悟空と悟天の対決は、激闘の末、悟空の死亡という最悪の展開を迎えた。この結果を見たドクター・ハートは、悟空の死体を回収する為、配下のロボットとサイボーグ達を闘技場に向かわせた。そして、ロボット達が闘技場に現れ、その内の一体のロボットが悟空の体に手を触れようとした瞬間、悟天に殴り飛ばされた。
「貴様等!孫悟空を連れて行こうとするんじゃねえ!」
悟天に殴り飛ばされたロボットは、原形を留めない程に壊れ、機能を停止していた。今は傷付いて弱っているとはいえ、悟天には束になっても敵わないので、ロボット達は命令を遂行出来ずに困惑した。この時、悟飯も闘技場に駆けつけてきた。そして、悟天の顔を見るなり、大声で怒鳴った。
「悟天!お前は、何て事を仕出かしたんだ!」
「五月蠅い!どいつもこいつも早合点するな!まだ孫悟空は生きている!この程度で死ぬ奴じゃない!」
悟天の言葉に、悟飯もロボット達も唖然とした。それから悟天は、悟空の上腕部を掴み、悟空の体を激しく揺さぶった。
「目を覚ませ!孫悟空!俺は、貴様を殺し足りないんだ!こんなんじゃ満足してない!起きろ!起きてくれ!」
何故か悟天は、悟空を目覚めさせようとした。その悟天を「どけ!」と言って突き飛ばし、悟飯は、悟空に心臓マッサージを行った。悟天は、突き飛ばされた事を怒りもせず、悟飯がやっている事を黙って見ていた。やがて悟空の体が微かに動いた。
「う、うーん・・・」
「やった!心臓が動き始めたぞ!」
悟空が生き返ったのを見て喜んだ悟飯が、ふと悟天に目を向けると、悟天は、安心した顔をしていた。しかし、悟飯に見られているのに気付くと、慌てて顔を引き攣らせた。そして、悟空は、目を覚ました。
「あ、あれ?オラ、負けちまったのか?」
「ええ。でも、死ななくて良かった。後は俺に任せてください。まずは控え室に連れて行きます」
悟飯は、悟空を抱えようとしたが、悟天が制止した。
「待て!まだ闘いは終わっていない!さあ!続きを始めるぞ!」
「悟天。試合は終わったんだ。お前の勝ちだ。もう充分だろ?」
「試合なんて関係ない!この闘いは、どちらかが死ぬまで終わらないんだ!部外者は引っ込んでろ!」
「やれやれ・・・。大人しくさせないと駄目なようだ」
悟飯は、力尽くで悟天を押さえつけようとした。今の弱った悟天を押さえつける事は、悟飯には造作も無い事だった。しかし、悟空が悟天に同意した。
「分かった。おめえが闘いてえと言うなら、とことん付き合ってやろうじゃねえか。悟飯は下がっていてくれ」
「父さん!無茶だ!今の父さんは闘える状態じゃない!」
「悟飯。ここでオラが退いたら、悟天は、一生オラを憎むぞ。無茶でも何でも、ここはやるしかねえんだ」
悟空は、無理をして立ち上がったが、とても満足に闘える体ではなかった。それでも悟飯は、無人の客席まで下がり、傍観していたロボット達は引き上げていった。そして、極めて異例ではあるが、試合再開のアナウンスが流れた。
「孫悟空。今度こそ貴様の息の根を完全に止めてやるぞ」
「悟天。オラを殺したいと言っておきながら、息の根を止めた後、蘇生するまで待っていた。本当にオラを殺してえのか?」
「な!?あ、当たり前だ!」
「そうか・・・。だったら、そのチャンスをやろうじゃねえか」
悟空は、気をゼロにまで下げた。戦闘中に気をゼロにまで下げるなんて、通常なら完全な自殺行為だった。
「悟天。知っての通り、一瞬で気を最大にまで高める事は出来ねえ。今なら一撃でオラを殺せるぞ。ほら。遠慮は要らねえぞ」
悟空は、無防備の状態で悟天の前に立った。しかし、悟天は、飛び掛かろうとはしなかった。
「ふざけるな!俺は、本気になった貴様を殺したいんだ!」
