其の百二十七 珍客襲来

レードとフリーザは、悟空と天津飯の闘いを、自分達の控え室でモニター越しに観戦していた。そして、試合が終わると、フリーザが辟易した表情で話し始めた。

「やれやれ、やっと終わったか。あんなのに苦戦しているようでは、孫悟空も意外に大した事ないな。ところで、レード。何故あの二人を闘わせたんだ?」
「天津飯は、戦闘力が高くない。しかし、多彩な技を持ち、何をしてくるか全く読めない。こちら側の戦士が闘えば、戦闘力の低さに油断して、予想外の技に不覚を取られるかもしれない。そこで孫悟空と闘わせる事にした。そうすれば、手の内を全て曝け出すからだ」

ロボベジット戦で初めて天津飯を観て以降、レードは、彼の技を警戒するようになっていた。そして、天津飯についての情報を集め、彼が悟空に対して異常にライバル心を抱いている事を知った。ならば悟空と闘わせると技を惜しげもなく披露するだろうと考え、二人を闘わせる事にした。

「手の内さえ知れば、いざ天津飯を殺す時に対策を立てられる。まあ、今の闘いで、奴は力を使い果たしたみたいだから、もうこれまでの様には闘えないだろうがな」
「ふん。技が恐ろしいなら、技を使われる前に速攻で倒せば良い。恐れるには値しない。僕なら一秒で片を付けていた」

フリーザにとっては力こそが全てであり、力の弱い者がどんな技を持っていても、脅威ではないと思っていた。レードとフリーザの天津飯に対する見方は、百八十度違っていた。

「父上。勇ましいのは結構だが、余り人を見縊り過ぎない方が良い。これから父上と闘うベジータだって、決して侮れる相手ではない。奴は・・・」
「ベジータは、修行して、以前より強くなっていると言いたいんだろ?それ位は知ってるさ。でも、所詮は老人だ。僕が負ける相手ではない」

ベジータが強くなっていると知りつつも、フリーザは、ベジータを自分より格下だと思い込んでいた。

この数分後、第五試合の開始を告げるアナウンスが流れた。フリーザは、控え室から出て、闘技場に向かった。そして、廊下を歩いている途中、騒ぎ声が聞こえてきた。

「おい!ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!聞いてるのか・・・うぎゃ!」

フリーザが歩く方角とは別の場所から誰かの断末魔の叫びが聞こえた。様子が気になったフリーザは、進路を変え、声がした方に向かうと、レードの兵士が何者かによって殺されている現場に遭遇した。そして、殺人を犯した犯人には見覚えがあった。

「おや?誰かと思えば、フロストじゃないか」

レードの兵士を殺した犯人は、何と第六宇宙のフロストだった。レードの兵士は、一人一人が厳しい訓練を積んでいて相当強かったが、宇宙同士の対抗戦で第六宇宙側の代表にもなった経験があるフロストが相手では、流石に分が悪かった。

フロストは、ここでフリーザに遭遇するとは想定外だったが、フリーザを見るなり、憎悪を込めて睨んだ。

「こんな所まで、わざわざ何しに来た?僕への復讐かい?だったら、試合前のウォーミングアップとして相手になってやろうか?命の保証はしないけどね」

かつて行われた力の大会で、フロストは、フリーザに騙し討ちされた事があった。そして、その事を未だに根に持っている様相だった。

「ふん。そんな事をしなくても、どうせ貴様は、試合で殺されるんだ。私は、貴様に別れの挨拶をしに来たんだ」
「ふっ。残念な知らせだけど、次の試合は僕の楽勝さ。そして、その次の試合は棄権する。君の期待通りにはならない。それはそうと君は、別れの挨拶を言う為に、わざわざ第七宇宙まで来ただと?」

