フリーザが闘技場に姿を見せるや否や、対戦相手であるベジータから「遅い!」という怒声を浴びせられた。二人の出場を促すアナウンスが流れてから、大分時間が経っていた。しかし、フリーザは、全く悪びれる様子も無く闘技場の中央まで歩き、ベジータと向かい合った。
「失礼。古い友人・・・ではないな。古い知り合いが訪ねてきたものだから、つい話し込んでしまったら、遅くなってしまったよ」
「余りにも遅いから、俺が怖くて棄権したかと思った。まあ、そうなった場合、貴様の元に殴り込むつもりだったがな」
「やれやれ・・・。ここまで執念深いと、最早病気だね」
ベジータは、もしフリーザが自分を恐れて試合放棄するなら、地の果てまで追い掛けてでも決着を付けるつもりだった。
遅れていたフリーザが闘技場に姿を現したので、試合開始を告げるアナウンスが流れた。しかし、双方共すぐに闘おうとはせず、会話を続けていた。
「惑星ベジータを滅ぼしたのなんて、もう何十年も前の話じゃないか。それに僕は、お前を特別酷く扱った記憶が無い。いや、むしろ他の部下に比べて、かなり厚遇してきたつもりだ。お前には優先して働く場所を提供してきたからね。お前だって喜んで闘っていたじゃないか。逆に僕に感謝すべきじゃないのかい?」
フリーザは、ベジータが未だに自分を憎む理由が分からなかった。人に対する思い遣りの心を微塵も持たず、唯我独尊を貫き通したからこそ、他人の気持ちが理解出来なかった。
「お目出たい奴だ。俺が喜んで貴様に従っていたと思っているのか?誇り高いサイヤ人が喜んで他人に従うはずあるまい。俺への待遇が特別に酷いものではなかったのかも知れないが、それでも俺は、ずっと屈辱を感じて我慢してきたんだ。他の種族の部下達は、決して貴様に歯向かおうとしなかったが、やはり貴様の横暴に我慢していたはずだ」
圧倒的な力を持つフリーザには誰も逆らえなかった。彼の部下達は、どんな無茶な命令にも黙って従うしかなかった。そうしなければ殺されるのが分かっていたからである。
「気付いていないだろうが、貴様に心から忠誠を誓っていた部下は、せいぜいギニュー位だ。長年側近として仕えてきたザーボンでさえ、最期は貴様を裏切ろうとした。あれだけ大勢の部下が居たのに、忠実だったのが一人だけとはな。哀れな裸の王だ」
最初は冷静だったフリーザだが、ベジータの哀れみを込めた侮蔑に、沸々と怒りが込み上げてきた。
「昔の誼で楽に死なせてやろうと思ったけど、気が変わった。トランクスが観ていて悔しがるように、じわじわと嬲り殺しにしてくれる!覚悟しろ!」
「トランクスが観ていて悔しがるようにか・・・。本当はトランクスを嬲り殺しにしたいんだろ?しかし、第一試合を観て気付いたはずだ。自分ではトランクスに勝てないとな」
「相も変わらず勘に障る野郎だ!」
フリーザは、怒りの形相でベジータに襲い掛かった。対するベジータは、超サイヤ人5に変身し、フリーザのパンチを避けつつ、フリーザの腹部を殴った。フリーザの表情が苦悶に歪んだ。続けてフリーザの即頭部を蹴飛ばした。不利を感じたフリーザは、一旦ベジータから離れた。
「くっ。強くなってるのは知っていたが、ここまで強くなっていたとは・・・」
「俺は、貴様とバトルフィールド内で闘って敗れた後、貴様と再戦して勝つ事を目指して必死に修行してきた。今度こそ俺の手で貴様を倒し、悪夢を払拭してやる」
老化という大きなハンデを背負いながらもベジータは、修行に精を出して格段に強くなれたのは、打倒フリーザという目標が出来たからだった。フリーザが居なかったら、トランクスに抜かされた時点で自身の修行を止め、後進の育成に専念していたかもしれない。修行を続けていたとしても、自分の肉体の衰えに失望して、これまでのように真剣に修行に打ち込めなかっただろう。それだけフリーザの存在は、ベジータにとって大きかった。
