其の百十七 悟飯の逆襲

長きに渡る苦難の日々を経て、ようやく悟空達と合流した悟飯。ところが、その悟飯は、何故かグレートサイヤマンの格好になってドクター・ブレインと単身で闘う事になった。これは悟飯が遊んでいる訳ではなく、真面目に考えて選んだ服装だった。当然お決まりのファイティングポーズはしなかったが、後方に退いた悟空達は不安を抱えていた。

「あの格好に何の意味が?肌の露出が少ないから病気攻撃を防げるのでしょうか?」
「それは無い。ドクター・ブレインがカカロットを心臓病にしようとした時、胴着の上から攻撃した。もし服の上からでは病気にさせられないなら、その前に胴着を破ろうとしたはずだ。つまり病気にさせるのに衣服のある無しは関係ない。恐らく髪の毛が長過ぎて闘う時に邪魔になるから、ヘルメットの中に仕舞っておく為だろう」

悟飯の格好についての憶測が飛び交う中、当の悟飯とドクター・ブレインによる会話も繰り広げられていた。

「こうして君と対峙するのは二度目だな。まだ私には勝てないと分からないのか?やはり猿程度の学習能力だな」
「ドクター・ブレイン。俺は貴様程の極悪非道な奴を見た事がない。貴様に比べれば、向こうに居るフリーザやセルが善人に見える。全宇宙の塵め!貴様だけは絶対に許さん!」

悟飯の気が一気に膨れ上がった。ドクター・ブレインに並々ならぬ恨みを抱く悟飯は、既に激怒していた。そして、正面からドクター・ブレインに殴り掛かった。顔面へのパンチは避けられたが、パンチした手を地面に付いた逆立ち状態で、顔の側面にキックした。キックを喰らってドクター・ブレインが後退りした隙に両足で立ち、腰を屈めて腹部にパンチした。以後、全てではないが、悟飯からの攻撃が次々と命中した。

一方、この戦闘を観ていた悟空達は、違和感を覚えていた。

「どうして攻撃が次々と当たるんだ?他の人では余り当てられなかったのに・・・」
「ドクター・ブレインからは気を感じられないから、その動きを目で追うしかない。ところが、ドクター・ブレインは、対戦相手の目を見て、自分の体の何処が狙われてるのか読み取っているんだ。だから攻撃を避けられたんだ。でも、悟飯の目はヘルメットに覆われて見えないから、次に何処が狙われてるのか読み取れない」

ドクター・ブレインは、サイボーグ故に気を感じられない。なので対戦相手は、その動きを目で追うしかない。しかし、ドクター・ブレインは、対戦相手の目を見て攻撃を避けていた。そこで悟飯は、自分の目をドクター・ブレインに見せないようグレートサイヤマンの格好を選択していた。

「しかし、ドクター・ブレインは、どうして反撃しないんでしょう。ヘルメットを壊せば、悟飯さんの目が剥き出しになるのに・・・」
「ヘルメットを壊しても、すぐに俺が新しいヘルメットを悟飯に被せられる。それに、わざわざヘルメットを壊さなくても、悟飯を病気にすれば済む。ドクター・ブレインは、そう思って楽観視しているんだろう」

ドクター・ブレインは、悟飯から距離を置いた。そして、何度も攻撃を受けている割には笑みを浮かべていた。

「私に攻撃を当てて、少しは気が晴れたかね?私に恨みを抱いているだろうから、わざと攻撃を受けてあげたんだよ。私は寛大な心の持ち主だからな。でも、サービスタイムは終了だ。そろそろ終わらせよう。奴隷の分際で主人に逆らった罪を思い知るが良い」

ドクター・ブレインは、悟飯に近付き、キャンサーパンチを放った。パンチが悟飯に当たったが、悟飯もドクター・ブレインの右の頬にパンチした。

「くっ。親子共々に往生際が悪い。しかし、もう君は終わりだ。既に癌になったからな」

早くも勝ち誇ったドクター・ブレインは、悟飯が癌で苦しみ出すのを待ったが、一向に悟飯に異変が見られなかった。

「・・・おかしい。癌になっていないのか?ならばエイズにしてやる」

ドクター・ブレインは、当てた人をエイズにさせるエイズキックを放った。キックは悟飯に当たったが、悟飯もドクター・ブレインの胸部にキックした。

「病気にさせた直後は、どうしても隙が出る。そこを狙われるのは止むを得ない。いずれにしろ、これで終わりだ」

ドクター・ブレインは、悟飯が苦しみ出すのを再度待ったが、またしても悟飯に異変は見られなかった。度重なる予想外の事態に、珍しく取り乱した。

「何故だ!?どうして病気にならない!?」
「全宇宙一の頭脳を持っていると自慢してるくせに、そんな事も分からないのか?」
「何だと!?なら理由は何だと言うんだ!?私が二度も失敗したと言うつもりか!?」
「いいや。よく思い出してみろ。癌もエイズも俺は過去に患った。貴様等によってな」

