其の百十九 生きていたレード

苦難の日々を乗り越え、遂にドクター・ブレインを倒した悟飯は、仲間達と共に地球に帰還した。そして、チチやビーデルと九年半振りに再会した。

「悟飯・・・。本当に悟飯だか?」
「あなた・・・。お帰りなさい」
「ビーデル、母さん。ただいま」

チチとビーデルは、悟飯に寄り添い、声を上げて泣いた。悟飯は、優しく二人を抱き寄せた。

その後、身を清めて髭を剃り、髪を短く切り揃えて黒く染めた悟飯の元に、トランクスとパンが揃って来た。二人の目的は、結婚の許可を得る為だった。突然の報告に驚く悟飯だったが、無事かどうかも分からなかった自分が帰ってくるまで結婚を控えていた二人に心を打たれ、気持ちよく了解した。そして、仲間内だけの細やかではあるが、結婚式が行われる事になった。

結婚式の準備は、ブルマとチチが中心になって行われ、悟空達は待つ事になった。その間に悟飯は、悟空達から九年半の間に起こった出来事を聞いた。

「俺が連れ去られた事が、悟天との決別のきっかけだったんですね。俺が傍に居れば、そんな事させなかったのに・・・」
「悟天との対決は、最早避けられねえだろう。そして、オラが勝てるとは限らねえ。それだけ悟天は、恐ろしく強くなっていた。多分オラ達以上の修行をしてきたんだろうな。次に会う時、更にどれだけ強くなってるか予測出来ねえ」

悟空が脅威を抱く程に悟天は、急激に強くなっていた。今までと同じ修行をしていては、遠からず悟天に追い越されるだろう。悟天に対抗する為に悟空は、結婚式が終わったら、今まで以上の修行に励む考えだった。

悟空達が話し合っていると、そこに惑星レードから派遣されてきた五人の科学者達が近付いてきた。彼等は、悟空達の惑星ジニア行きを支援していたが、その一方で悟空達の身に起こった出来事を惑星レードに逐一報告していた。スパイ活動していた事を悟空達に白状して詫びたが、悟空は、笑顔で許した。そんな事は最初から知っていた。その上で協力してもらっていた。そして、直ちに惑星ジニアに帰還しようとした彼等を引き留め、結婚式に出席するよう促した。

科学者達の協力が無かったら、ブルマ一人で全て担う事になり、惑星ジニアの到着に更に時間が掛かっていたのが明白だった。だから悟空は、彼等が帰る前に、その協力を労う意味で、楽しい時間を過ごして欲しかった。

その後、トランクスとパンの結婚式が行われた。悟空達は、二人を祝福したが、式の終了後すぐに修行を開始した。トランクスとパンも胴着に着替えて修行に参加した。

一方、地球から遠く離れた惑星ジニアの近くの星にドクター・ハートの研究所があり、その中の一室にドクター・ハートが居り、その傍らにハートボーグ五十七号と五十八号が控えていた。ドクター・ブレインからの信頼が厚かったドクター・ハートは、キラーウイルスが散布される事を事前に知らされており、ハートボーグ達を連れて、この星に避難していた。また、避難する際、採取したばかりの悟空達の細胞を持ち出していた。

ドクター・ハートの目の前には寝台があり、その上にレードが横たわっていた。病気玉を喰らって宇宙まで吹っ飛ばされたレードだったが、人工衛星型カメラを通して闘いを観戦していたドクター・ハートは、五十七号に命じて宇宙空間に浮遊していたレードを回収させた。連れてきた当時のレードは、病気と怪我が酷く、生きているのが不思議な位の状態だった。しかし、ドクター・ハートの治療の甲斐あって、大分回復していた。そして、意識を取り戻した。

「初めまして。私はドクター・ハート。そして、ここは私の研究所。私のお陰で、あなたは助かったのよ。感謝しなさい」
「ドクター・ハート?ジニア人だな?どうして敵である俺を助けた?」
「あなたが敵?私の敵は、ドクター・ブレインの仇である孫悟飯と、その一味よ」
「あのドクター・ブレインを倒しただと!?一体どうやって倒したんだ!?」

自分でもどうにもならなかったドクター・ブレインが悟飯に倒されたと聞いたレードは、目を大きく開いて驚いた。ドクター・ハートは、レード退場後の闘いの経過を伝えた。

「・・・なるほど。よく分かった。ならば俺を助けたのは、復讐の為か?」
「助けた当初は、何かの役に立つかもしれない程度にしか考えてなかったけど、今はそうね」
「だったら他に頼め。俺は、孫悟飯よりもドクター・ブレインの方を憎んでいる。奴の為に動くつもりはない」