天津飯が悟空と闘う事を予感していたように、ベジータもフリーザとの闘いを予感していた。だから組み合わせが発表された時、自分でも驚く程に平然としていた。悟空と闘える天津飯を羨ましいとも思わなかった。闘うからには勝つ。勝算が無い闘いはしたくない。今の老いた自分では、まだ若さを保っている悟空と闘っても勝てないのは分かっていた。ならば勝ち目が無い悟空と闘うよりも、勝てる見込みのあるフリーザとの一戦こそがベジータの望みだった。
様々な思いを抱きつつもベジータは、フリーザに次々と攻撃を浴びせた。ところが、有利な展開で闘いながらも、一気に勝負を決めようとはしなかった。フリーザにある程度のダメージを与えた後、攻撃を止めた。
「フリーザ。貴様に訊きたい事がある。悟天についてだ」
「ご、悟天だと!?い、一体、何を訊きたいと言うんだ?」
悟天の名前を聞いた途端、フリーザは、明らかに動揺した。ベジータは、ある確信を抱いて質問した。
「悟天は何故カカロットを無性に憎むようになった?」
「し、知らない!何も知らない!」
「知らないはずがあるか!悟天がおかしくなったのは、貴様とセルが惑星レードに行った後だ。それまで悟天は、カカロットとの間に蟠りはあったが、憎しみまでは抱いてなかった。貴様等が悟天に何かしたと考える方が普通だ」
ベジータは、悟天が豹変したのは、十中八九フリーザとセルの仕業だと思っていた。ベジータの鋭い指摘に対してフリーザは、慌てふためいた。
「何故そんなに狼狽えているんだ?貴様らしくもない。どうやら、よほど大きな秘密を隠しているようだな」
フリーザは、何も言い返せなかった。アイスの死が自分の陰謀だったという秘密が明らかにされれば、いずれ悟天の耳にも届く。そうなれば、この試合で自分が生き残っても、後に怒った悟天に殺される。フリーザが恐れていたのは、真相を知った悟天からの報復だった。自分が死ぬまで秘密を隠したかったが、ベジータは、核心に迫りつつあった。もし秘密を知ったら、絶対に黙っているはずなかった。フリーザにとってベジータは、究めて邪魔な存在だった。
切羽詰ったフリーザは、フルパワーで闘う事にした。寿命が縮むから、フルパワーになるのは極力避けたかった。しかし、ベジータを葬る為には、それしか方法が無かった。フリーザの気は急激に高まり、筋肉が膨張した。
「ベジータ。お前は、最早ムカつく所ではない。俺の生命を脅かす危険な存在だ。今すぐ死ね!」
「これがフリーザのフルパワーか・・・。流石に、そう簡単には勝てそうもないな」
フリーザが突撃してきた。対するベジータは、側面に飛んで回避しようとしたが、フリーザは、突撃の途中で進路を変え、移動中のベジータに体当たりした。ベジータは、客席にまで吹っ飛ばされ、数人の観客が巻き添えとなって死に、客席の一部が崩壊した。好機と見たフリーザが距離を詰め、客席でベジータとの大乱闘を繰り広げた。近くに居た観客は避難した。ベジータは、観客が無事に避難出来るか気になって闘いに集中出来ず、何度も攻撃を喰らった。
形振り構わぬフリーザに対してベジータは、苦戦を強いられた。それでも闘技場に戦場を戻してからは持ち直してきたが、またすぐに劣勢に追い込まれた。仕舞いには攻撃を喰らっていなくても、気が減ってきた。そして、超サイヤ人5の変身が解けてしまった。
「急に勢いが落ちたな。どうやらスタミナ切れらしい。年は取りたくないものだな」
「く、糞ったれが!もう少しだったのに・・・」
「やはり貴様は、俺に勝てない運命のようだ。もう二度と顔も見たくない。消えろ」
フリーザは、ベジータに人差し指を向けた。ベジータは、絶体絶命のピンチを迎えた。


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