其の百三十九 生まれ変わった悪魔

悟天との闘いで敗北し、傷だらけになったトランクスは、悟空と悟飯に支えられて控え室に戻った。そして、餃子に回復してもらった。そして、立ち上がると、何とチチが目の前に来て土下座した。

トランクスとブルマが慌ててチチを宥めたが、チチは「済まねえ」と何度も繰り返し言って謝り続けた。ようやく謝るのを止めたかと思うと、今度はピッコロやウーブにも同じように土下座して謝った。トランクス同様、悟天に痛めつけられた二人だが、トランクスの前に餃子に回復してもらっていた。

「二人にも酷い目に遭わせちまっただ。済まなかっただ」
「そこまでして謝る必要は無い。いい加減に頭を上げろ」
「この度は悟天が、とんでもねえ事をしただ。悟天に代わって謝らせてけれ」
「止めて下さい!頭を上げて下さい!俺は気にしてませんから!」
「チチさんが悪いんじゃないわ!トランクスも無事だったんだし」

チチは、ようやく頭を上げたが、両目から大量の涙が流れていた。見かねたビーデルとパンに支えられてベッドまで移動し、横たわった。そして、ベッドに突っ伏して泣き続けた。

ウーブは、チチを見るのが忍びず、視線をトランクスに移して尋ねた。

「トランクスさん。悟天さんに例の話をしなかったんですか?」
「・・・したよ。したら急に悟天が怒り出した。真相を知れば目が覚めると思ったのに・・・。俺には悟天がさっぱり分からない」

長年親交のあるトランクスですら、現在の悟天の心情を理解出来なかった。あそこまで酷いと、悟天を説得して元に戻すのは、もう不可能だと思われた。そんなトランクスの脳裏に、悟天と過ごした楽しい日々が思い出された。トランクスは、数々の思い出を懐かしみ、もうあの頃には戻れないのかと思うと悲しくなった。

この時、次の試合に出場する悟空とゴカンの登場を促すアナウンスが流れた。悟空は、気を取り直して控え室を出、闘技場に移動した。悟空のすぐ後にゴカンも闘技場に姿を現した。ゴカンは、悟空の正面に立つと、憎しみを込めて怒鳴った。

「孫悟空!母ちゃんの仇め!絶対に殺してやる!」
「オラは殺してねえ。その事は悟天だって知ってるぞ。悟天から話を聞いてねえのか?」
「五月蠅い!お前の言う事なんて信用出来るか!俺は、お前が大嫌いなんだ!お前の声を聞くだけで、無性に腹が立つんだ!お前の顔を見るだけで、殴り掛かりたくなるんだ!」
「やれやれ・・・。酷い嫌われようだな。話すだけ無駄か」

アイスの死に関係なく、ゴカンは、悟空を猛烈に毛嫌いしていた。

試合開始を告げるアナウンスが流れた。ゴカンは、悟空に向かって飛び掛かり、何度も攻撃を繰り出した。しかし、どの攻撃も悟空には当たらなかった。超サイヤ人、超サイヤ人2、超サイヤ人3と次々に変身して悟空を攻めたが、やはり悟空には当たらなかった。幾らゴカンが素早くても、悟空の方が段違いに速かった。

「・・・なるほど。子供とは思えねえパワーとスピードだ。悟天が天才と言うのも頷ける。でも、オラが脅威を抱く程じゃねえ」

悟空は、ゴカンの攻撃と攻撃の間を見極め、ゴカンの腹部を殴った。途端にゴカンの動きが止まった。

「じゃあな。おめえが更に強くなったら、またやろうな」

悟空は、ゴカンの側頭部を回し蹴りした。蹴りを喰らったゴカンは、変身が解けて倒れた。直ちに戦闘不能と見なされ、悟空の勝利を告げるアナウンスが流れ始めた。ところが、アナウンスの途中で、ゴカンが起き上がった。その為に悟空の勝利が取り消され、試合続行となった。

「お、俺は、まだ負けてないぞ!」
「思ったよりタフだな。じゃあ次で終わらせてやる」

悟空は、ゴカンの目の前に移動した。そして、両手を合わせて握り締め、ゴカンの頭に打ち下ろした。ゴカンは、再度倒れた。

「今度こそ気を失っただろう。これで終わって・・・えっ!?」

ゴカンは、またしても立ち上がった。ゴカンの予想外のタフさに、流石の悟空も驚いていた。

「オラが力を抑え過ぎたとは思えねえ。ゴカンの実力を考慮した上で、一撃で倒せるよう力を加減して攻撃したのに・・・。とんでもねえタフさだな」

悟空は、ゴカンの背後に回りこみ、ゴカンの首の後ろをチョップした。ゴカンは、倒れたが、すぐに跳ね起きた。しかし、ゴカンの様子が先程までとは違っていた。試合開始時では怒っていたのに、今では不敵な笑みを浮かべていた。そして、悟空にとっては信じられない名前を口にした。

