其の百三十一 バージョン1

ウーブとレードの再戦は、意外にもウーブが善戦していた。劣勢のレードは、新たに得た力の一部を使おうとしていた。

「バージョン1だと?何だ、それは?」
「順を追って説明してやろう。ドクター・ハートは、複数の特殊な力を俺の体に内蔵した。その力は段階毎に発揮される。その段階の事をバージョンという。お前には一番最初のバージョンであるバージョン1を見せてやろう」

レードの体が光り始めた。そして、気の感じが悟空そっくりになった。

「な!?ど、どうして悟空さんの気がレードから感じられるんだ?」
「まだ驚くのは早いぞ!はあっ!」

レードが気を高めると、激しい炎の様相をした黄金色のオーラに全身を包まれた。上半身に茶色の毛が生え、顔と両手以外を覆った。そして、瞳の色が赤になった。その姿は超サイヤ人5と瓜二つだった。

「超サイヤ人5!?サイヤ人ですらない貴様が、どうして超サイヤ人5に!?」
「ロボベジットもサイヤ人ではないのに超サイヤ人に変身したが、あれと同じだ。つまり超サイヤ人5もどきだ。そして、俺から孫悟空の気を感じられるのは、俺の体内に孫悟空の細胞が埋め込まれたからだ。ドクター・ブレインは、俺達との戦闘前に超小型のスパイロボットを使って俺達の細胞を集めたが、それをドクター・ハートが惑星ジニアの外に持ち出していた」

元々は悟空達のクローンを造る為に採取された細胞だが、ドクター・ブレインの死によるミレニアムプロジェクトの中止により、クローン計画も無くなった。しかし、手に入れた細胞を使わないのは勿体ないと考えたドクター・ハートは、別の手段に用いる事にした。

「孫悟空の細胞により、俺は半年前のではあるが、孫悟空の強さを手に入れた。今からそれを見せてやろう」

レードは、ウーブの目の前まで飛び上がり、太陽拳を使った。そして、ウーブの目が眩むのを確認するや否や、超かめはめ波を放った。超かめはめ波は、ウーブの外皮を突き破り、ウーブの腹部に直撃した。ウーブは、大ダメージを負ったが、魔力を使って治した。

「くっ。悟空さんの技まで使えるようになるなんて・・・」
「ほう。回復まで出来るのか。そいつは厄介だな」

傷付ける度に回復されるのであれば、攻撃自体が無駄になる。回復させない為には、一撃で仕留めるのが有効である。しかし、死体を別の銀河に遺棄する計画があるので、死体が残るように殺さないといけない。レードは、戦闘を中断して、どうやって仕留めるかを考えた。

「体が大きい上に回復まで出来るなら、急所を狙っても、一撃で殺せるかは微妙だ。十倍かめはめ波はエネルギーの消耗が激しいので、下手に連発すれば、こちらのエネルギーが先に尽きてしまう。龍拳は体を粉微塵にするから使えない。元気玉は体内で作れば大きさを抑えられるので命中しても体を消滅させずに済むが、充分に気が溜まる前に妨害されるのが目に見えている。それに一回戦で、これ以上バージョンを上げたくない」

レードが更にバージョンを上げれば、別の戦法もあった。しかし、この試合を悟空達が観戦している事がレードの頭に重く圧し掛かった。いずれ悟空達と闘う事を考えると、最初の試合で余り手の内を見せたくなかった。

レードは、ウーブを何度も殴ったり蹴ったりしたが、固い外皮に遮られて余りダメージを与えられなかった。次に気円斬を放ち、ウーブの足の脛の外皮と、その下の皮膚を同時に切った。その後も気円斬を操り、ウーブの体を何回も切りつけた。ところが、ウーブの体が大きいので、中々致命傷にはならなかった。ようやく大きなダメージになっても、すぐに魔力で回復された。しかもウーブの体を切り過ぎて気円斬の切れ味が悪くなり、最後に消滅した。

