其の九十五 時間稼ぎ

大魔王リマに圧勝した最強の元素戦士ボラリス。そのボラリスに対抗する為、悟空達は急いで話し合った。

「悟空さん!こうなったら全員で闘いましょう!」
「いや。おめえ達の攻撃は通用しねえだろう。だったら全員で闘っても意味がねえ。オラ一人で闘う。それより、トランクス。おめえは急いで地球に戻り、仙豆を持ってきてくれ。それまで持ち堪えるから」
「わ、分かりました。仙豆を持って、すぐに戻ります」

リマは、為す術も無く敗れたが、決して弱くなかった。むしろ以前に比べ、見違える程に強くなっていた。もし悟空がリマと闘ったら、悟空の苦戦は避けられなかったであろう。それだけ強くなったリマですら、ボラリスには手も足も出なかった。そんな強過ぎるボラリスに、万全ではない状態の悟空が挑んでも、確実に勝てるとは思えなかった。しかし、仲間の犠牲を避ける為、自らが進んで危険を冒す事にした。

今回は回復役を担う餃子が居たので、悟空達は仙豆を持って来ていなかった。しかし、その餃子が倒されたので、悟空達は仙豆が必要になった。トランクスは、悟空の指示に従い、地球に戻って仙豆を持ってくる為、この星に来る時に使用した宇宙船が置いてある場所に向かって飛び立った。

「ふっ。誰一人として逃がさんぞ」

ボラリスは、トランクスが飛び去ったのを見て、彼が逃げたと思い、後を追おうと飛び上がった。ところが、悟空はボラリスに向けて衝撃波を放った。体の軽いボラリスは、簡単に吹っ飛ばされた。すぐに舞い戻ってきたが、その時には、既にトランクスの姿が遠くの空に消えて見えなくなっていた。ボラリスは、間に合わなかったと悟り、歯噛みしながら妨害した悟空の目の前に降り立った。

悟空は、ボラリスとの戦闘を開始する前に、側に居たベジータ・ピッコロ・ウーブに更に後方に下がるよう指示した。ベジータはリマを、ピッコロはパンを、ウーブは餃子を抱えると、ボラリスから眼を離さずに後退した。ボラリスの方でも、三人が逃げ出さないか見張っていた。そして、ベジータ達の後退が終わってから、ボラリスは悟空に話し掛けた。

「やってくれたな。お陰で一人取り逃したが、まあ良い。まずは邪魔をしたお前から片付けてやろう」
「そう上手くいくかな?おめえは確かに強いが、体が軽いから、簡単に吹っ飛ばせる」
「それがどうした?俺を吹っ飛ばしてもダメージにはならない。ただの時間稼ぎだ」
「その時間が大切なんだ。時間さえあれば、おめえを倒す方法を思いつくからな」

悟空の強気な発言に、ボラリスは大笑いした。

「俺を倒す方法だと!?馬鹿め!俺の体は宇宙最高の硬度を持つ金属だ。倒すどころか、体に傷を付ける事自体が不可能だ」
「そうかな?やってみなくちゃ分からねえぞ。はあっ!」

悟空は、一気に超サイヤ人5に変身し、ボラリスに飛び掛かった。そして、少しでも防御力が低そうなボラリスの首に回し蹴りをした。しかし、蹴った直後に足の脛を抱えて痛がったのに対し、ボラリスは平然としていた。

「俺の体は何処も硬い。時間を掛けて思いついた作戦が、この程度とは笑わせる」

悟空は、足の痛みに耐え、何とか立ち上がった。対するボラリスは、悟空が立ち上がるまで待ち、悟空が立ち上がったところで攻撃を開始した。悟空は、ボラリスのパンチを一度は避けたが、二度目は側頭部に当たってしまった。そして、パンチを喰らってバランスを崩したが、何とか倒れずに持ち堪えた。

「あ、危ねえ。一瞬、意識が飛んだぞ。何て凄まじいパンチだ」

悟空の側頭部からは血が流れていた。悟空は、痛みに堪えて、再び飛び掛かった。まずボラリスの右手首を掴むと、ボラリスを一本背負いで遠くの空に向かって投げ飛ばした。続けて遠ざかるボラリスに向けて十倍かめはめ波を放った。遠目ながら十倍かめはめ波がボラリスに見事に命中した様に見えた。ところが、すぐにボラリスが無傷の状態で戻ってきた。

