其の百四 ロボベジット強し

片方は本物ではなく本物に似せたロボットではあるが、ベジット対悟空という通常ではありえない対決が始まった。まず悟空は、様子見として力をセーブしながら正面から攻めた。対するロボベジットは、腕組みをしたまま上空に飛び上がり、悟空の攻撃を避けた。悟空も同じく飛び上がってロボベジットを追い掛け、連続攻撃を繰り出したが、ロボベジットは足だけで悟空の猛攻を凌いだ。

「ほれほれどうした。てめえなんか足だけで充分だぜ」

悟空は、パワーやスピードを上げて攻撃したが、ロボベジットには一向に当たらず逆に顔を蹴られた。

「もうちっと強いのかと思ったんだがな・・・。俺に出させてくれよ・・・本気を」
「・・・性格まで本物のベジットそっくりとはな。オラが言うのも何だが、何てムカつく奴だ。だったら、これならどうだ!」

悟空は、早くも超サイヤ人5に変身した。

「お前は、ベジットそっくりでも所詮ロボットだ。サイヤ人じゃない。超サイヤ人になんてなれねえだろ?」
「ふっ、それはどうかな?はあっ!」

ロボベジットが気を溜めると、何と超サイヤ人5に変身した。悟空が仰天したのは語るまでもなかった。

「ふっふっふっ・・・。驚いてるようだな。これは本物の超サイヤ人5ではなく、似せたものだ。しかし、本物と変わらない強さを持っている。お前達に対抗する為には、これぐらい出来ないと話にならんからな」

ドクター・ラングは、悟空の記憶から超サイヤ人1から5について調べ、変身前と比べてどれだけ強くなるのか計算していた。そして、各超サイヤ人に外見も中身も同じ変身が出来るようロボベジットを造っていた。

超サイヤ人5となった悟空は、果敢に立ち向かった。しかし、擬似超サイヤ人5の強さは本物で、ロボベジットとの実力差は一向に埋まらなかった。悟空が本気になって闘っても、それは変わらなかった。ならばと悟空は、危険を承知の上でロボベジットに近付き、至近距離から龍拳を放った。ところが、ロボベジットは、右手だけで龍拳を受け止めた。

「ふっ。少しは痛かったぜ」

ロボベジットの右手の平から血の様なものが滴り落ちていた。一発逆転を狙った悟空は、ロボベジットに少しのダメージしか与えられなかった事に大きな失望感を味わった。好機と見たロボベジットは、すぐに反撃に転じて悟空を殴った。悟空は、蹴りで対抗したが、ロボベジットに蹴り足を掴まれ、地面に叩きつけられた。続いてロボベジットは、指先から剣の形をした気を出し、悟空の左肩を貫いた。そして、悟空を自分の目線と同じ高さにまで持ち上げ、悟空を宙吊りにした。

「一方的過ぎて、ちっとも面白くない。もっと本気でやって欲しいな。・・・それとも、本気でやって、このザマだったかな?だったら失礼な事を言って悪かった。謝るよ」

ロボベジットが気を出すのを止めた。悟空は、解放されが左肩に重傷を負い、左腕を動かせなくなった。それでもロボベジットに向かっていったが、まるでサンドバッグの様に殴られ続けた。

「まだよく分かってないようだから、ハッキリ教えてやろうか?無駄なんだよ。俺に勝とうなんて。貴様なんかが、どう頑張ったって。さあて。もう飽きてきたから、そろそろ終わらせてやるか」

悟空は、追い詰められながらも、打開策を必死になって考えた。龍拳が通用しないなら、おそらく十倍かめはめ波も通用しないだろう。元気玉を作っても、途中で妨害されるだろう。このまま闘っても勝機が無ければ、地球に帰って仲間を連れ、再度挑むしかないという結論に達した。そこでブルマの元まで瞬間移動し、ロボベジットに追いつかれる前に地球に戻ろうと企んだ。しかし、ロボベジットは、悟空の計画を見抜き、悟空の側を離れず、瞬間移動する時間を与えなかった。

「この俺から逃げられると思ってるのか?てめえの考えなど、お見通しだ」

悟空は、破れかぶれに殴り掛かったが、ロボベジットに躱され、鳩尾に肘鉄を喰らわされた。続けて地面に叩きつけられたが、真上にいるロボベジットに向けてかめはめ波を放った。ところが、かめはめ波は、遥か彼方に弾き飛ばされた。勝利を確信したロボベジットは、悠々と悟空の側に来て、悟空を殴り始めた。

「流石にしぶといな。だが、そろそろ限界だな。分かるぞ」

殴られ続けた悟空は、超サイヤ人5の変身が解け、立っているのがやっとの状態だった。最後の手段として太陽拳を使ったが、対するロボベジットは、事前に顔を背け、目が眩まなかった。最早悟空に瞬間移動する力は愚か、逃げる力すら残っていなかった。後は死を待つばかりとなった悟空は、観念して目を瞑った。

