其の百十五 キラーウィルス

リマとレードを容易く倒したドクター・ブレインは、次に悟空を標的にした。しかも過去に悟空が患った心臓病に再び患わせると予告までする余裕振りだった。幾らドクター・ブレインが凄いとはいえ、これは完全に悟空を見下した態度だった。

「舐めやがって!やれるものなら、やってみやがれ!」

流石の悟空も黙っていられなかった。悟空は、仲間達を下がらせ、一人でドクター・ブレインと対峙した。そして、気を最大限にまで高め、ゆっくり身構えながら、どうやればドクター・ブレインを倒せるかを考えた。

ドクター・ブレインに触れられた時点で病気にさせられる可能性が高いので、殴り合いは出来ない。しかし、遠くから気功波の類で攻撃しても、バリヤーで防がれる。しかも、サイボーグ故に気が感じられないので、瞬間移動で距離を一気に縮める事すら出来ない。以上の事を踏まえ、危険を承知の上でドクター・ブレインに近付き、必殺技を用いて一撃で仕留めるしかないという結論に達した。

悟空は、ドクター・ブレインに向かって突撃した。そして、ドクター・ブレインから繰り出されたパンチを避けつつ龍拳を放った。対するドクター・ブレインは、身を翻して龍拳を躱した。そして、技を出した直後の悟空の左胸に触れた。この場に居る誰もが悟空は心臓病になったと思った。しかし、当の悟空は、怯まずにドクター・ブレインを殴り飛ばした。その後も攻撃を続けたが、ドクター・ブレインが回避に専念したので、一向に当たらなかった。

「心臓病になっても闘志を失わないとは大したものだ」
「ああ。どうせ死ぬなら、お前を道連れに死んでやろうと思ってな」
「やれやれ・・・。そういう者を相手にするのは厄介だな」

ドクター・ブレインは、一切反撃せず、悟空の攻撃を避けながら、悟空が弱るのを待った。しかし、すぐに衰えるはずの悟空の勢いが、何時まで経っても衰えなかった。

「心臓病にされたと思ったけど、体の調子は良いままだぞ。さては失敗したな?」
「失敗だと?完璧である私が、失敗するはずあるまい。それでも君が心臓病になっていないなら、何か理由があるはずだ。考えられるのは、君の体には心臓病に対する抗体がある。以前に心臓病を患ったからだろうな」
「へー。じゃあ俺は心臓病になってないんだ。そいつはラッキーだったぜ」

悟空は、心臓病を患っていなかった。これは悟空のみならず、観戦していた仲間達も安堵した。しかし、ドクター・ブレインは、全く動じていなかった。

「ラッキー?それはどうかな?君の体に耐性があるのは心臓病に対してだけで、それ以外の病気は別だ」

ドクター・ブレインが動じてない理由は、悟空を殺せる病気が無数にあるからだった。それよりも問題視したのは、自分が心臓病になったと思った悟空が攻撃を続けた事だった。発病してから死ぬまでの時間は人によって違うが、頑丈な悟空を即死させる病気は流石に無い。そして、悟空が病気になっても闘いを止めず、道連れを狙って自爆する可能性すらあった。しかも悟空が死んだら、残された仲間達が決死の覚悟で攻めてくるだろう。死を覚悟した者に恐怖心は無い。

ドクター・ブレインは、闘いに見切りを付けた。これ以上悟空達と戦っても、しぶとく食い下がられるだろうし、万一の事だって起こらないとは限らない。それよりは、そろそろ遊びを止めにして、兼ねてからの計画を実行する事にした。そこで、まずは交戦中の悟空から距離を置いた。

「私は、今でこそ惑星ジニアに常駐しているが、以前は遠征して多くの銀河を征服してきた。私や私の協力者達は、どうやって人々を殺していたと思う?」
「知るか!どうせ病気にして殺してたんだろ」
「正解だが、一人一人を病気にしていたら時間が掛かり過ぎると思わないか?かと言って病気玉だと威力が大き過ぎて、星ごと滅ぼしてしまう。答えはこれだよ」

ドクター・ブレインは、白衣のポケットから、また何かを取り出した。それは固く栓がしてある試験管だった。その試験管の中には、何も入ってないように見えた。

「この試験管の中には、私が開発したキラーウイルスが入っている。試験管の栓を取ると、瞬く間にキラーウイルスが星全体に蔓延する。そして、キラーウィルスに感染した者の生存率はゼロパーセント。つまりキラーウイルスを飛散すると、その星に住む全ての生物が感染して生き絶える。知的生命体以外の動物や植物も殺してしまうので、生物学者であるドクター・キドニーは、キラーウイルスの使用に反対していたがな」

