ブロリーは、得意気にサイヤ人の歴史を語り始めた。
何万年もの昔、地球から何億光年も離れた銀河にある星で、サイヤ人の祖先達が生息していた。しかし、彼等は、一つの星に長期間に渡って留まる事が出来なかった。数ヶ月も滞在したら、別の星に移る事を余儀無くされていた。その理由は食料事情によるものだった。一人一人が大食いの上、自らの手で食料を作るという発想が全く無かったからである。星にある食料を全て食べ尽くしたら、すぐに別の星に行って新たな食料を確保しなければならなかった。
ところが、当時のサイヤ人達は、文明を持たず、異星人との交流も無かった為、宇宙船なんて便利な物を所有してなかった。その為、自力で宇宙空間を移動しなければならなかった。
ここで悟空が話に割り込んだ。
「待てよ。宇宙空間を自力で移動するなんて、出来るはずがねえ。昔のサイヤ人だって、宇宙空間では生きられなかったはずだ。オラみてえに瞬間移動したんじゃねえのか?」
「宇宙空間を自力で移動するのは、決して不可能ではない。現に前世で俺は、惑星ベジータが崩壊した際、宇宙船に頼らず自力で脱出した。宇宙船が無ければ宇宙空間を移動出来ないなど、軟弱者の発想だ」
子供だろうと老人だろうと関係無く、当時のサイヤ人達は、宇宙空間を自力で移動していた。しかし、決して容易く移動していた訳ではなく、途中で窒息したり隕石に衝突したりして、命を落とす者が少なからず居た。それ等が怖いからと言って星に残っても、もう食料が残っていないので、飢えて死ぬだけだった。
別の星に移動したら、それで済む話ではなかった。移動先が酸素の無い星だったら、息継ぎも出来ずに、またすぐに別の星に移動しなければならなかった。酸素がある星に移動したとしても、そこが食料の無い星だったら、やはりまた移動しなければならなかった。そうした経験からサイヤ人達が学んだのは、移動先は何かしらの生物が住む星にすべきという事だった。生物が住む星というのは、酸素があり、その生物が食す食料があるからだった。
サイヤ人達は、移動先で住んでいた生物に対し、食料を譲ってくれと頼んだりせず、殺して食料を奪った。その死体すら食した。それ等の行為が悪いとも思わなかった。ただし、必要以上に殺さなかった。すぐに殺してしまえば、いずれ死体が腐って食べられなくなるからである。しかし、食べる直前に殺せば、新鮮な死体を食べられる。当時のサイヤ人は、肉食動物と同レベルの知能で、他の生物の事を食べられるかどうかとしか見ていなかった。
しかし、サイヤ人達の野蛮な行為は、徐々に宇宙の各所に知れ渡り、警戒されるようになった。自分達の貴重な食料をサイヤ人達から守る為、ある種族は体を鍛えた。別の種族は武器を開発した。そして、いざサイヤ人達が攻めてくると、すぐに戦争になった。サイヤ人達は、予想外の抵抗に遭い、追い返される事もあった。しかし、負けん気が強いので更に力を磨き、勝利するまで何度も攻めた。
サイヤ人の名前が知られるようになると、サイヤ人を倒そうとする者まで現れた。その理由は、名を揚げたいとか、食料を奪う為とか諸説あったが、とにかく腕に自身のある者なので、サイヤ人達にとっては迷惑どころか脅威だった。そして、その者がサイヤ人達が住む星を攻め、次々と殺した。サイヤ人達は、必死に応戦するも敵わず、絶滅の危機に晒された。しかし、大人達が束になっても勝てなかったのに、たった一人の子供がその者を倒した。
その子供は、正に天才児だった。普通のサイヤ人が超えられない壁を、その子供は簡単に越えた。皆で同じ修行しても、その子供だけ段違いに強くなっていった。しかし、次から次へと現れる強敵達の前に、その子供も遂に敗れた。ところが、死なずに進化して再戦し、全ての敵を打ち負かした。その進化とは今で言う変身だった。外見の変化だけでなく、パワーやスピードが急激に増した。
その子供だけに頼る訳にはいかないと、周りの大人達も頑張って修行し、次々と同じように進化した。しかし、やはりその子供だけ特別だった。他のサイヤ人達は、もっと年齢を重ねてから進化したのに対し、その子供だけ飛び抜けて早い年齢で進化した。その進化は、サイヤ人の限界を超えた証として、超サイヤ人と呼ばれるようになった
その子供が成人になると、サイヤ人の王に祭り上げられた。王になった後も手強い敵が続々と現れ、その度に王が体を張って対抗した。王が勝てない敵も現れたが、それでも王は諦めず、一旦退いて体を鍛えると、体に別の進化が起こった。そして、最終的に王が敵に勝利した。それ以降も、次々と現れる敵の強さに合わせ、王の肉体は進化していった。他のサイヤ人達は、王にばかり負担を掛ける訳にはいかないと体を鍛えたが、誰も王に追いつけなかった。
