万全な状態のロボベジットと、疲労困憊な悟空達。回復したくても、ロボベジットがそれを見逃すはずがなく、闘っても勝ち目が無いのは明らかだった。かくなる上は最後の力を振り絞ってロボベジットを足止めし、その間に皆を逃がすしかないと悟空は考えた。ところが、いきなり天津飯が歩き出し、ロボベジットの目の前で立ち止まった。
「て、天津飯!何をしているんだ!?殺されっぞ!」
「悟空よ。元素戦士との闘いの折、お前に『力を貸りたい。おめえ達の力が必要なんだ』と言われた。俺は心底嬉しかった。だから俺は、魔界に戻った後、お前に勝つ為の修行ではなく、お前の役に立つ為の修行に切り替えた。今こそ修行の成果を見せてやる!絶対に俺に近付くなよ!」
天津飯は、悟空の方を見て微笑みながら話し、それから再びロボベジットと向かい合った。一方、ロボベジットは、天津飯が何をするつもりか知らないが、それで自分を倒せるはずがないと高を括っていた。
「何のつもりか知らんが、目障りな貴様が前に出てくれるとは都合が良い。真っ先に殺してやる」
ロボベジットは、拳を振り上げた。対する天津飯は、印を結んで目を閉じた。その瞬間、天津飯から気を感じられなくなった。まるで石像にでもなったかの様に呼吸が止まり、身動ぎしなくなった。そして、何とロボベジットまで同様に動かなくなった。
「ど、どうなってるんだ?天津飯もロボベジットも動かなく・・・」
「近付いちゃ駄目!」
悟空が不用意に天津飯に近付こうとすると、餃子が大声で制止した。普段は無口な餃子が大声で呼び止めたので、悟空は、慌てて立ち止まり、餃子の方を振り向いた。餃子は、悟空の傍に行って回復させながら、天津飯の新技について語り出した。
「天さんは、回復する時間を稼ぐ為、新たに会得した『静止拳』を使って自分とロボベジットの時間を止めた。もし今の天さんに近付くと、同様に時間が止まる。だから今は天さんに近付いちゃ駄目。そんなに長く時間を止められないから、全員の回復は無理だけど・・・」
「時間を止めただって!?凄え技だな」
「時間を止める奴なら以前にも居た。もっとも、そいつは自分以外の時間を止めたがな」
ベジータが言う以前に居た時間を止める者とは、ギニュー特戦隊のグルドである。ただし、グルドの技とは違い、使用者の時間まで止めてしまう天津飯の静止拳は、一対一の戦闘では使い難い技である。しかし、味方が複数居る中での戦闘で、静止拳を知らない敵の動きを封じる際には無類の働きをする。打倒悟空を目指していた頃の天津飯だと見向きもしなかったが、悟空達を支援すると決めてからは一生懸命修行して会得した技だった。
静止拳は、使用者の半径数メートル圏内に居る全ての時間を止める。生物は言うに及ばず、流れる水や燃え盛る炎まで止めてしまう。そして、更に修行を積めば、より広い範囲、より長い時間を止められるようになる。
「そんな事よりも全員の回復が無理なら、俺とカカロットだけ回復させろ。あれから随分と時間が経っているから、もうフュージョンが出来るはずだ」
餃子は、ベジータに言われるがまま、悟空とベジータだけ回復させた。それからリマが体外に出ると、満足した表情で倒れた。
「よーし。今の内にフュージョンすっぞ」
「待て、悟空。わざわざフュージョンしなくても、今の無防備なロボベジットに気で攻撃すれば倒せるんじゃないのか?天津飯には当てないよう注意してな」
「駄目だ。ロボベジットに気で攻撃しても、当たる前に止まる。そして、ロボベジットが動き出すと、同時に動く。しかし、勘の鋭いロボベジットに確実に当たるとは限らんぞ」
ピッコロの思い付きの作戦は、リマに駄目出しされた。気でロボベジットを攻撃しても、当たる前に止まり、静止拳の効果が消えればロボベジットと同時に動き出す。動き出したロボベジットは、不意の攻撃に対処出来ずに喰らうかもしれないが、体が素早く反応して避けるかもしれない。ロボベジットが気による攻撃を避けるだけなら良いが、弾き飛ばせば近くに居る天津飯に当たってしまうかもしれない。どうなるか分からない攻撃で、仲間を危険に晒すのは本意ではなかった。
気による攻撃を避け、当初の予定通り悟空とベジータがフュージョンした。それから天津飯とロボベジットの時が再び動き出した。動き出したロボベジットは、すぐに異変に気付いた。体力が回復したゴジータが居たからである。それも先程までの超サイヤ人5の姿ではなかった。ゴジータの顔と手の平と足の裏を除く体の表面が毛に覆われ、超サイヤ人3の様に顔から眉毛が消えていた。更に体の周囲を飛び交う火花の量が倍に増えていた。ゴジータは、超サイヤ人6に変身していた。