「カカロット。やっと会えたな」
「カカロット!?何故おめえが、その名前を!?」
「俺の事が分からないのか?カカロットよ」
「な、何だと!?・・・ま、まさか、ブロリーか!?」
「そうだ。貴様を倒す為に地獄から舞い戻ってきたぞ」

ジン戦の時と同様に、ゴカンの意識がブロリーに入れ替わっていた。悟空も、これには驚きを隠せなかった。

「こ、これはどうなってるんだ!?悪霊化して、ゴカンの体に乗り移ったのか?」
「乗り移っただと?違うな。俺は生まれ変わったんだ。ゴカンとしてな」
「生まれ変わっただと!?馬鹿な!どうして前世の記憶が残ってるんだ!?新しい生命体に変わる前には、魂が洗われ、記憶を無くすはずだぞ!」
「それは貴様のせいでもあるんだぞ。カカロットよ」

ブロリーは、死んでから生まれ変わるまでの経緯を説明し始めた。

死後、地獄で何度も暴れたブロリーは、その度に悟空とパイクーハンに押さえつけられた。ところが、ブロリーには実際の肉体が無く、精神力で実体化しているのに、暴れる度に強くなっていた。悟空が生き返った後も暴れ、あの世の戦士達が総動員してブロリーを取り押さえたが、戦士達の魂が幾つも消滅させられた。

ブロリーに強い危機感を抱いた大界王は、ブロリーの魂を地獄の底に閉じ込めた。地獄の底とは、あの世の戦士達でも手に負えない凶悪な魂を閉じ込める場所でもあった。そこに閉じ込められる魂は、実体化する能力を奪われた。

その後、悟空は、ドクター・ゲロとドクター・ミューの策略で地獄に閉じ込められた事があった。更に悟空は、フリーザとセルのヘルズバスターで地獄の底に落とされた。そして、悟空を現世に脱出させる為、ピッコロとデンデが協力して現世に繋がる穴を作った。ところが、その穴が完全に塞がれる前に、偶然近くに居たブロリーの魂も脱出した。その後の事をブロリーは覚えていないが、気付いたらゴカンとして生まれ変わっていた。

「道理でゴカンがオラを無性に嫌う訳だ・・・。それに、バトルフィールドでの闘いで、ブロリーが居なかった理由も分かった。あの時は何故だろうと不思議に思っていたが、まさか生まれ変わっていたなんて思いもしなかった」

バトルフィールドでの戦闘後、悟空は、仲間達にブロリーと出会わなかったか尋ねた。生前の彼の執念深さや実力を考慮すれば、強力なスカルボーグとして立ちはだかってくるはずだと思っていた。しかし、誰もブロリーとは出会わなかったと答えた。悟天やレードには尋ねなかったので、もしかしたら二人のどちらかと対戦したかもしれないと思い、それ以降、ブロリーについて考えるのを止めた。

「ゴカンは主人格で、俺は副人格だ。俺は、ゴカンが意識を失った時にしか、この体を自由に使えない。まあ、普段のゴカンは、真面目に修行してくれるから、安心して眠っていられるがな。それに、俺の体の中に流れているフリーザ一族の血が、俺に更なる力を与えてくれるのだ!」

ブロリーは、気を高めた。すると体が大きくなり、大人の姿になった。その姿は、生前の変身前のブロリーそのものだった。

「へへへ・・・。気を付けろよ。こうなってしまったら、前ほど優しくはないぞ。次はこれだ!」

ブロリーは、パワーボールを出し、それを上空に向かって投げた。パワーボールは、弾けて酸素と混ざり、人工の月となった。そして、それを見たブロリーが大猿に変身した。それからブロリーの体から煙が立ち込め、ブロリーの体が元の人間の大きさにまで縮んだ。しかし、超サイヤ人4の姿になっていた。

「俺が地獄の底に居た時、面白い人物の魂と出会った。それは千年前の伝説の超サイヤ人の魂だ。お互い体が無いので会話は出来なかったが、テレパシーで意思の疎通をした。そして、サイヤ人の歴史について学んだ。それを特別に話してやろう」
「よく喋るな。昔のおめえは、オラ以上に話すのが苦手だったくせによ・・・。まあ良い。面白そうな話題だから、もう少しだけ会話に付き合ってやる」

ようやく悟空と会えて上機嫌のブロリーは、以前では考えられない程に口数が多かった。一方、悟空も対峙している相手がブロリーになったので、早く闘いたくて気が急いていたが、興味深い話題なので我慢する事にした。

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