其の百二十二 死の武道会

超サイヤ人5になったトランクスは、身構えてから対戦相手であるセルに向けて飛び掛かった。まず右足で回し蹴りしたが、セルに左腕でガードされた。次に左手でパンチしたが、セルに右手で防がれた。今度はセルが左手でパンチしたが、身を屈めて避けた。それから両者による激しい攻防戦が繰り広げられた。そして、お互い数発ずつ攻撃を受けた所で闘いを中断した。

「前回の時、俺にこれだけの力があれば、ぶっちぎりで優勝出来たんだけど、今回では一回戦突破すら難しいか・・・」
「人造人間としか実戦経験が無かった未来のトランクスとは違い、多種多様な闘いを経験している現代のトランクスは、かなり闘い慣れている。まるでセルゲームの時の孫悟空の様だ。強さは全く違うがな。レードの言う通り、フリーザでは荷が重過ぎたかもしれない」

トランクスとセルは、互いに気を高め、再び激突した。セルがトランクスに突撃を敢行したが、対するトランクスは、両手で受け止め、セルを上空に蹴り上げた。そして、セルを追従したが、セルが素早く体勢を立て直し、トランクスを衝撃波で床に衝突させた。思わぬ攻撃を受けてダメージを負ったトランクスだったが、すぐに起き上がり、再度飛び上がった。

今回の闘技場の床もカッチン鋼をタイルにして敷き詰めたものだが、床に激突させられたトランクスのダメージが軽微だったのに対し、床のタイルには、早くも罅が入っていた。前回の武道会での数々の激闘の影響により、タイルが劣化していたせいもあるが、罅が入った最大の要因は、セルが強過ぎるのとトランクスが頑丈過ぎるせいだった。

トランクスとセルの闘いは、空中戦に変わり、上空で二人が激しく交戦した。互角の展開のまま推移し、双方共に体の数箇所に傷を負った。

「まさかトランクスが本気になった私と対等に渡り合えるとは思わなかったぞ」
「本気だと?まだ真のパワーを秘めていると思っていたが、俺の買い被りか・・・」
「何だと?聞き捨てならんな。お前は、本気じゃなかったとでも言うつもりか?」
「ああ。てっきり貴様もそうだと思っていたんだけどな・・・。まあ良い。俺の真のパワーを見せてやるよ」

トランクスは、更に気を高めた。セルが驚いたのは語るまでもなかった。

「ば、馬鹿な!?まだこれだけの力があったとは・・・」
「覚悟は良いか?行くぞ!セル!」

トランクスは、猛スピードでセルに迫り、腹部を殴った。痛みに耐えたセルが右手で放ったパンチを避けつつ、セルの顎をアッパーで殴った。セルは、意識を失い、床に墜落した。トランクスは、セルを追って床に降り立った。墜落した影響で意識を回復したセルは、ふらつきながらも立ち上がったが、ダメージが大きかった。

気を取り直したセルは、太陽拳でトランクスの視界を封じ、その隙にトランクスを上空に殴り飛ばした。更にフルパワーでかめはめ波を放った。ところが、トランクスは、両腕を交差させてかめはめ波を防いだ。

「まずい。真のパワーに、これだけの差があったとは・・・。このままでは、やられる。もう奥の手を使うしかない!トランクスの体をバラバラにしてしまうが、それは仕方ない」

追い詰められたセルは、両手を上に掲げた。するとセルの頭上に巨大なエネルギーの玉が発生した。そして、エネルギーの玉は、徐々に大きくなっていった。

「あれは元気玉!?セルが元気玉を作れるなんて・・・。完成したら厄介だぞ。早く止めないと」

トランクスは、セルの元に行こうとしたが、セルの背後からセルに似た何か小さな者が複数現れ、それ等がトランクスに向かって飛んできた。その正体は、セルジュニアだった。セルは、元気玉を作りながら、セルジュニアを次々と生み出していた。トランクスは、セルジュニアを倒すのに手一杯となり、セルの元気玉作りを妨害する所ではなくなった。

この闘いを控え室でモニター越しに見ていた悟空達は、思わぬ展開に驚いていた。

「これは一対一の闘いのはずなのに、あんなの反則だわ!レードに抗議して、セルを反則負けにしてやるわ!」
「レードに黙認されるだろうから、こちらが幾ら抗議しても無駄だ。それにしても、まさかセルが元気玉を作れるなんて思わなかったぞ」
「元気玉じゃねえ。セルが集めてるのは邪悪な気だからな。言わば邪気玉だ」