「本当にオラを殺したいんだったら、オラが本気になるかならないかなんて関係ねえ。フリーザだったら、喜んでオラを殺したぞ。おめえは、オラを殺すなんて言ってるが、本心ではそれを望んでねえ。安心したぞ」
「ち、違う。俺は、心から貴様を殺したいんだ。早く気を高めろ!」
悟天は、必死に否定したが、戸惑いを隠せなかった。
「悟天。おめえは何も悪くねえ。悪いのはオラだ。おめえが苦しんでるのに、オラは、見向きもしなかった。済まなかった」
「い、今になって父親面するんじゃねえ!は、早く気を高めろ!」
「オラは、分かったんだ。無理に説得しても上手くいかねえ。ましてや親子で殺し合うなんて絶対に間違っている。思うが儘に動けば良いんだ」
悟空は、穏やかな表情で悟天に歩み寄った。そして、悟天に抱きついた。
「悟天。オラはな、おめえがどんなに変わっても、おめえの事が可愛くて可愛くて仕方ねえんだ」
「ぐっ。は、離せ!」
「離れたいなら、力尽くで離れれば良い。それ位、簡単に出来るはずだぞ」
悟天は、悟空から離れようとしたが、まるで金縛りにあったように動けなかった。
「それにしても悟天、本当に強くなったな。オラ、びっくりしたぞ。レードに礼を言うべきかもしんねえな」
「な、何を血迷った事を言ってるんだ!い、いい加減に離れろ!」
結局、悟空が抱きつくのを止めるまでの間、悟天は、微動だに出来なかった。
「く、くそっ。く、下らねえ真似しやがって!ぶ、ぶっ殺してやる!」
「そうだな。おめえに殺されるんだったら悪くねえかもな」
「ふ、ふざけるな!は、早く気を高めろ!・・・高めてくれ」
ようやく悟空は、悟天から離れて気を高めた。それに呼応して悟天も気を高めた。そして、悟天は、悟空に向かって飛び掛かったが、途中で足が縺れて転倒した。すぐに起き上がって殴り掛かったが、手足の動きが一致せず、まるで素人の様な動きだった。当然の事ながら、パンチが当たるはずなかった。それでも悟天は、攻撃を続行したが、攻撃している側なのに何故か気が減っていった。
「ぐっ。体の調子がおかしい・・・。どうしてしまったんだ!?」
「ふっ。体は正直だな。おめえの体は、オラと闘うのを嫌がってるんだ。精神と体が一致しないと、大きな力は出せねえ。ましてや今のおめえは、精神と体が喧嘩している状態だ。力なんて出るはずねえ」
その後も悟天は、攻撃を続けたが、悟空には一回も当たらなかった。逆に悟空からの攻撃を躱せずに受け続け、仕舞いには足を掬われ、派手に転んだ。すぐに立ち上がったが、息が大きく乱れていた。
「おめえが目指してるのは、オラを殺す事じゃなく、オラに殺される事じゃねえのか?自分でも変な事を言ってると思うけど、そう考えると、しっくりくるんだ。試合開始前、オラに『殺すつもりで掛かって来い』と言ってたな。あれが全てを物語っているんじゃねえのか?」
「ち、違う!」
悟空の指摘に驚いた悟天は、即座に否定したが、明らかに動揺していた。自分自身でも気付かなかった己の本心を言い当てられた気がした。
「お、俺が殺されたいのだとしたら、その理由は何だ?」
「苦しみから解放される為だろうな。でもな、悟天。オラは、おめえを殺さねえ。おめえが苦しんでるなら、その苦しみを共有する。そうすりゃおめえは、少しは楽になるだろうからな」
「何が苦しみを共有するだ!貴様に俺の気持ちが分かってたまるかー!」
「そりゃ分からねえさ。だから分かりたいんだ」
悟天は、飛び掛かったが、勢いがなかった。悟空は、悟天の飛び蹴りを避けつつ、悟天の腹部を殴った。悟天は、仰向けに倒れ、再び立ち上がる事が出来なかった。そして、悟空の勝利を告げるアナウンスが流れた。敗死から一転、悟空の大逆転勝利だった。


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