ミレニアムプロジェクトは、ジニア人の役に立ちそうもない知的生命体のみ殺害の対象とし、動植物は生かしておくというものだった。これはドクター・キドニーが主張して決まった事で、多くのジニア人達は順守していた。しかし、ドクター・ブレインは、キラーウイルスを使って無差別に殺していた。速く殺す事のみ重視していたので、選別まで考えなかった。その事にドクター・キドニーから抗議されたが、平然とキラーウイルスを使用し続けていた。

「私がこの栓を抜けば、キラーウイルスは惑星ジニア中に広まり、君達は全員死ぬ」
「止めろ!そんな事をすれば、この星に居る他のジニア人だって死ぬんだぞ!」
「それがどうかしたかな?」
「何だと?・・・そうか!ドクター・ストマックが言ってたぞ!お前は、ジニア人のクローンを作る事を計画し、それに反対したジニア人を皆殺しにするつもりだとな!」

悟空は、ドクター・ストマックの言葉を思い出した。

「なまじ頭が良いだけに、こちらがどんな計画を立てようと、すぐに気付いてしまうな。しかも、君達に話してしまうとは・・・。私も随分と嫌われたものだ」
「何を悠長な事を言ってるんだ!ウイルスに感染したら、お前だって死ぬんだぞ!」
「私は、ワクチンを接種している。キラーウイルスには感染しない」
「くっ。幾ら話しても無駄か・・・」

悟空は、ドクター・ブレインから試験管を奪おうと飛び掛かったが、ドクター・ブレインに蹴り飛ばされた。

「安心したまえ。今のは、ただの蹴りだ。病気にはしていない。病気になろうがなるまいが、どうせキラーウイルスで死ぬからな」

ドクター・ブレインは、邪悪な笑みを浮かべつつ、試験管の栓を抜こうとした。ところが、フリーザとセルが慌てて制止した。

「ま、待ちなさい!ドクター・ブレイン。いや、ドクター・ブレインさん。私とセルがミレニアムプロジェクトに参加しましょう」
「悪くない話だろ?私達の力は、かなり役に立つぞ。だから私達にもワクチンを・・・」

命惜しさにフリーザとセルが土壇場になって裏切ろうとした。悟空達は、呆れて怒る気すらしなかった。

「君達の協力は無用だ。君達全員の細胞は、君達が惑星ジニアに到着した後、すぐにスパイロボットを使って採取した。肉眼では見えない超小型のロボットだから、気付かないのも無理はない。つまり君達全員のクローンも作れるのだよ。そして、出来上がったクローンには、決して裏切らないよう教育する。君達と違ってな。では、さらばだ」

ドクター・ブレインは、フリーザとセルを冷たく突き放すと、遂に試験管の栓を抜いた。悟空達は、一斉に息を止めたが効果なく、キラーウイルスに感染してしまった。悟空は、ドクターブレインに飛び掛かろうとしたが、ふらついて千鳥足になった。ドクター・ブレインが何重にも見え、どれが本物か分からなかった。やがて仲間達が次々と倒れた。裏切ろうとしたフリーザやセルが倒れた。悟天が倒れた。最後に悟空が倒れた。

「これで私の邪魔をする者は居なくなった。私に反対したジニア人達も死ぬ。これからはクローンによる真のミレニアムプロジェクトが始まるのだ。忙しくなるぞー。ふはははは・・・」

ドクター・ブレインは、クローン計画に反対したジニア人達を殺そうと企んでいた。しかし、何の落ち度も無いのに殺す訳にはいかず、しかも自分の企みに気付く者まで居た。そこで目を付けたのが悟空達だった。自分の企みに気付いたジニア人を、悟空達に順に倒させる。そして、惑星ジニアに悟空達が来たら、それを口実にクローン計画に反対した全てのジニア人を呼び集める。最後にキラーウイルスで全員殺す。これがドクター・ブレインの陰謀の全貌だった。

ドクター・ブレインは、上機嫌で飛び去った。悟空は、薄れゆく意識の中で呟いた。

「済まねえ、悟飯。ここまで来て助けられないなんて・・・。本当に済まねえ」

悟空は、悟飯を助けられなかった自分の無力を恨みつつ、意識を失った。

コメント

タイトルとURLをコピーしました