「な!何が起きた!?何時の間にフュージョンしたんだ!?それに超サイヤ人6にどうしてなってるんだ!?」
「ふっ。俺は、超サイヤ人6になれなかったんじゃねえ。元々なる力はあったが、今まで試さなかっただけだ。やってみたら、意外と簡単になれたぜ」
悟空とベジータは、フュージョンしてゴジータになると、すぐに超サイヤ人6への変身を試みた。そして、いきなりの試みにも拘らずに変身に成功した所で、天津飯の静止拳の効果が消え、天津飯とロボベジットが同時に動き出していた。
「ちっ。どうやら天津飯の罠に掛かって時間を止められている間、貴様に回復と変身を試みる時間まで与えてしまったようだな。まあ良い。合体時間に限りある貴様が、エネルギーを大量に消耗する超サイヤ人6になると、更に合体時間が短くなるはずだ。俺の見立てでは、せいぜい二・三分だろう」
「だったら、その間にけりを付けてやる!」
ロボベジットは、擬似超サイヤ人6に変身し、ゴジータとの戦闘を開始した。天津飯は無論、他の者達も巻き添えを喰わないようにする為、疲れた体に鞭打って、その場から離れた。
ゴジータは、正面から突っ込んで回し蹴りしたが、ロボベジットは左腕でガードした。次にロボベジットはパンチしたが、ロボベジットは右手で防いだ。今度はロボベジットがパンチしたが、ゴジータは腰をかがめて避けた。それから双方ともスピードをアップし、どちらも一歩も譲らない激しい攻防戦が繰り広げられた。
この戦いを観戦していたピッコロは、ある異変に気付いた。
「先程の闘いでは、お互い超サイヤ人5の状態だと、ゴジータの方が強かった。つまり同じ条件下ではゴジータの方が上だ。しかし、今は同じ超サイヤ人6なのに互角だ。多分ロボベジットは、元気玉を喰らって死に掛けてから復活したので、パワーが大幅に増したんだ。ま、まずいぞ!これでは合体時間内にロボベジットを倒すのが難しい!」
短時間での決着を望むゴジータは、ロボベジットから離れ、フルパワー状態でかめはめ波を放った。ロボベジットは、それを避ける事もバリヤーで防ぐ事も出来たが、敢えて自分も全力でかめはめ波を出して応戦した。ゴジータのエネルギーを多く使わせれば、それだけゴジータの合体時間が短くなるとロボベジットが判断したからである。それがロボベジットの命取りとなった。
二つのかめはめ波が双方の中間地点で激しく衝突した。力は正に五分と五分で、どちらも一歩も譲らぬ展開となった。ゴジータとロボベジットは、一歩も動けずにかめはめ波を出し続けたが、この状況が続けば、ゴジータの合体がすぐに解ける。そうなればロボベジットの勝利は確実だった。しかし、ロボベジットにそう思わせるのがゴジータの狙いだった。
この時、天津飯は、ゴジータを見ず、ロボベジットだけ自分の視界に入るよう近付いた。それからロボベジットに真実の目を使い、ロボベジットを変身前の状態に戻した。こうなると超サイヤ人6のままのゴジータが断然有利となり、均衡していたかめはめ波対決は、ゴジータに軍配が上がった。かめはめ波を出しているロボベジットは、バリヤーを張れずに押し込まれ、かめはめ波を喰らった。そして、消滅した。その直後にゴジータのフュージョンが解けた。
これは事前に打ち合わせた作戦だった。動きが素早いロボベジットの足を止め、真実の目でロボベジットの変身を解くには、互いに気による必殺技を出し合って均衡状態となった時が最適だった。これならゴジータとロボベジットが離れた場所に居るので、ゴジータの変身まで解かずに済む。悟空は、そういう場面になったら、すぐに真実の目を使ってくれと天津飯に頼んでいた。
悟空とベジータは、すぐにドクター・ラングの研究所に向かって飛行した。他の者達も後に続いた。ロボベジットの敗北を知ったドクター・ラングが逃げる前に彼を捕らえ、惑星ジニアの場所を聞きだす為だった。ところが、悟空達が研究所の前に降り立つと、ドクター・ラングが単身で外に出てきた。
「逃げずに堂々と姿を現すとは思わなかったぞ。素直に惑星ジニアの場所を言ってくれるのか?」
「ああ。それが戦闘前の約束だったからな。ただし、君達が惑星ジニアに行っても、そこに居るブレインに殺されるだけだ。あいつには誰が闘っても勝てない」
ドクター・ラングは、こう前置きしてから、惑星ジニアの場所を話した。長い年月と旅路の果てに、ようやく惑星ジニアの場所を知った悟空達だが、心中は複雑だった。悟飯を助けるまで後一歩の所まで来たが、そこに到達する前に未知の強敵が控えているからである。


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