其の百二十九 因縁の終止符

ベジータが待ち望んだフリーザとの再戦が遂に始まった。序盤は優勢に闘っていたベジータだが、フリーザがフルパワーになると、一転してピンチに陥った。超サイヤ人5の変身が解け、フリーザに止めの一撃を刺されようとしていた。

「き、貴様に殺される前に訊かせてくれ。悟天に何をしたんだ?」
「まだその事を・・・。知らないと言ってるだろ!」
「俺は、どうせ死ぬんだ。貴様が話した内容を誰にも伝えられない。それに今の俺達の会話は、他の人には聞こえてないんだ。ならば話しても問題あるまい」

勝利を確信しているフリーザは、止めを刺すのを中断して考え始めた。ベジータに秘密が知られても、その後すぐに殺して口封じ出来る。そして、ベジータを殺した後は、ドラゴンボールによる復活を阻止する為に、別の銀河に死体を運んで遺棄する手はずとなっている。ここまで段取りが出来ていれば、ベジータに話しても、よもや悟天にまで知られるとは考えられなかった。

「・・・良いだろう。そこまで気になるなら教えてやる」

これまで頑なに秘密を隠していたフリーザは、とうとう真相を語り始めた。それも得意気にである。悟天からの報復を恐れて話すのを拒否してきたが、本当は自分の策略が上手くいった事を誰かに自慢したかった。そして、息子との不仲が決定的になった悟空を嘲笑したかった。ベジータは、黙ってフリーザの話を聞いていたが、内心では腸が煮え繰り返っていた。

「以上が真相だ。準決勝は孫悟空と孫悟天の試合になるだろう。それは実の親子による殺し合いとなる。親子で殺し合うなんて、滅多に観られない光景だ。俺は、それを高みの見物してやる。どちらが勝っても構わないが、どうせ孫悟天が勝つだろう。しかし、試合後の孫悟天は、かなり傷付いているはずだ。その時に真相を伝え、それから殺してやる。その時の孫悟天の顔が見物だぞ。それを想像するだけでも、つい笑ってしまう。ふはははは・・・!ざまあみろ!」

フリーザの最低な発言に、ベジータの堪忍袋の緒が切れた。怒りに身を震わせ、超サイヤ人5に変身した。

「何だと!?貴様に変身する力は残ってなかったんじゃないのか!?」
「馬鹿め!貴様から話を引き出す為に、わざと弱った振りをしていたんだ。幾ら年を取って体力が衰えたとはいえ、あんなにすぐに変身が解けるか!」

ベジータは、フリーザに話をさせる為に二つの方法を考えた。一つは、かつてドドリアから惑星ベジータ消滅の真相を聞き出した時の様に、力で相手を脅して話をさせる方法。もう一つは、ピッコロがセルから正体を聞き出した時の様に、弱った振りをして相手を油断させて話をさせる方法。ベジータとしては無論、前者を選びたかった。しかし、フルパワーになったフリーザが予想外に強かったので、止むを得ず後者を選んで話を聞き出した。

騙された事を知ったフリーザは、試合前のレードの言葉を思い出していた。人を見縊るなと注意されていたのに、勝利を確信した瞬間にベジータを見縊り、秘密を暴露してしまった。フリーザにとっては悔やんでも悔やみきれない失態だった。

「残酷な事をしやがって!この俺ですら、これだけ怒りを覚えたんだ。カカロットや悟飯、何より悟天が真相を知った時の怒りは相当なものだろう」
「くっ、秘密を知られたからには、生かしておく訳にはいかない」
「それは、こっちの台詞だ!」

フリーザに対する怒りを一層強くしたベジータは、猛然と飛び掛かった。フリーザが非情なのは前々から知っていたが、赤の他人ならともかく、まさか孫娘にまで手を出すとは思わなかった。かつてのサイヤ人は、気に入らなければ親でも殺したが、それは長年に渡って親の横暴に耐えた末の犯行であり、フリーザの様に自分の都合で身内を殺した訳ではなかった。しかも、それを悟空のせいにして、悟天を狂気に走らせるなど言語道断である。

フリーザは、必死で応戦した。それは秘密を悟天に知られるのを阻止する為だけではなかった。自分を騙した事が許せなかった。それも下等と見下してきたサイヤ人がである。これを無かった事にする為には、ベジータを殺すしかなかった。

双方が相手を殺す事だけを考えて闘い、しばらく互角の展開が続いた。お互い一歩も譲らず、攻撃重視で闘っていた為、どちらも体が傷だらけだった。こうなると通常なら老体のベジータが不利になっていくのだが、実際には徐々にベジータの方が押してきた。フリーザは、フルパワーになった反動で、エネルギーの減少が激しかった。

このまま闘うのは不利だと考えたフリーザは、奥の手である気円斬を放った。もしベジータが気円斬を避ければ、後方で観戦している観客が犠牲となるので、ベジータに回避という選択肢が無かった。止む無くベジータは、危険を承知の上で両手を前に出し、気円斬を真剣白刃取りで受け止める事にした。そして、いざ気円斬が迫ると、手の平を多少切ったが、見事に気円斬を受け止めた。