フリーザは、フロストが噓を言っていると一瞬で見抜いた。そして、フロストが第七宇宙まで来た本当の目的を暴こうと考えた。

「ところで、しばらく見ない間に、随分と男前になったね。その傷は誰にやられたのかな?」

フロストの体には複数の傷痕があった。そして、フリーザに傷の事を指摘された瞬間、フロストの様子が一変した。悔しげな表情になり、下を向いて押し黙ってしまった。

「僕の声が聞こえなかったのかい?それとも、脳にまで傷を負い、僕の質問を理解出来なかったのかな?だったら、今の君でも分かるように会話レベルを下げないといけないね」
「くっ、馬鹿にしやがって!・・・息子にやられた」
「息子に?はっはっは・・・。良い息子じゃないか。親を鍛えてあげるなんて」
「人の気も知らないで勝手な事を・・・。これが訓練で負った傷痕に見えるか!?」

フロストの体には、鞭で叩かれた痕や、何か尖った物で刺された痕や、烙印を押された痕があり、訓練というより拷問を受けて負った傷痕である事は明らかだった。

フロストは、自分の体に刻まれた傷痕を恥だと思っていた。そして、傷痕を見て笑った者を即座に殺す程にコンプレックスを感じていた。そんな彼にとって恥辱である傷痕を、よりにもよって怨敵であるフリーザに馬鹿にされたので、無性に腹が立った。そして、怒りが抑えられなくなって、何と全身が金色のゴールデンフロストに変身した。

「やはり貴様だけは許さん!殺してやる!」

激怒したフロストは、フリーザに飛び掛かった。しかし、フリーザに指一本で弾き飛ばされ、壁に激突した。その衝撃で変身が解けてしまった。

「ふっ。ゴールデンなんて、今や時代遅れだよ。それにしても、この程度じゃ、ウォーミングアップにすらならない」

フロストを一蹴したフリーザは、フロストが自分への復讐に来たのではないと確信した。もし復讐に来たなら、共闘する仲間を連れてくるか、少なくとも力の大会の時のフリーザより強くなっていなければ、返り討ちにされるのが目に見えている。しかし、彼の周りに共に闘ってくれる仲間が見当たらず、以前より強くなってはいるが、当時のフリーザより強いとは思えなかった。

「復讐に来たのではないとすると・・・偵察か。恐らく長期間に渡り、僕の周りを嗅ぎ回っていたのだろう。だからこそ、この宇宙一武道会が開催される事を知り、この会場に忍び込んだ。そして、もっと情報を掴もうとして関係者以外立ち入り禁止の場所に侵入した所を兵士に見つかり、逆上して殺した。こんな所だろ?」

フロストは、思わず絶句した。フリーザの推理は、少しも間違っていなかったからである。

「そして、君に偵察を命じたのも君の息子だろう。息子に酷い目に遭わされたばかりか、別の宇宙に偵察に行かされるなんてね。息子に顎で使われて悔しくないのかい?」

フロストは、言い返したかったが、ぐうの音も出なかった。

「君の息子は、この第七宇宙への侵略でも考えているのかい?まあ、どうでも良いけど、それより自分の身を案じた方が良い。この武道会の主催者は、僕の息子のレードだ。そして、君が起こした騒動をレードが知れば、きっと君を許さないだろう。レードは、僕と違って優しくないからね。まあ、何処かの息子と違って、僕に拷問なんてしないけど。レードに見つかる前に、第六宇宙に帰る事をお勧めする。それじゃあ、僕は行くとするよ」

フリーザは、言いたい事だけ言うと、フロストに軽く手を振り、その場を後にした。フロストを生かしておくと危険かもしれないが、彼の事を嫌いじゃなかったので、ここは黙って見逃す事にした。そして、遠ざかるフリーザの背中を観ながら、フロストが呟いた。

「フリーザ。貴様は知らんのだ。 銀河の覇王と呼ばれる息子フローズの恐ろしさを。昔に比べて相当強くなったのが自慢らしいが、フローズには遠く及ばない。貴様だけでなく、第七宇宙の他の連中もな。さて、レードとやらに捕まる前に帰るとするか・・・」

後に残されたフロストも、レードに見つかると面倒だと思い、辺りを見渡してから退散した。

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