セルの元気玉ならぬ邪気玉は、益々大きくなっていった。このままではまずいと思ったトランクスは、上空高く飛び上がった。セルジュニア達は、トランクスを追ってきたが、トランクスは、下に向けて大きな気功波を放った。気功波がセルジュニア達を飲み込み、作成途中だった邪気玉に命中した。強い衝撃を受けた邪気玉は、制御不能となり、大爆発を起こした。

闘技場が煙に包まれ、やがて煙が晴れると、闘技場に大きな穴が開いていた。客席を守るバリヤーも爆発の衝撃に耐え切れずに壊れてしまった。そして、闘技場に開いた穴の側では、両腕を失ったセルが立っていた。セルは、両腕を再生させたが、その間に、トランクスがセルの目の前の位置に降り立った。

「最早ここまでだな。共に闘った事もある誼で、命だけは助けてやる。大人しく降参しろ」
「降参だと?お前如きに降参なんてするか!先程の攻撃で、かなりエネルギーを消耗したはずだ。今なら勝てる!」

セルは、高く飛び上がり、かめはめ波を放つ体勢になった。カッチン鋼のタイルが剥がれ、剥き出しとなった地面に攻撃し、惑星レードごとトランクスを殺すつもりだった。

「まだ勝負を諦めないのは見事だ。俺も最後まで付き合おう」

トランクスは、上に向けてかめはめ波を放つ体勢になった。そして、双方同時にかめはめ波を放った。二つのかめはめ波が衝突し、均衡状態になった。しかし、トランクスが最終的に勝ち、セルは耐え切れずに押し切られて消滅した。セルの消滅と同時に、トランクスの勝利を告げるアナウンスが流れた。

武道会の初戦で闘技場が壊れ、死者も出るという波乱。この会場に居る誰もが、不吉な予感を抱いた。この武道会は、無事では終わらない。この後も死者が続々と出るだろう。観戦客は、巻き添えを食う事を恐れ、続々と席を立って会場から去っていった。正に死の武道会と呼ぶに相応しい初戦であった。

セルが死んだ光景を控え室のモニターで観ていたフリーザは、大きなショックを受けていた。一方、レードは、セルの死ではなく、別の事にショックを受けていた。

「闘技場が壊れては、もう武道会を続けられない。中止にせざるを得ないようだ」
「それには及ばないわ。ああなる場合を想定して、ちゃんと準備してきたから。五十七号」

ドクター・ハートに促された五十七号は、控え室を出た。それから間も無くして、ドクター・ハートの配下のロボットやサイボーグが大量の土を運んできて、闘技場の穴を塞いだ。次にカッチン鋼のタイルを取り除き、替わりに別のタイルを敷き詰めた。

「あれはカッチン鋼より遥かに頑丈な金属であるポラリスで作ったタイルよ。もう闘技場が壊れる心配は無いわ。早く武道会を続けましょ。まあ客席を守るバリヤーが壊れたせいで、残った観戦客は死ぬかもしれないけどね。そんなのは気にしなくて良いわ。もうセルの様な無様な試合を観せないでね」

第二試合の開始を告げるアナウンスが流れた。悟天は、すぐに闘技場に現れたが、対する餃子は、何時まで経っても姿を見せなかった。周りから止めるように促され、自身も危険を感じていた為、試合を放棄したのである。こうして第二試合は、悟天の不戦勝で終わった。

闘いが出来ずに不完全燃焼の悟天が控え室に戻る途中、チチが悟天を呼び止めた。チチの側には、ビーデルが立っていた。

「悟天。おめえ、何時になったら地球に帰ってくるんだ?悟飯が無事に帰ってきたから、もう蟠りはねえはずだべ」
「何も聞いていないのか?俺は、地球を捨てた。もう二度と地球に足を踏み入れない」
「何を言ってるんだべ!そんな事を言うもんじゃねえ!悟空さが悲しむぞ!」
「よく聞け!俺は、孫悟空を殺す!手始めに、次の試合でトランクスを殺してやる!」

悟空達は、チチを気遣い、悟天が豹変した事については一切話さなかった。その為にチチは、悟天が悟空に対して不満を抱いているせいで地球に帰ってこないと考えていた。だから自分が悟天を説得して悟空と仲直りさせようと、ビーデルと二人で廊下で待っていた。そんなチチの甘い思惑を打ち砕いた悟天の衝撃的な発言だった。

立ち去る悟天の背中を見ながらチチは、ショックの余りに腰が抜けた。そして、目から大粒の涙を流した。

「ど、どうして、こったら事になっちまったんだべ・・・」

ビーデルがチチを介抱したが、チチは、すぐに立ち上がれなかった。

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