ならばとフリーザは、気円斬をもう一つ作り、それもベジータに向けて放った。ベジータは、受け止めていた気円斬を投げ返した。二つの気円斬が互いの中間地点で激突し、どちらも消滅した。

奥の手が通じなかったフリーザだが、ある事を思い付いた。観客を危険に晒せば、ベジータが身を呈して守るだろう。そこでフリーザは、邪な笑みを浮かべつつ、右手の人差し指をベジータに向け、無数のエネルギー波を放った。それに対してベジータは、後方に居る観客を庇ってエネルギー波を避けようとせず、手で弾き飛ばした。弾き飛ばすのに失敗したら体に喰らってしまうが、何時まで経っても失敗しそうになかった。

痺れを切らしたフリーザは、一箇所ではなく、四方に居る観客に向けてエネルギー波を放った。ベジータは、忙しく動きながら全てのエネルギー波を弾き飛ばした。

「くっくっくっ・・・。こいつまで弾き飛ばせるかな?」

フリーザは、左右の手に一つずつ気円斬を作った。そして、左手の気円斬をフリーザの左側に居る観客席に、右手の気円斬をフリーザの右側に居る観客席に向け、それぞれ放った。ベジータは、向かって右側の気円斬を受け止めるのが精一杯で、もう一方の気円斬までは為す術がなかった。しかし、それをトランクスが受け止めた。

フリーザが視線を別の方に向けると、悟空達が総出で観客席に居る観客を避難させていた。観客を狙うフリーザに嫌気が差した悟空達は、控え室から出、手分けして観客を避難させていた。ベジータとトランクスは、受け止めていた気円斬を上空に投げ飛ばした。

悟空達の誘導により、生き残った観客は全員無事に避難した。安心したベジータは、フリーザの目の前に移動し、悟空達は、控え室に引き上げていった。しかし、トランクスだけは観客席に残った。フリーザが他に何か良からぬ事をしないか見張りつつ、ベジータの闘いを最後まで近くで観る為に一人残った。

「くっ、あいつ等め。余計な事をしやがって・・・」
「これで貴様は、観客を狙うという卑劣な手段を使えなくなった。一方、俺は、周りを気にしないで思いっきり闘えるようになった。このクズ野郎!とことん最低な奴め!今から引導を渡してやる!」

怒り心頭のベジータは、フリーザに飛び掛かり、次々と攻撃を浴びせた。フリーザは、疲労とダメージで、気が更に減っていった。筋肉が萎み、ピーク時の半分以下にまでパワーが落ちていた。遂には勝負を諦め、戦意まで失っていた。一方、本来ならベジータも老いのせいで長く闘えないはずだが、今は怒りで疲労を感じなかった。

勝利を確信したベジータは、フリーザの鳩尾を殴って嘔吐させた。そして、フリーザの首を握り締め、体ごと持ち上げた。

「フリーザ。貴様を殺す人間を選ばせてやる。今すぐ俺に殺されたいか?それとも、カカロットや悟飯の元に連れて行って真相を話し、あいつ等に殺されたいか?」
「さっさと殺せ・・・。今更ながら、俺は生き返るべきじゃなかった」
「全くだ。自分がしてきた事を、しばらく地獄で反省しやがれ。いつか俺が死んでも、あの世で顔を見せるな。じゃあな」

ベジータは、フリーザを空中に放り投げ、気功波を放った。フリーザは、気功波に飲み込まれ、肉片一つ残さず消滅した。その直後にベジータの勝利を告げるアナウンスが流れた。ベジータの完勝だった。

ようやく打倒フリーザを果たしたベジータは、感慨深げに空を見上げていた。これまでの人生で数多く闘い、勝ちもしたし負けもしたが、フリーザに負けた時程悔しかった事はなく、フリーザに勝った時程喜びを得られた事もなかった。それだけフリーザは、ベジータにとって良くも悪くも特別な存在だった。

客席に居たトランクスが喜んで飛んで来た。ベジータは、トランクスの顔を見て安心した途端、どっと疲れが出た。変身を解き、トランクスの肩を借りながら闘技場を後にした。

「トランクス。俺は、次の試合に出ないし、もう闘わない。引退する」
「えっ!?・・・わ、分かりました。長い間、お疲れ様でした」

フリーザに勝った事で、ベジータの目的が果たされた。その時点で闘いから手を引こうとベジータは決めていた。悟空達の誰かが優勝しないと、後でとんでもない事を欲求されてしまう。しかし、悟空か悟飯なら必ず優勝してくれると信じていた。なので安心して準々決勝の試合を棄権するつもりだった。

ベジータの闘いの歴史に終止符が打たれた。フリーザとの出会いから闘いの日々が始まり、フリーザを倒して闘いの日々が終わった。ようやくフリーザの呪縛から開放されたベジータは、表情が実に晴れやかだった。

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