遂に惑星ジニアに到着し、ジニア人のリーダーであるドクター・ブレインと対峙した悟空達。そのドクター・ブレインさえ倒せば悟飯を助け出せる。どんなに手強い相手か知らないが、自分達の力ならどうにかなる。この時の悟空達は、まだ状況を楽観視していた。
「さてと、それでは始めようか。まずはリマ君。君の相手からしよう」
「どうして俺の名前を知っているんだ?」
「君だけではない。この場に居る全員の名前を知っている。事前に孫悟空君や孫悟飯君の記憶データを見てきたからな。君が一番手強いと思ったからこそ、君を指名したのだよ」
「ほう。俺が最も強いと見抜いたか。流石に頭だけは良いな」
血気に逸るリマがドクター・ブレインの指名に応じないはずがなく、喜び勇んで前に出た。しかし、すかさずピッコロが制止した。
「待て、リマ。ドクター・ブレインがお前を指名したのは、何か理由があるはずだ。まだ相手の強さも分かってないし、お前は大事な戦力なんだ。軽はずみに動くな。迂闊に闘えば、奴の術中に陥る。ここはフュージョンして闘った方が・・・」
「奴は『合体したければすれば良い』と言ったんだぞ。ここで合体すれば、それこそ奴の術中に陥ると思わないか?」
ピッコロは、反論出来なかった。珍しくリマがピッコロを遣り込めた。
「ピッコロ、行かせてやれ。リマの良い所は、どんな相手にも物怖じしねえ事だ。心配は要らねえ。リマが危なくなったら、すぐにオラが助けに行くからさ」
悟空は、ドクター・ブレインの強さを探る為に自分が先陣を切って闘おうと考えていた。リマが代わりに闘ってくれるなら、それならそれで良かった。相手の事を何も知らず、いきなり奥の手であるフュージョンを使うのだけは避けたかった。こうして悟空の後押しもあり、リマが単身でドクター・ブレインと闘う事になった。
「ふっふっふ・・・。大魔王の力を見せてやるぞ」
「生憎だが君の見せ場は無い。私のパンチ一発で死んでしまうからだ」
「何?一発のパンチで俺が死ぬだと?・・・俺を舐めるなー!」
激昂したリマは、猛然とドクター・ブレインに向かって飛び掛かった。しかし、リマが怒涛の勢いで攻撃を次々と繰り出しても、ドクター・ブレインが素早い動きで攻撃を全て避けた。焦れたリマがメタモルフォーゼをしてから改めて連続攻撃しても、結果が変わらなかった。
「おのれー!すばしっこい奴め!これならどうだ!」
リマが口から炎を吐いたが、対するドクター・ブレインは、前屈みになって炎を避け、リマに急接近してパンチを繰り出した。パンチはリマの体に当たったが、リマは平然としていた。
「何が『パンチ一発で死ぬ』だ!こんなパンチを喰らっても、痛くも痒くもない!」
「ふむ。そろそろ私の自己紹介をしようか。私の知能指数は全宇宙最高の二万。そして、私の得意分野は医学。宇宙には無数の病気があるが、その全ての病気を治せると自負している」
「何を言ってるんだ?戦闘中に自慢話をしてどうする?自分は貴重な存在だから殺さないでくれとでも・・・うぐっ。お、俺の体がおかしい・・・。な、何かしたのか?」
突然、リマが不調を訴えた。しかし、ドクター・ブレインは、構わず話を続けた。
「私は、病気の治療をしていく内に知識を更に深め、病気を治すばかりか逆に引き起こす事も可能とした。人体にどういう影響を与えれば、病気を発症させられるかを知ったという事だ。それを私は武器にしている。素人目には、私が触れただけで病気になったと思うだろう。リマ君。君にお見舞いしたパンチは、『キャンサーパンチ』という。威力自体は大した事ない。ただし、当たれば癌になる。しかも特別な癌で、そろそろ全身に転移したはずだ。通常の治療では助からない」
リマは、ドクター・ブレインの話を聞きながら脂汗を流していた。話が終わると、立っていられなくなって片膝を突いた。気が急激に減り、メタモルフォーゼが解けてしまった。リマの異変を見て、餃子が急いでリマの元に行って回復を試みた。ところが、それでも体力が減る一方だった。回復が効かないので、明らかに病気になっていた。仕舞いには片膝立ちすら出来なくなり、仰向けに倒れてしまった。悟空やピッコロ、天津飯がリマの元に駆けつけた。
「リマ!大丈夫か!?しっかりしろ!」
「お、俺は大魔王なんだ。これから魔界でやらなくちゃいけない事が、まだたくさんあるんだ。こんな所で死ぬ訳には、死ぬ訳にはいかないんだ・・・。兄貴。何処に居るんだ?兄貴」
衰弱したリマは、いよいよ死を迎えようとしていた。そして、兄のルーエを譫言で呼んだ。そのルーエにそっくりの天津飯は、リマの手を握り締めて応えた。
「リマ!俺は、ここに居るぞ!」
「兄貴・・・。俺は大魔王として立派に魔界を治めてきたかな?」
「ああ!お前は俺の自慢の弟だ」
「そうか・・・。良かった」
リマは、微笑みながら息絶えた。余りにも突然で、呆気ない最期だった。単純な性格ではあったが、決して悪い男ではなかった。才能があり努力家で、長い魔界の歴史の中で数える程しかいない大魔王に就任しても、兄を敬慕し続けていた。責任感があり、魔界の将来を常に憂いていた。まだ未熟な面はあったが、将来有望な若い王の惜しまれる死であった。
悟空は、リマの死を悲しむよりも、申し訳ない気持ちで一杯だった。リマとジニア人との間には何の因縁も無く、悟空達と関わらなければ、リマがジニア人と闘う事はなかった。リマには今後も魔界を統治する責務があり、本人は乗り気じゃなかったのに説得して協力してもらったのだから、リマを無事に魔界に帰す責任があった。それなのに側に居ながらリマを助けられなかった。
一方、ドクター・ブレインは、リマの死体を見下ろしながら、得意そうに語りかけた。
「リマ君。安心したまえ。君に代わって私が魔界を支配しよう。魔界で暮らす住人の安全は、優秀かつ従順な者であれば保障しよう。それ以外の者は存在価値が無いから、きれいに掃除してあげるよ」
天津飯は、リマの死に大きなショックを受けていた。リマの部下という立場ではあったが、これまで理不尽な命令を受けた事はなく、むしろ色んな面で世話になっていた。何よりも悟空への挑戦を諦めていた自分に希望を与えてくれた。そんな大恩あるリマを己の寿命が尽きるまでサポートしていこうと心に誓っていた。そのリマを死に追い遣ったドクター・ブレインに対し、怒りを爆発させた。
「黙れ!貴様には魔界を支配する所か、魔界に足を踏み入れる資格すら無い!」
「私に不服があるなら、遠慮せずに掛かってきたまえ。ただし、死を覚悟してな。以前、孫悟飯君は無謀にも私に立ち向かってきたが、彼を白血病にして早々に黙らせた。先程は君達に惑星ジニアの場所を教えた裏切り者のドクター・ラングを肺結核にして処刑した」
「悟飯をそんな目に遭わせたのか!?それに仲間のドクター・ラングまで・・・」
病気に関する膨大な知識を武器とするドクター・ブレイン。かつてないタイプの強敵の出現に、悟空達は戸惑いを隠せなかった。


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