其の百四十一 進化する悪魔

悟空は、超サイヤ人4に変身し、ブロリーに飛び掛かった。そして、ブロリーを殴ったが、すぐに殴り返された。次に体当たりしてブロリーを吹っ飛ばした。更に走ってブロリーに追いつき、上空に蹴飛ばした。

ブロリーは、体勢を入れ替え、地上の悟空に向かって無数のエネルギー弾を放った。悟空がエネルギー弾を弾き飛ばしてる間に、悟空の正面に降り立ち、悟空の顎を蹴り上げた。続いて悟空の腹部にエネルギー波を放った。

悟空は、エネルギー波に押されて後退りしたが、倒れずに踏み止まり、エネルギー波を上空に投げ飛ばした。

「ゴカンとは別次元の強さだ。流石はブロリーだ。もっと気合を入れないとな」

悟空は、気を高めた。ブロリーがエネルギー球を放ってきたが、それを片手で受け止めて握り潰した。そして、ブロリーの背後に回り込み、背中を蹴飛ばした。それからブロリーを追い駆け、後頭部を肘打ちした。ブロリーは、床に激突したが、頭を押さえながら立ち上がった。

「カカロット。俺は、お前の孫でもあるんだぞ。少しは手加減しろ」
「ブロリー。俺は、お前の爺ちゃんなんだ。少しは敬え」

互いに軽い冗談を述べた後、ブロリーは、気を取り直して悟空に向かって駆け出した。しかし、悟空からパンチの嵐を浴びた。続けて悟空は、ブロリーの右手首を両手で掴み、勢いよく投げ飛ばした。ブロリーは、客席に激突したが、すぐに立ち上がった。

「タフさは相変わらずだな。持久戦になったら、こちらの分が悪い。やはり短期決戦しかねえか。しかし・・・」

桁外れたタフさを誇るブロリーに勝利するには、持久戦は得策ではない。かつて仲間の力を結集して放った一撃で勝った時の様に、大きな力で一気に勝負を決めた方が確実である。しかし、悟空は、それを出来れば避けたかった。以前のブロリーが相手なら何の問題も無いが、今は自分の孫。しかも死んだアイスの忘れ形見である。もし殺してしまったら、父親の悟天は怒り狂うだろう。悟空だって孫を殺して良い気はしない。出来れば殺さずに勝ちたかった。

悟空が悩んでいる間に、ブロリーは、悟空に迫ってきた。そして、無数のパンチを繰り出してきた。悟空は、華麗なフットワークでパンチの雨を潜り抜けたが、ある違和感を覚えた。ブロリーの動きが、先程より速くなっていると思った。ブロリーに疲れた様子が見えないのでスピードが衰えないなら分かるが、試合中にスピードが増すなんて、常識で考えてありえない。そこで、わざと隙を作ってブロリーに殴られ、違和感の正体を確かめてみた。

「ぐっ。さっき殴られた時より痛え。やっぱりブロリーの奴・・・」

悟空は、ブロリーの攻撃を意図的に喰らい、ブロリーの攻撃力を確かめた。それによって、ブロリーの攻撃力が上がっている事を確認した。一方、悟空が察したブロリーの異変を、控え室で観戦している仲間達も何となく気付いた。

「間違いない!ブロリーの奴、先程よりも強くなっている!」
「パパ、何を言ってるの?試合中に強くなる訳ないじゃない!さっきまでは様子見で、今度は本気を出したんじゃないの?」

パンの指摘に、トランクスやウーブは、「尤もな意見だ」と言いたげに頷いた。しかし、悟飯は、首を横に振った。

「あのブロリーが、そんな真似をするはずない!ましてや父さんの方が力は上なんだ!ブロリーは、最初から本気で闘っていたと見るべきだ!しかも本気で闘い続けながら、体力の衰えを全く見せない。まだまだ闘い続けられるだろう。このままでは、流石の父さんでも危ない!」

悟飯は、ブロリーの能力が試合中に上昇している事に気付いた。今の状態のまま戦闘が推移していけば、いずれブロリーの力が悟空に匹敵するまで上がるかもしれない。その前にブロリーの体力が尽きれば問題無いが、悟空の体力の方が先に尽きる可能性だってある。悟飯は、ブロリーに脅威を感じた。

「以前にブロリーと闘った時は、急に強くなるなんて事は起きなかった。どうしてそんな事が・・・」

ブロリーが段々と強くなっている事には気付いた悟飯だが、その理由が分からなかった。この時、ベジータが会話に加わり、理由に対する憶測を述べた。

「あの時と今とでは、決定的に違う事がある。それは闘っている相手がブロリーより強いか弱いかだ。以前の闘いでは、俺達全員ブロリーより戦闘力が下だった。だからブロリーの戦闘力が変動しなかった。しかし、今の闘いでは、カカロットの方がブロリーより戦闘力は上だ。だからカカロットとの闘いが修行となり、ブロリーの力が増しているのだろう。他に理由は考えられない。相変わらず恐ろしい奴だ」

