膨大な数の病気の耐性を持つ悟飯には、ドクター・ブレインの病気攻撃が通じなかった。しかし、その事に憤慨したドクター・ブレインは、凄まじい勢いで悟飯に襲い掛かった。そして、激しい攻撃を何度も浴びせた。これに対して悟飯は、反撃どころか防ぐ事すら出来なかった。
「俺の命を狙う者は多岐に渡った。中には病気にならないのもいた。旧式のロボットとかな。しかし、所詮は俺の敵ではなかった。俺に歯向かった事を後悔して死ね!」
ドクター・ブレインの攻撃の前に悟飯はサンドバック状態となり、観戦していた悟空達の表情は青ざめていた。
「このままじゃパパが死んじゃう!お爺ちゃん!パパを助けて!」
「助けに行きてえのは山々だが、悟飯以外がドクター・ブレインと闘うと病気にされてしまう。それだと却って悟飯の足手纏いになる。悟飯は勝算があると言ったんだ。悟飯を信じろ」
依然としてドクター・ブレインによる一方的な展開が続いていた。ドクター・ブレインは、全く手加減せず、間断無く攻撃をしているにも拘らず、悟飯が倒れずに耐えていた。悟飯が長時間に渡って耐え続けていたから、観ている悟空達は、徐々に不安ではなく違和感を感じるようになった。
「ドクター・ブレインからは気を感じられないから正確な強さが分からないが、スピードから判断して強さも相当なはずだ。あれだけ攻撃を喰らえば、死んでもおかしくない。しかし、悟飯さんは、倒れるどころか、気が全く落ちていない。一体どうなってるんだ!?悟飯さんにはドクター・ブレインの攻撃が通じてないのか!?」
ドクター・ブレインは、闘いの素人でないのが一目瞭然だった。何百年にも渡って数多の星を滅ぼしてきた過程において、キラーウィルスが効かないロボット等から襲撃される場面も少なくなかった。そういう時は闘って退けてきた。そんな経験を積んできたドクター・ブレインからの攻撃に耐え続けられる悟飯は、味方側から観ても異様に思えた。
「悟飯の全身は、とっくに傷だらけだ。少なくともダメージを受けている。それでも耐え続けられるのは、悟飯がタフだからだ。これまでの過酷過ぎる境遇により、信じられない位にタフになったのだろう。カカロットの十倍タフかもしれない」
悟飯のタフさは尋常でなかった。自分より力が上の者からの攻撃を喰らい続けているのに、全く弱っていなかったからである。逆にドクター・ブレインの勢いの方が落ちてきた。攻撃のし過ぎで疲れが溜まっていた。これにより悟飯に反撃の機会が生まれた。悟飯は、攻撃に転じるようになったが、ヘルメットを壊されて目が剥き出しになっていた為、動きを読まれて回避された。しかし、疲労困憊のドクター・ブレインは、悟飯から離れた。
「ハアハア・・・。ば、化物め!好い加減にくたばれ!」
「その化物を創り出したのは貴様等だ。俺は、休み無しで肉体労働を延々とさせられた。その後は病気に次ぐ病気。常に死と隣り合わせの毎日だった。それに比べれば、貴様の攻撃を受け続ける事など苦しい内にも入らない。何より貴様等に殺された人達の事を思えば、倒れてなどいられるか!」
惑星ジニアでの辛い日々は、悟飯に途方も無いタフさを与えていた。これは修行や実戦では決して身に付かなかった。それに加え、今までドクター・ブレインに殺された無数の人間が、自分に力を貸してくれていると悟飯には感じていた。その為にドクター・ブレインは、悟飯の背後に大勢の人が立ってるように見え、思わず恐怖心を抱いた。
このまま攻撃を続けても悟飯が倒れそうにないし、更に動きが鈍くなれば、形勢逆転するのも時間の問題だった。しかし、ドクター・ブレインは、対策を考え、それから悟飯に飛び掛かった。そして、悟飯の体を軽く指で突き、悟飯に殴り飛ばされた。
「今頃になって病気攻撃なんて・・・うっ!か、体の調子がおかしい。こ、これは何の病気だ?」
「ふはははは・・・!それは病気ではなく全身麻酔だ。間も無く意識を失う。すると無防備になる。そうなれば、幾らタフでも簡単に殺せる。さあ。永遠の眠りに入れ」
病気とは違い、全身麻酔は何度されても効き難くなるという事はない。全身麻酔を掛けられた悟飯に強烈な睡魔が襲ってきた。悟飯は眠らないよう踏ん張ったが、片膝を付き、項垂れてしまった。
「ふう。もっと早くこうしてれば良かった。こいつには調子を狂わされっ放しだった。とにかく、これでようやく殺せる」
ドクター・ブレインは、止めを刺そうと、やおら悟飯に近付いた。ところが、悟飯の左手が急に動き、油断していたドクター・ブレインの右手首を握り締めた。
「なっ!?お前!寝てたんじゃないのか!?」