「どうした、レード?お前の力は、こんなものか?今度は、こっちから行くぞ!」

レードの攻撃を耐え切ったウーブが反撃に出たが、レードは、パンチを残像拳で躱した。ならばとウーブは、魔法で巨大な剣を作り、それを振り回した。この剣の切れ味は相当なもので、レードが気円斬を放ったが、ものの見事に粉砕された。しかも剣の方は全く刃毀れしていなかった。レードは、次の手段を考えつつ、剣を躱し続けた。

レードに剣が全く当たらないので、ウーブは、更にもう一本の巨大な剣を作り、二刀流になった。剣が二本になった事で、ウーブの剣による攻撃が激しさを増した。レードは、必死に避けていたが、切っ先が胸部に当たった。レードの胸部から血が流れたが、それを拭き取る余裕すら無かった。

「使わないでおこうと思っていたが、そうも言ってられんな。喰らえ!十倍かめはめ波!」

レードが放った十倍かめはめ波は、ウーブの胸部を貫通した。ウーブは倒れ、剣を二本とも離した。すかさずレードは、二本の剣をエネルギー球で破壊した。そして、胸部の血を拭き取った。

「これが十倍かめはめ波か・・・。なるほど。確かに凄まじい威力だ。しかし、ウーブは、まだ死んでいない」

ウーブは、大ダメージを負ったが、魔力で回復してから立ち上がった。

「魔力を使って回復しているなら、魔力が尽きれば回復出来なくなるはずだ。どうすれば手っ取り早く魔力を使わせられるか?・・・そうだ!」

これまでウーブを倒す事ばかり考えていたレードだったが、ここに来て魔力に着目した。そして、ウーブの魔力を使い切らせれば、自ずとウーブに勝てると結論付けた。

レードは、再び飛び掛かり、ウーブの腹部の外皮を引き剥がした。そして、皮膚が剥き出しになった箇所にエネルギー波を何度も浴びせた。ウーブが魔力で外皮と傷を回復させると、別の箇所の外皮を引き剥がし、同じく集中的に攻撃した。固い外皮が体に受けるダメージを軽減するなら、その外皮を取り除けば良い。ウーブは、外皮の下を攻撃されれば、普通にダメージを受けるので、回復せざるを得ない。結果としてウーブに魔力を使わせられる。それがレードの作戦だった。

レードの方がスピードは上なので、ウーブは、レードの動きを止められなかった。魔力を使って回復し続けるしかなかった。やがて魔力が尽き、回復が出来なくなった。そして、レードのエネルギー球を喰らって大ダメージを負い、人間の姿に戻って倒れた。

レードの勝利がアナウンスされたが、持久戦に持ち込んだせいで疲労したレードは、機敏に動けなかった。それでもウーブに止めを刺す為に歩み寄ったが、その直後に悟空が闘技場に現れ、ウーブを抱え上げた。

「ウーブ、凄かったぞ。オラ、びっくりした」
「また勝てませんでしたけどね」

悟空は、ウーブが殺されるかもしれないと心配していた。ウーブが命を落としそうだったら、何時でも駆けつけるつもりだった。その為、試合後すぐに闘技場にウーブを迎えに行き、ウーブを抱えて闘技場を後にした。レードは、遠ざかる二人の背中を黙って見ているしかなかった。そして、自身も控え室に引き上げた。控え室では、ドクター・ハートが御冠だった。

「何なの!あの無様な闘いは?もっとバージョンを上げれば、簡単に勝てたでしょ!」
「それをしていれば、あの試合を観戦していた孫悟空達が対策を立てていただろう。闘いは続くんだ。こちらの手の内は、極力見せない方が良い」
「例え手の内を知られても、あなたが負けるはずないでしょ!詰まらない事を気にして、結局殺せなかったじゃない!」

ドクター・ハートは、今のレードなら悟空達全員を一度に敵に回しても、勝てるだけの力があると確信していた。

「あなた、本当に殺す気があるの?長年の付き合いから友情を感じてるんじゃないの?」
「あいつ等とは敵同士だ。それは今も昔も変わらない。ジニア人との闘いでは、奴等の力を利用していたに過ぎない」
「だったら次は必ず殺し、今の言葉を証明してもらうわよ!」

ドクター・ハートのヒステリックな怒り方に、控え室に居る面々は辟易した。

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