもウーブの手を振り解き、ウーブから離れた。その間にウーブは立ち上がった。
レードは、傷付いた体を手で摩りながら、ウーブを賞賛した。
「見事だ。以前に闘った時は雑魚に過ぎなかったが、今は違う。大した成長だ。初戦は調整試合のつもりだったのだがな・・・」
レードがウーブを初戦の相手に選んだのは、出場選手の中では強過ぎず弱過ぎず、手頃な相手だと思ったからだった。また、以前に拳を交えた事があるので、闘い方を知っているのも一因した。しかし、メタモルフォーゼしたウーブの強さや戦法は、レードの事前の予想と大きく異なっていた。
「お前から褒められるなんて思わなかったぞ。さあ、次はそっちが本気になる番だ」
「少し強くなった位で生意気な・・・。このままでも勝とうと思えば勝てるが、特別に見せてやろう。サイボーグに改造されて新たに得た力をな。お前にはバージョン1で充分だ」
レードを相手に善戦するウーブ。しかし、レードが実力を見せるのは、これからだった。


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