レードの素っ気無い拒否に、これまで黙っていた五十七号が憤慨した。

「貴様!助けてもらっておきながら、その態度は何だ!」
「助けてくれと頼んでいない。気に入らないなら殺せ」
「望み通りにしてくれるわ!」

五十七号は、レードに飛び掛かろうとしたが、五十八号に力尽くで止められた。

「落ち着け。レードの心情を考えれば、こちらの要求を拒むのも当然だ」
「五十八号の言う通りよ。最初から引き受けてもらえるとは思ってないわ」

ドクター・ハートは、 五十七号が落ち着くのを待ち、 改めてレードと向き合った。

「ドクター・ブレインの為に闘うのが嫌なら、自分の為に闘ってみない?彼等を倒せば、あなたは銀河系の支配者になれるわ。私は敵討ちを果たせる。それならどうかしら?」
「何故そこまでドクター・ブレインの敵討ちに執着するんだ?奴には人望が無かったと思うが・・・」
「一言で言えば、私がドクター・ブレインを慕っていたからよ」

ドクター・ハートは、自分の身の上話を語り始めた。

「私は、知能指数が一万八千もある天才だけど、今まで何も発明してなかったから、オーガンの中では立場が低かったわ。それを挽回したくて、科学の力でドラゴンボールを作ろうとしたけど、上手くいかなかった。周りからは『人の真似しか出来ない』だの、『オーガンに相応しくない』だの、散々批判されてきたわ。でも、ドクター・ブレインだけは私を庇ってくれた。私は、命ある限り、あの人に尽くしたかった。でも、孫悟飯のせいで、それが出来なくなった」

ドクター・ブレインがドクター・ハートに気を掛けていたのは、反抗的な他のジニア人達とは違い、彼女だけは従順だったからである。だからキラーウィルスを散布する計画も彼女にだけは事前に打ち明け、生かしておくつもりだった。

「孫悟飯は強い。その親である孫悟空も強い。彼等を倒す為には、強い味方が必要なの。あなたが味方になってくれれば、あなたの仲間も協力してくれるでしょ?あなたと孫悟空は、元々敵同士。今までは私達ジニア人に対抗する為、仕方なく手を組んでたみたいだけど、これからは彼等を共通の敵として、私達と手を組んでみない?あなたが応じてくれたら、あなたの仲間だって、きっと賛同してくれるわ」

レードは、返答に窮した。悟天もフリーザもセルも、ジニア人を嫌悪する感情を抱いていない。むしろ因縁浅からぬ悟空達の方に嫌悪感を抱いていた。今のドクター・ハートの言葉を彼等に伝えれば、二つ返事で応諾するかもしれなかった。

「ならば俺を通さず、あいつ等に直接言え。喜んで手を組むだろう」
「それはどうかしら?私が彼等を敵と思っていなくても、彼等は私の事を敵だと見なす可能性があるわ。そうじゃないとしても、フリーザやセルは、協力の見返りに何か求めそうだしね。でも、あなたが応じてくれたら、彼等は黙って追従するわ」

ドクター・ハートは、レードの意識が無い間に、メモリースキャンを用いて、レードの記憶を盗み見ていた。そして、打倒悟空に凝り固まった悟天や、邪な考えを抱くフリーザやセルよりも、レードを懐柔した方が、確実にレード一味全員を味方に出来ると考えた。ところが、レードは、簡単には応じなかった。

「孫悟空達を殺しても、ドラゴンボールで復活する。徒労に終わるだけだ」
「その対策は既に考えてあるわ。彼等を殺したら、その死体を何処か別の銀河に遺棄するの。ドラゴンボールの適用範囲は、使用した銀河内だけみたいだからね」
「・・・恐ろしい事を考える女だ。お前と組めば、確実に奴等を葬れるかもな」
「そうよ!あなたは帝王になるんでしょ?何の為に娘のアイスが死んだと思ってるの?」

レードの考えが改まってきたと判断したドクター・ハートは、取って置きの一言を言い放った。これが決定打となった。

「・・・分かった。お前と手を組もう。しかし、俺の体は、こんな状態だ。もう闘えまい。お前だって俺を元の体には戻せまい」
「確かに元の体には戻せないわ。でも、サイボーグに改造すれば、以前より強くなれるわ」
「俺をサイボーグに改造するなら、ロボベジットやドクター・ブレイン以上の戦士にしろ」
「とんでもない事を要求してくるわね。良いわ。出来る限りの事をやってみるわ」

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