「一つ聞いても良いか?俺の十倍かめはめ波は、当たったのか?」
「ああ。まともにな。俺の体には何の影響も無かったがな」

ボラリスには悟空の十倍かめはめ波さえ通用しなかった。悟空は、もしかしたら通用しないかもしれないと予想していたが、それでもショックを受けていた。

「技は他に無いのか?もしあるんだったら使ってみろよ。避けないで受けてやるぞ」

ボラリスは、完全に悟空を見下していた。それに対して悟空は、決して逆上せず、落ち着いて呼吸を整え、次に使う技の準備を開始した。

「だったら、こいつはどうだ!龍拳!」

悟空は、ボラリスの胸部に向けて龍拳を放った。一方、ボラリスは、宣言通りに避けず、まともに喰らった。しかし、ボラリスの腹部に穴が開くどころか、傷一つ入らなかった。逆に悟空の拳が出血していた。十倍かめはめ波に続き、龍拳もボラリスには通じなかった。頼りとする必殺技が立て続けに通用しなかった悟空は、驚きを隠せなかった。

「サイヤ人といえども、所詮この程度か・・・。とんだ見掛け倒しだ」

失望したボラリスは、悟空の腹部を蹴飛ばした。悟空は、勢いよく吹っ飛ばされて倒れたが、腹部を押さえながら立ち上がった。しかし、超サイヤ人5の変身が解けていた。先の元素戦士の軍団との戦闘による疲労やダメージ、大量のエネルギーを使用する必殺技の連続使用に加え、ボラリスの尋常ではない攻撃や頑丈さに翻弄された悟空は、肉体的にも精神的にも追い詰められていた。

絶体絶命のピンチに陥った悟空は、ボラリスを巻き込んで自爆する事まで考えた。しかし、それでもボラリスに通用するか分からなかった。なので一か八かの賭けをするなら、取って置きの技を使う事にした。元気玉である。既に滅ぼされている星で充分な元気が集まるか分からないし、元気玉が完成するまでボラリスが大人しく待ってくれるかも分からない。それでも元気玉を作る事にした。

悟空は、両手を頭上高く掲げ、元気を集め始めた。同様にベジータ達も手を挙げ、悟空の元気玉作りに協力しようとしたが、テレパシーで止めるよう悟空が指示した。彼等の元気を分けて欲しいのは山々だが、もし元気玉すら通用せずに悟空が敗れた場合、元気を分け与えて疲労困憊したベジータ達がボラリスに瞬く間に蹂躙されるのが目に見えているからである。

ところが、しばらく様子を見ていたボラリスだったが、待つのに飽き、頭上に浮かんでいる作成中の元気玉を目指して飛び上がった。悟空は、慌てて未完成の元気玉をボラリスに向かって放った。元気玉がボラリスに当たって上空で大爆発したが、ボラリスは無傷だった。

「俺を倒す為とはいえ、どれだけ時間を掛けるつもりだったんだ?流石に待てんぞ」

ボラリスは、悠々と悟空の目の前に降り立った。万策尽きた悟空は、ボラリスに向かって衝撃波を放った。ボラリスを倒すのを断念し、トランクスが戻ってくるまで時間稼ぎに専念するつもりだった。しかし、ボラリスに衝撃波を避けられてしまった。悟空は何度も衝撃波を放ったが、ボラリスには全て避けられてしまった。ボラリスに同じ手は二度と通用しなかった。

「最早これまでだな。お前も期待外れだった」
「・・・そいつは悪かったな」

ボラリスの強烈な一撃が悟空の顔面に当たった。殴り飛ばされた悟空は、背後にあった岩山に当たって倒れてしまった。もう悟空には立ち上がる力すら残っておらず、虫の息だった。

「一番強い奴だと思っていたが、やはりこんなものか・・・。俺を満足させてくれる奴は居ないのか?」

悟空が戦闘不能になったのを見て、ベジータ達は自分達の出番が巡ってきた事を悟った。

「こうなったら俺達も闘うしかない。殺されると分かっていてもな」
「天津飯さんが居るから大丈夫だと楽観視していたのが悪かった。せめてレード達に協力を要請していれば・・・。いや、レード達の力を借りていても結果は同じだろう」
「希望を捨てるな!二人とも!間も無くトランクスが仙豆を持って戻ってくる。それまで持ち堪えるんだ!絶対に悟空を死なせてはならない!」

ベジータ、ウーブ、そしてピッコロの三人は、各自フルパワーとなり、絶望的な状況の中、ボラリスに向かっていった。

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