ところが、敵が居なくなると、王の強くなり過ぎた力を発揮する場が無くなった。王は、自身の暴力性を抑えられず、遂には同族を殺戮するようになった。他のサイヤ人達は、王から逃れる為、遠くの星に避難した。それ以降も王は暴れ続け、結果として多くの星を滅ぼした。誰も王を止められなかった。余談ではあるが、この王に魔神龍は注目していた。
王から離れたサイヤ人達は、これまで通りの生活を続けた。大抵の敵は王が倒してくれたので、サイヤ人達が強敵に遭遇する事はなかった。しかし、千年もの長い年月が過ぎると、再びサイヤ人達の前に強敵が現れるようになった。平和に慣れ切ったサイヤ人達は、人数こそ増えていたが、戦闘力は王が居た頃に比べると格段に落ちていた。強敵に次々と殺され、再び絶滅の危機に瀕した。
ところが、一人の天才が群れから現れ、強敵を撃破した。その天才も千年前の王と同様に、他を寄せ付けない抜群の早さで強くなっていった。その余りの強さから、王の再来とも言われた。それ以降、次々と現れる敵の強さに合わせ、その天才は進化した。しかし、敵が居なくなると、結局その天才も暴走した。他のサイヤ人達は、暴れる天才から避難した。一人取り残された天才は、多数の星を破壊した。
この後も、王や天才と同じ様に飛び抜けて強いサイヤ人が千年毎に一人だけ生まれた。その者は、いつしか伝説の超サイヤ人と呼ばれるようになった。
サイヤ人達は、世代を超えた長い旅の末に、この銀河系に着いた。この頃にはサイヤ人達も文明に関心を持ち、宇宙船を操縦して、宇宙の旅をしていた。その一方で、弱体化していた。かつては大人のサイヤ人なら誰もがなれた超サイヤ人に変身出来る者が居なくなった。
「・・・以上が千年前までのサイヤ人の歴史だ。それ以降は、ゴカンが勉強して学んだ事だが、サイヤ人達は、銀河系でも星を転々と移り住み、最後にプラント星を乗っ取って惑星ベジータと改名した。そして、フリーザと手を組み、宇宙の地上げを行った。この後は語るまでもあるまい」
サイヤ人が長い歴史の中で残してきた足跡は、数多の銀河に及んだ。その為、ドクター・ハートがサイヤ人の存在を知った。
「ちなみに、サイヤ人の歴史を教えてくれた千年前の伝説の超サイヤ人は、病気を患って二十代の若さで亡くなったそうだ。しかし、俺より大分強かったと推察される。なにせ超サイヤ人5まで変身したからな。もし病気を患わなければ、それ以上の変身も可能だっただろう」
「二十代で超サイヤ人5だと!?トランクスや悟天より早いな。これが伝説の超サイヤ人の才能なのか・・・」
悟空は、伝説の超サイヤ人の才能に畏怖した。
「俺もその伝説の超サイヤ人だった。その伝説の超サイヤ人が、ただの超サイヤ人である貴様等に負けるはずがないんだ!それでも貴様等が勝てたのは、俺が伝説の超サイヤ人として未熟だったせいだ!パラガスに制御されていたからな。もし思うままに暴れて強くなっていたら、貴様等が何をしようと、絶対に俺には勝てなかった!今の俺は、正確に言えば伝説の超サイヤ人ではないが、同じ才能を持って生まれ変わった。今こそ伝説の超サイヤ人の力を思い知れ!」
ブロリーは、若い頃に父親のパラガスに制御装置を着けさせられ、以後その行動を制限されていた。その為、大人しい性格になり、存分に体を動かせなかった。もし制御無しで思うがままに暴れていたら、悟空達との対決時には更に強かった事が想像に難くない。
ブロリーは、伝説の超サイヤ人として生まれながら、その才能が開花する前に退治された。それは先の時代に生まれ、思う存分暴れてきた他の伝説の超サイヤ人達に比べれば、悲運と言えたかもしれない。しかし、運命の悪戯で、ブロリーに再び機会が巡ってきた。
「実年齢は十歳未満なのに、もう超サイヤ4にまで変身出来るんだからな。恵まれた環境で体を鍛えていたとはいえ、伝説の超サイヤ人の才能ってのは底無しだな。この分だと大人になる前に、オラを超えそうだ。早目に手を打たねえと」
数々の偶然が重なり、伝説の超サイヤ人と同等の才能を持つ突然変異として転生したブロリー。そのブロリーに、悟空は脅威を感じた。しかし、その一方で別の感情も抱いていた。
「おめえとは是非とも一対一で闘いてえと思ってたんだ。ようやくそれが叶ったぜ」
「話はここまでにして、そろそろ始めるとするか。今度こそ血祭りにしてやる。貴様を葬った後は、他のサイヤ人も同様の目に遭わせてやる。聞く所によると、第六宇宙とやらにもサイヤ人が居るらしいな。どんな奴等か知らんが、そいつ等と闘うのも面白そうだ」
長い話が終わり、いよいよ対決の幕が切って落とされようとしていた。


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