其の百二十一 時を越えた因縁

ドクター・ハートが発表した第二回宇宙一武道会のトーナメントの組み合わせは、以下の通りだった。

第一試合: トランクス 対 セル
第二試合: 孫悟天 対 餃子
第三試合: パン 対 ゴカン
第四試合: 天津飯 対 孫悟空
第五試合: ベジータ 対 フリーザ
第六試合: ウーブ 対 レード
第七試合: 孫悟飯 対 ハートボーグ五十七号
第八試合: ピッコロ 対 ハートボーグ五十八号

「これが組み合わせよ。ルールは第一回の時と変わらないわ。片方が戦闘不能になるか、降参の意思を表明するまで試合が続けられる。ただし、審判は闘いに巻き込まれるのを避ける為に闘技場に居ないから、降参する時は遠くからでも分かるように床を手で数回叩きなさい。反則は武器の持ち込み位ね。対戦相手を殺しても反則にならないわ。そして、試合と試合の間に十分間のインターバルを取るわ。以上が連絡事項よ。今の話を理解出来なかった馬鹿は、居ないわね?」

ドクター・ハートは、早口でルールを説明した。他人への思い遣りが皆無のドクター・ハートらしい説明だった。

「ここから先は提案よ。折角の武道会なのに、優勝商品が無いんじゃ詰まらないわ。そこで優勝者は、敗退者に何でも命令出来るというのは、どうかしら?そして、敗退者は命令に絶対に従わなければならない。これだったら武道会は大いに盛り上がるわ。いかがかしら?孫悟空」

ドクター・ハートは、高慢な態度で悟空に尋ねた。もし悟空が提案を拒めば、「臆病者」と言って嘲笑するつもりだった。

「何でも言う事を聞かせられるんだろ?別に良いぞ」
「そう。応じてくれて嬉しいわ。だったら決まりね。第一試合は一時間後に始める予定だから、それまで控え室で仲間達と今生の別れを惜しむと良いわ。あはははは・・・」

ドクター・ハートは、高笑いをしながら退室した。それに続いて、レードや悟天達も退室した。悟空達九人も退室し、ブルマ達が居る控え室に向かった。

悟空達が居る控え室とは別の部屋では、レード陣営とドクター・ハート陣営の選手及び関係者が集まっていた。そこでフリーザがレードに対して怒鳴っていた。

「どうして僕がベジータと闘わなきゃいけないんだ!?僕がトランクスに恨みを抱いているのは知ってるだろ!そもそも僕は、武道会になんて出場したくなかったんだ!それを強引に出場させたのだから、せめて僕が望む通りの組み合わせにするのが筋じゃないか!今からでも遅くはない!僕とセルの位置を入れ替えろ!」

フリーザは、半年前に組み合わせを知った時から不満を抱き、自分に一言の相談も無く勝手に決めたレードに文句を言いたかった。ところが、レードは、サイボーグになる為の改造手術中は無論、それ以降の武道会の開催日まで惑星レードに現れなかった。その為、今までフリーザは、レードに対して何も言えなかった。半年も待たされた分、怒りが激しかった。そして、レードは、フリーザの恨み節を黙って聞いてから応答した。

「では、逆に聞こう。父上は、トランクスと闘って勝てると思っているのか?トランクスは、修行して以前よりも強くなっている。それに引き換えベジータは、老いのせいで伸び悩んでいるようだ。そこで父上の安全を考え、トランクスの対戦相手を父上ではなくセルにし、父上にはベジータと闘ってもらう事にした。父上と仲の良いセルがトランクスを殺せば、父上の溜飲が下がるだろう。また、父上がトランクスの親であるベジータを殺しても、父上の胸が空くだろう」

以前の戦闘では、フリーザがトランクスを圧倒していた。ところが、あれから地道に修行していたトランクスと、この半年間は修行したが、それ以前は怠っていたフリーザとでは、差が縮まって当然だった。もしかしたらトランクスがフリーザを追い抜いてるかもしれなかった。幾らトランクスを殺したいとはいえ、逆に殺されるのは真っ平御免のフリーザは、押し黙るしかなかった。しかし、次にセルがレードに噛み付いた。セルもまた武道会に出場したくなかった。

「ならば私ならトランクスに殺されても構わないと言うつもりか!?」
「そうではない。お前にはセルジュニアを生み出せる能力がある。試合中にセルジュニアを生み出して共に闘っても、反則にはしない。本当は試合中の父上の乱入も許可したい位だが、それだと向こうからも乱入される。お前がトランクスを、父上がベジータを殺したら、次の対戦相手は孫悟天と俺だ。その時は二人とも棄権すれば良い」