ところが、次の瞬間、ロボベジットは背後から光弾を受けた。それはベジータが放った光弾だった。予期せぬ事態にロボベジットが驚いていると。死角からピッコロに蹴られた。ロボベジットが地面に伏している間にトランクスが悟空を抱え、急いで飛び立った。気を取り直してロボベジットがトランクスの後を追うと、真上からウーブがお菓子光線を次々と放ってきた。

ロボベジットが追跡を中断し、お菓子光線を避けている間、ベジータ達がトランクスの後を追って飛行した。ウーブも光線を放ちながら飛んだ。そして、ベジータ達が停まっていた宇宙船に飛び乗ると、船の中で待機していたパンが船を地球にワープさせた。

悟空が一方的にやられているのを観たベジータ達は、ロボベジットとの直接対決は危険と判断し、悟空の救出に専念した。それが結果として功を奏した。一方、悟空の考えまでは読めても、地球から遠く離れた星に居る悟空に助っ人が来るとまでは、流石のロボベジットも予想していなかった。その為、対応が完全に後手に回り、悟空を後一歩の所で取り逃がしたが、落胆していなかった。

「逃がしたか・・・。まあ良い。また来るだろうからな。その時に殺してやる」

地球に戻ったベジータ達は、すぐに神殿に悟空を連れて行き、デンデに悟空を回復させた。悟空は、危うく助かったが、助かった喜びよりも、どうして助っ人が来てくれたのかが気になった。

「どうして助けに来れたんだ?オラがピンチだって知らないはずなのに・・・」
「ブルマに感謝するんだな。ブルマが渡したお守りの中には盗聴器が入っていた。それでお前のピンチを知ったブルマは、急いで地球に戻って俺達を連れて引き返した。そして、俺達は、奴に気付かれないよう気配を消しながら、周囲に潜んでいた。後は知っての通りだ。とにかく助けられて良かった。お前に死なれる訳にはいかないからな」

ブルマは、悟空が自力で宇宙船が停泊している場所まで戻って来れない場合を考慮して、盗聴器が入ったお守りを手渡していた。それによってブルマは、悟空とドクター・ラングやロボベジットとの会話を全て聞いていた。そして、悟空がピンチになったら、すぐに地球に戻って修行中だったベジータ達を電話で呼び寄せ、先程の星に舞い戻っていた。こうして悟空は、ブルマの機転によって命拾いした。

「ロボベジットを倒せば、ロボベジットを造った奴から惑星ジニアの場所を聞き出せるんだ。だから、もう一度あの星に行き、何としてもロボベジットを倒す必要がある」

悟空は、ドクター・ラングと交わした口約束を頼りに、ロボベジットとの再戦を熱望した。しかし、ウーブが反対意見を述べた。

「そうでしょうか?あんな手強い敵を無理に倒そうとせずとも、惑星ジニアを皆で手分けして探した方が良くないですか?ようやく3C324までは行けたんですし」
「いや、ウーブ。何千億もある星の中から、たった一つの星を探し出すのは、物凄く時間が掛かる。それに強大な敵を放って置けない。例え惑星ジニアの場所を聞き出せないとしてもだ」

トランクスは、例えロボベジットを倒せたとしても、ドクター・ラングが約束通り惑星ジニアの場所を白状するはずがないと思っていた。惑星ジニアの場所を敵に明かしたジニア人は、一族皆殺しにされるからである。それでもトランクスがロボベジットを倒すべきだと主張したのは、もし生かしておくと、大勢の人間がロボベジットによって殺されるからであった。

「ロボベジットは倒さなければならねえ。しかし、ここに居るメンバー全員で闘っても、ロボベジットには勝てねえ。リマやレードの力を借りる必要がある」
「リマの力を借りるのはフュージョンの為だというのは分かるが、何故レードまで?」
「フュージョンには時間制限がある。ある程度のダメージを与えて弱らせても、合体が解ける前に倒すのは無理だと思う。合体が解けたら、後は総力戦だ。その時にレード達の力が必要だ」

フュージョンは、本来なら合体時間がわずか三十分だが、上位の超サイヤ人に変身すれば時間が更に短縮される。それに対して、ロボベジットには制限時間など無い。合体が解けた後に備え、悟空は、一人でも多くの戦力が欲しかった。

「しかし、レードの元にはフリーザやセルが居る。奴等が参戦しても、こちらが不利になれば、裏切ってロボベジット側に付くかもしれないぞ。ドクター・スカルを裏切った時の様にな」
「その可能性はある。それでも今はレード達の力も必要なんだ。納得出来ないだろうが、ここは堪えてくれ」
「・・・分かった。お前がそこまで言うなら、過去の経緯を一時的に忘れてやる」

更なる話し合いの結果、ピッコロは魔界からリマ達を、悟空は惑星レードからレード達を、それぞれ連れてくるという事に決まった。悟空は早速、トランクスが運転する宇宙船で惑星レードに向かった。

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