其の百三 ロボベジット登場

遂に惑星ジニアのある銀河3C324にまで辿り着いた悟空とブルマ。一先ず悟空達は、大きな気が感じられる星を訪れた。しかし、見渡す限り荒れ果てた大地で、とても人が住んでる様には見えなかった。

「よし!ここから先は、オラ一人で行く。おめえ達は、ここで待っていてくれ。すぐに戻るから」
「待って!孫君!」

ブルマは、悟空を呼び止めると、袋に包まれた物を悟空に手渡した。

「何だ、これ?」
「お守りよ。孫君は、いつも無茶して危ない目に遭うんだから、せめてこれを持って行って」
「そうか。サンキュー」

悟空は、貰ったお守りを懐に入れた。そして、ブルマともう一人の科学者を宇宙船内に残し、気が感じられる場所に向かって飛行した。そして、目当ての場所に降り立った。悟空が立っていたのは、大きな建物の前だった。今まで何度も見てきたジニア人の研究所と似た外見だったので、これもその内の一つだと悟空は思った。悟空が建物を眺めていると、突如として目の前に一人の男が現れた。ドクター・ラングだった。

「ようこそ、孫悟空。待っていたよ。俺は、ジニア人のドクター・ラングだ」
「どうなってるんだ?目の前に居るのに、全く気配を感じねえ。まるで幽霊みてえだ」
「これは立体映像だ。実際の俺は、研究所の中にいる。君に捕まえられたくないから、立体映像で失礼するよ」

ドクター・ラングは、腕っ節が強いが、所詮は非力なジニア人。戦闘民族サイヤ人の悟空の力とは雲泥の差があった。直接会えば、すぐに取り押さえられたであろう。捕らえられずに会話する為、自らが開発した立体映像機を使い、自分の姿を研究所の前に転送していた。

「それより、ここは何処だ?惑星ジニアなのか?」
「いいや。惑星ジニアは、別の場所にある。そろそろ君達が3C324まで来る頃だろうと思って、この星で待っていた。君達は、必ず気を感じて、この星に来ると分かっていたからだ」
「なるほどな。惑星ジニアにしては随分荒れ果ててたから、おかしいと思ってたんだ」

悟空が居るのは、遥か昔にジニア人によって滅ぼされた星の一つだった。ドクター・ラングは、惑星ジニアから遠く離れたこの星に移動し、そこで悟空達が来るのを待ち構えていた。

悟空達が3C324に来た時、どの星にワープで着くかは予測不可能だが、それが惑星ジニアである確率は極めて低いので、そこは警戒する必要が無い。しかし、悟空達が探し続けていれば、いつかは惑星ジニアを発見するかもしれない。そうさせない為にドクター・ラングは、気を囮として、悟空を別の星に誘き寄せた。気は大きければ大きいほど遠くからでも感じられる。悟空が感じた気は、3C324内の広範囲で感知出来る大きさだった。

「それよりも、この気の持ち主は、この建物の中に居るんだろ?そして、オラと闘わせるつもりだろ?だったら早く出せよ。倒してやっから」
「勿論闘ってもらうが、その前に一つ質問がある。究極のロボットとは何だと思う?」
「究極のロボット?さあな。一番強いロボットじゃねえのか?」
「サイヤ人らしい答えだな。俺の考えは違う。俺が考える究極のロボットは、人間だ」

ドクター・ラングの意味不明な言葉に、悟空は思わず首を傾げた。ドクター・ラングは、構わず話を続けた。

「何処の星のロボットも、人間に似せて造られる傾向がある。ならば人に近いロボットほど完成度が高いと言える。それなら究極のロボットとは人間だと思わないか?」
「かもな。でも、何でそんな事を訊くんだ?」
「この気の持ち主が俺が造ったロボットだと言えば、どうする?」
「何だって!?ロボットに気があるのか!?」

悟空は仰天した。気とは生物から感じられるもの。かつては普通の人間で、後にドクター・ゲロによって改造された人造人間達でさえ気を感じられなかった。同じく人造人間ではあるが、人工生命体のセルからは気が感じられたが、少なくともセルはロボットではない。ロボットから気が感じられるなど前代未聞だった。