実力が自分より上の者と拳を交える事は、良い経験になる。だからベジータは、ブロリーが悟空の強さに影響を受けて能力が上昇したと考えた。そして、改めて伝説の超サイヤ人の才能に畏怖した。

「どうして悟空さんは、超サイヤ人5に変身して闘わないんだ?悟空さんが超サイヤ人5になれば、大きく実力差が開き、一気に勝負を決められるのに・・・」
「そうかもしれない。しかし、最悪のケースが起こるかもしれない。相手が強ければ強い程ブロリーが強くなるなら、悟空さんが超サイヤ人5になれば、ブロリーを超サイヤ人5にさせてしまうかもしれない。ならば超サイヤ人4のまま闘うのがベストだと考えているのだろう」

仲間達が心配して見守る中、戦闘は続いていた。ブロリーは、積極果敢に攻めるのに対し、悟空は、無駄な動きをせず、回避に専念した。ブロリーの攻略法が見つかるまで、様子を見る事にした。悟空が前に出て闘おうとしなければ、ブロリーは強くならない。また、エネルギーの消耗を抑えられる。この悟空の消極的な闘い方に、ブロリーは、次第に苛立ってきた。

「詰まらん闘いをする奴だ。もうお前への興味は失せた。一気に終わらせてやる」

ブロリーは、悟空に愛想を尽かした。そして、ブロリーが空中に浮かび上がると、その周囲を球状の緑色の膜が覆った。悟空は、これと同じものを以前見た事があった。

「あ、あれは、まさかアルテマアタック!?」

かつて邪悪龍と化した魔神龍が使用したアルテマアタックを、今度はブロリーが使った。元々は伝説の超サイヤ人の技で、ブロリーは、地獄の底に居た時、千年前の伝説の超サイヤ人から教わった。

「ほう。よく知っていたな。ならば、この技の恐ろしさも知っていよう。触れたら最期だぞ」

アルテマアタックとは、自分の体の周囲にアルテマ膜というバリアーに似た緑色の球状の膜を張り、その膜を張った状態で移動して敵に当てる技である。アルテマ膜に触れられた箇所は、跡形も残らず消滅する。大昔に編み出された技だが、現代に至るまで、この技を破った者は居なかった。

ブロリーは、悟空に迫った。悟空は、ブロリーから距離を置く為、闘技場の上空を逃げ回った。そして、動きながらアルテマアタックの攻略法を考えていた。しかし、良いアイデアが思い浮かばなかった。

悟空は、魔神龍戦を思い返していた。魔神龍との対戦時、ゴジータが瞬間移動してアルテマ膜の中に入り、魔神龍を羽交い絞めにして自爆すると脅し、技を解除させた。当時は一時的に神龍の力を得たピッコロが居て、例え死んでもピッコロに生き返らせてもらえば済む話なので、この脅しが通じた。

ところが、今回は自爆して死んでも生き返れないので、説得力が弱かった。それでも上手くブロリーを騙せれば技を解除させられるが、見抜かれれば解除させられない。しかも膜の中に入ってしまうと、膜の外に出られず、密着状態の為に攻撃も出来ない。後は振り解かれて悟空だけ膜に触れてしまい、一巻の終わりである。同じ事を試すにはリスクが大き過ぎた。

悟空は、懸命に逃げ回っていたが、とうとう闘技場の隅に追いやられた。背後は壁で、前方にはブロリーが居る。そして、床のパネルは宇宙最高の硬度を持つポラリスである。上空に飛び上がれば、ブロリーの格好の餌食になる。壁伝いに左右どちらかに移動しても、ブロリーに距離を詰められる。後方の壁を壊して後退してたら、余計な時間を取られて追いつかれる。床を壊して地面に潜るなど論外である。正に八方塞がりの状況だった。

この様子を控え室のモニターで見ていた餃子は、珍しく大声を上げた。

「天さん!悟空が死んじゃう!」
「悟空が助かる方法は一つある。それは悟空自身も気付いてるいるはずだ。出来るかどうかは別としてな」

天津飯は、悟空のピンチに気が気ではなかった。しかし、まだ望みを捨てた訳ではなかった。

再び闘技場では、ブロリーは、悟空に逃げ道が無いか確かめ、それから突撃した。

「死ね!カカロット!」

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