「貴様を油断させる為に、寝た振りをしていたんだ。俺は、ここに来てから、ろくに睡眠時間を与えられなかった。睡魔をコントロールする術が無ければ、とても耐えられなかった」
「くっ。は、離せ!」
焦ったドクター・ブレインは、空いてる左手で白衣のポケットからポラリス製のメスを取り出し、悟飯に向かってメスを振り下ろした。しかし、悟飯は、左手を離して真剣白刃取りでメスを受け止め、素早く取り上げた。そして、メスを持ち直し、ドクター・ブレインの右手首を切り落とした。返し刀でドクター・ブレインの左手首も切り落とし、それからメスを投げ捨てた。更に両手を失って戸惑うドクター・ブレインの体を破砕拳で貫いた。
悟飯がドクター・ブレインの体から腕を引き抜いた時、ドクター・ブレインの体に発疹が表れた。悟飯は、ドクター・ブレインの体内にあった病原菌を貯蔵してあるタンクを破壊したので、病原菌がドクター・ブレインの体を蝕み始めた。ドクター・ブレインは、サイボーグになって体が機械化されているが、外見を含めて人のままの部位もあった。その部位が病気になった。しかし、両手が無いので、自らの体の治療が出来なかった。
「今まで大勢の人達を病気にして殺してきたんだ。貴様も病気を患う苦しさを思い知れ!」
ドクター・ブレインは、複数の病気を同時に発症し、のたうち回って苦しんだ。この光景を観て、悟飯の勝利を確信した悟空達は、ようやく安堵した。
「悟空よ。俺は、悟飯が惑星ジニアで無意味な日々を過ごしてきたとは思わない。ドクター・ブレインを倒す為、自ら犠牲になって十年近い歳月を費やしてきた。そう思いたい」
「そうだな。もし悟飯が惑星ジニアに連れ去られず、オラ達と一緒に行動していたら、今回ドクター・ブレインに決して勝てなかった。オラは、あいつを誇りに思うぞ」
ドクター・ブレインには、最早闘う力が残っていなかった。両手を失ったせいで自らの体の治療が出来ないなら、研究所に戻って薬を飲むしかない。そして、この場から脱出する為には、恥も外聞も捨てて命乞いするしかないと考えた。
「お、俺が悪かった。もう悪い事はしない。ミレニアムプロジェクトも止める。だから頼む。命だけは・・・」
「ふざけるな!貴様一人の下らん野望のせいで、どれだけの人が死んだと思ってるんだ!貴様には生きる価値も資格も無い!あの世に行って、貴様が殺してきた人達に詫びろ!」
悟飯は、ドクター・ブレインの体を持ち上げると、上空に殴り飛ばし、かめはめ波を放った。ドクター・ブレインにはバリヤーを張る余力も無く、かめはめ波を喰らって跡形も無く消滅した。ドクター・ブレインの死により、長きに渡ったジニア人達との闘いに終止符が打たれた。悟飯の周りに悟空達が集まり、勝利の喜びを分かち合った。
そんな折、悟天が近付いてきた。悟飯に会え、ジニア人との闘いに幕を閉じ、ようやく悟天の蟠りも解けたと悟空達は思った。しかし、現実はそうではなかった。
「打倒ジニア人を果たしたから、貴様等との同盟関係は解消だ。これからは再び敵対関係に戻る。孫悟空よ、覚悟しろ。貴様は必ず俺が殺してやる」
「な、何を言ってるんだ、悟天?気は確かか?」
「引っ込んでろ、孫悟飯。もし俺の邪魔をするつもりなら、貴様にも容赦はせん」
悟空と悟天の確執を知らない悟飯は、信じられないといった表情で悟天を見た。そして、悟天を問い質そうとしたが、悟空が間に入って尋ねた。
「悟天。今まではジニア人との闘いを優先してきたから黙っていたが、それが終わった今だからこそ尋ねる。どうしてオラを殺した程に憎んでいるんだ?」
「貴様がアイスの仇だからだ。アイスは貴様に殺されたんだ!」
「何を言ってんだ?敵でもねえ、ましてや悪人ですらねえアイスを殺すはずねえだろ」
「貴様が直接手を下さなくても、貴様のせいでアイスが死んだ。絶対に許さん!」
悟空には悟天の言ってる事が理解出来なかった。唯一分かったのは、アイスが死んだという事実だけだった。
「悟天。事情は分からねえが、おめえは勘違いしてるんだ。あるいは騙されてるんだ。もっと冷静になれ」
「黙れ!これ以上話す事など無い!いずれ必ず貴様を殺しに地球に行く。それまでせいぜい束の間の平和を楽しんでいろ」
悟天は、フリーザとセルと共に踵を返し、宇宙船が置いてある場所に向かって飛行した。悟空達は、折角の喜びが悟天のせいで台無しになり、何とも言えない苦い思いを味わった。
悟天との対決は、最早避けられそうもない。ジニア人との闘いの終焉は、新たな闘いの始まりとなった。


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