レードの説明に、フリーザとセルは一応納得した。しかし、今度は五十七号が怒りを込めて質問した。

「じゃあ俺を孫悟飯と闘わせる理由は何だ!?ドクター・ブレインでさえ敵わなかった男だぞ!俺が勝てる相手ではない!」
「あの時は孫悟飯が激怒していたと聞いた。あいつは怒ると戦闘力が大幅に増す」
「俺が奴にした仕打ちを思えば、奴は俺に対しても怒りを抱いているはずだ!」
「ならば、お前には特別に俺の力の一部をやる。それで勝てなかったら降参しろ」

レードが力の一部や、降参の許可を与えてくれたので、ようやく五十七号は、安心して引き下がった。

「五十八号にも伝えておく。前の試合で五十七号が勝てば別だが、そうならなかった場合、絶対にピッコロを殺すな。もし殺せば、お前に対して孫悟飯が怒るからな」
「分かった。しかし、ピッコロは何時殺すんだ?まさか見逃すのではあるまい」
「俺が優勝した後、生き残った孫悟空の仲間達には俺と闘うよう命じる。その者達は拒む事が出来ん。その時に殺す」

ドクター・ハートが提案した優勝者の特権は、悟空達を一人残らず殺す為のものだった。そして、レードが一人一人への説得を終えると、ドクター・ハートが代わって話し始めた。

「最後に全員に伝えておくわ。対戦相手を殺す時は、くれぐれも体をバラバラにしないで。バラバラになった体が元通りに再生されて復活したケースがあるからね。ドラゴンボールの適用範囲は一つの銀河内だけ。その為、殺したら死体を素早く回収し、別の銀河に輸送して放棄するわ。全宇宙に銀河は何千億もあるから、孫悟空の仲間が死んだ者を復活させようとしても、どの銀河に死体があるか絶対に特定出来ない。これによって復活を阻止出来るわ。良いわね?孫悟天」

ドクター・ハートは、急に悟天の方を振り向いた。悟天は、不服そうに尋ねた。

「どうして俺に念を押す?」
「あなたは、孫悟空を殺したい位に憎んでいるようだけど、いざとなったら殺せないんじゃないかしら?何だかんだ言っても、実の親子だしね」
「俺を見縊るな!もう親子の縁を切った!奴は、俺が必ず殺す!」
「それが虚勢じゃない事を祈るわ。もし裏切れば、あなたにも死んでもらう」

ドクター・ハートは、悟天を信用していなかった。一方、悟天は、ドクター・ハートに対して嫌悪感を抱いた。

それから数十分後、第一試合の開始を告げるアナウンスが会場中に響いた。トランクスとセルは、それぞれ控え室を出て闘技場に向かった。そして、トランクスは、廊下を歩きながら考え事をしていた。これから闘うセルは、かつての悟空と互角に渡り合った実力の持ち主である。あの時の悟空以上の力が自分に無ければ、絶対に勝てない相手である。これまでの修行の日々を思い出し、「絶対に勝てる」と自分に言い聞かせ、気合を入れてから闘技場に足を踏み入れた。

トランクスが闘技場の中央に立って周りを見渡すと、客席には空席が目立っていた。前回の武道会では異星から大勢の客を招いて満席だったが、今回はレードの部下や惑星レードに住む市民しか居なかった。トランクスは、客の少なさを気にする事無く、正面に立つセルと向かい合った。

「この時代に生まれたお前とも闘う事になるとはな・・・。やはり不思議な縁があるらしい。お前は知らないかもしれないが、私は、未来からタイムマシンに乗って来た。その直前、タイムマシンを奪う為、お前を殺した。また、この時代に来て完全体となった後、未来から来たお前を殺した。計二回もお前を殺したのだ」

自分が二回も同じ相手に殺されたというのは、トランクスにとってショックではないが、残念な話だった。

「ところが、この時代で生まれるはずだった私は、生まれる前に殺されていた。未来から来たお前が殺したかもしれない。そして、この時代で私に殺されたお前だが、ドラゴンボールで生き返り、未来に帰った。その後、おそらく未来の世界で私を殺しただろう。つまり私は、お前を二回殺したが、お前も私を二回殺したかもしれない。どうだ?縁があると思わないか?」
「互いに互いを二回ずつ殺すなんて変な話だが、確かに縁があるかもな」

第一試合を告げるアナウンスが流れた。すぐにトランクスは、超サイヤ人5に変身した。

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