ドクター・ブレインや彼の協力者達は、人体実験と称して、悟飯を含めた大勢の人達を病気にさせていた。病気にした後に治療し、それから別の病気にするという行為を繰り返していた。病気になれば、その度に体力が低下するから、治療方法が間違っていなくても、いずれ力尽きて死ぬ。その度に新たな実験体となる人達が連れて来られていた。悟飯だけは何年も生き延びたが、病気にされる度に苦しみ、苦しみの余り白髪にまでなった。

「俺は、病気にされたはずなのに、何故か苦しくない時があった。その時は怪しまれないよう苦しんでいる振りをした。そういう事が次第に増えてきた。原因は何かと思って確認してみると、病気にならないのは以前にも患った事がある病気だった。これは俺だけのケースかと思ったが、先程は父さんも心臓病にならなかった。あれを見て俺は確信した。サイヤ人は一度病気になると、体に抗体が出来て、二度と同じ病気にならないとな」

同じ病気には二度とならない。これは何もサイヤ人に限った話ではないが、サイヤ人の場合は特別だった。例えば、悟飯は肺癌にされた事があったが、それが完治した後は、胃癌にも皮膚癌にもならなかった。つまり一度癌を患った悟飯の体の中には、全ての癌に対する抗体が出来ていた。そして、悟飯が病気にならなかった時は、体力を回復させる絶好の機会だった。それによって新たな病気を患っても耐えられたし、研究所からの脱出を可能とした。

悟飯の話を聞いていた悟空は、ベジータに尋ねた。

「ベジータ。サイヤ人は同じ病気にならないって本当か?」
「知るか!そんな話は聞いた事がない。病気を患えば、サイヤ人でさえ死ぬ。完治したとしても、それ以降に同じ病気を患えば、悟飯の説が間違いだと証明出来るが、何も起こらなければ確認しようがない」

昔のサイヤ人達は、病気になっても治療法が分からず、自然に治るか死ぬかのどちらかだった。そもそも闘いに明け暮れるサイヤ人達の死因は、ほとんどが戦死の為、病気になって死ぬ例が余り無かった。医学の知識が無く、病気の種類さえ知らないサイヤ人達が、まさか二度も同じ病気を患わないとは知る由も無かった。

一方、悟飯は、語気を強めて話を続けていた。

「俺が許せないのは、医学の発展の為と称し、健康な人達を次々と病気にした事だ。そのせいで大勢の人達が死んだ。その数は、俺が知っているだけでも地球の全人口に匹敵する。現実には、それより遥かに多くの人達が殺されただろう。その人達の苦しみが貴様に分かるか!?」
「ふん。病気の種類は無数にある。君が患ってない病気だって多くある。そのどれかにすれば済む話だが、それを外見から発見するのは不可能だ。残念ながらな・・・」

ドクター・ブレイン自身が悟飯を病気にした場合は、どの病気だったか覚えている。しかし、協力者達が病気にした場合は、ドクター・ブレインが把握していない。そして、多忙なドクター・ブレインが悟飯に割ける時間は短かったので、必然的に協力者達が病気にしたケースの方が遥かに多かった。

ドクター・ブレインが人を病気にさせるには、ただ触れば良いのではなく、正しい手順を踏まねばならない。それには神経を使うし、その間は隙だらけになる。しかも、病気にさせる過程で肉体に直接ダメージを与え難い。思いっきり攻撃出来ないからである。それでも色々な病気を試せば、いずれは悟飯が経験した事ない病気にさせられるかもしれないが、ドクター・ブレインが病気にさせようとする度に悟飯が攻撃してくるので、リスクが大きかった。

「ええい!未経験の病気を探すなど面倒だ!これで仕留めてやる!」

業を煮やしたドクター・ブレインは、病気玉を作り、それを悟飯に向かって放った。一方の悟飯は、避けようとせず、病気玉を両手で受け止めたが、異変が起こらなかった。

「病気玉の病原菌も全て体験済みだー!」

悟飯は病気玉を上空に吹っ飛ばし、病気玉は宇宙の遥か彼方へと飛んで行った。必殺技を破られ、誇りを傷付けられたドクター・ブレインは、腸が煮えくり返る程に怒った。

「小僧!今のを吹っ飛ばした位で、良い気になるなよ!お前を病気にさせられないなら、普通に闘って殺すまでだ!」

ドクター・ブレインによる病気攻撃が通じないからといって、悟飯が有利になった訳ではなかった。ドクター・ブレインには卓越した身体能力があり、冷静さを欠いて多少の陰りはあるが、悪魔の頭脳も健在だった。まだ予断を許さない状況だった。

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