「信じらんねえな。ロボットから気が感じられるなんてよ」
「俺が造るロボットは、人に限りなく近い。呼吸もするし食事もする。成長して大きくなれば、病気になって死ぬ事だってある。生物学的に人ではないだけだ」
「そんなロボットを造れるなんて凄えな。やっぱり知能指数が高いんだろうな」
「大した事は無い。ほんの一万五千だ」

知能指数の数値に疎い悟空ではあったが、一万五千が極めて高いという事は分かるので、思わず唸った。ドクター・ラングは、得意気に話を続けた。

「俺の得意分野は工学。ロボット工学も電子工学も俺の右に出る者はいない。君達が勝手に使っているジニア人の宇宙船も、俺の発明品の一つだ。その俺が造った最高傑作のロボットが、この気の持ち主だ。さてと、前置きはここまでにして、そろそろ登場させよう。俺の最高傑作のロボットを。そして、君を殺すロボットを」

ドクター・ラングが研究所の出入り口を指差すと、そこからベジットそっくりのロボットが現れた。ロボットは、悟空を見るなり不敵に笑った。一方で悟空は、笑い返せなかった。それどころか、人にしか見えないロボットに唖然としていた。従来の概念にあるロボットと、目の前にいるロボットが、同じ部類に属するとは思えなかった。

このロボットには気配があった。耳を澄ますと、心音も聞こえた。外から見る事は出来ないが、実は体内には血管まであり、血に似たものが体中を循環していた。このロボットには人が持つ全ての機能を有していた。細部に至るまで人と同じだった。しかも人の体から移植された物は何一つ無く、全て精巧に造られた人工物だった。更に凄い点は、気を感じられる事だった。ドクター・ラングの本物志向が一切の妥協を許さなかった結果、造り出された代物だった。

人工生命体の代表格と言えば、セルや魔人ブウである。しかし、彼等を間接的、あるいは偶然に創造したドクター・ゲロやビビディが、無から本物の人間と瓜二つの生命体を造り出すなど到底不可能だった。外見は似せられても、中身までは無理だった。それほど人間の体は複雑だった。それを実現させたドクター・ラングは、常識では考えられない知識と技術があった。そのドクター・ラングの立体映像は、ロボットの肩の上に手を置く仕草をしながら、自信たっぷりに紹介した。

「紹介しよう。ロボベジットだ」
「ロ、ロボベジットだと!?ロボットのベジットなのか!?」
「そうだ。こうして会うのは初めてだな。兄弟よ」

この星に来てから驚きの連続だった悟空だが、このロボベジットには最も驚かされた。

「以前、ハートボーグの二人が地球に行った。その時、お前の記憶と戦闘能力データを取り、それを元に造られたのが俺だ」
「五十八号は、相当強かったのに、やけにあっさり引き下がったから変だと思っていたんだ。あの時は、お前を造る為のデータを取りに来ていたのか・・・」
「俺は、その五十八号より強い。覚悟して掛かって来い」

悟空は、この半年で更に強くなったが、それでも五十八号と闘って勝てるとは限らない。その五十八号より強いと言い張るロボベジット。まともに闘ったら悟空に勝ち目は無いかもしれない。しかし、ロボベジットが己の強さを過信して油断したら、そこに付け入る隙があるかもしれない。悟空は、気圧されながらも、決して勝利を諦めていなかった。

「考えてみりゃ、ベジットと闘えるなんて、この先二度とありえねえだろうな」
「お前に先など無い。すぐに俺に殺されるからだ」
「かもな。でも、オラが勝つかもしんねえぞ。お前は、半年前のオラのデータを元に造られたんだろ?あれからオラが信じられねえ位に強くなったかもしんねえぞ」
「だったら見せてみろ。お前の実力をな」

悟空は、即座に闘おうとはせず、まだ立体映像としてこの場に残っていたドクター・ラングと向き合って尋ねた。

「なあ。もしこいつに勝てたら、惑星ジニアの場所を教えてくんねえか?」
「ふっ。良かろう。闇雲に探したのでは、何時まで経っても惑星ジニアを発見出来ないだろうからな。ありえない話だが、勝てたら教えてやる」

ロボベジットに絶対の自信があるドクター・ラングは、悟空の申し出に応じた。これで悟空は、俄然やる気になった。

「よーし!絶対に勝って惑星ジニアに行くぞ!」

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