其の百七 超サイヤ人6

ゴジータとロボベジットは、同時に身構え、睨み合った。そして、先ずゴジータが右手でパンチした。ロボベジットがパンチを弾くと、ゴジータが左手で手刀を繰り出した。ロボベジットは、一歩下がって手刀を避け、それから一歩踏み込んで右手でパンチした。ゴジータは、ロボベジットの右手首を握り締めてパンチを回避した。更にロボベジットを投げ飛ばそうとしたが、ロボベジットが左手から気功弾を出したので、手を放して気功弾を避けた。

ゴジータが回転蹴りをすると、ロボベジットが飛び上がって回避した。ゴジータがロボベジットに向けて気功波を出すと、ロボベジットが両腕でガードした。ゴジータがロボベジットの背後に回り込んで蹴りを試みたが、ロボベジットが後ろを振り向いて蹴りを両手で受け止め、ゴジータを投げ飛ばした。ゴジータは、素早く体勢を入れ替え、ロボベジット目掛けて突撃した。ロボベジットは、側面に飛び跳ねて躱したが、ゴジータの伸ばした腕が腹部に命中した。

ロボベジットは、吹っ飛ばされたが倒れず、踏ん張ってゴジータの追撃を警戒した。ゴジータは、距離を詰めて攻撃を続けようとせず、ロボベジットと向き合った。

「やるな。流石ゴジータだ」
「お前もな。ベジットの名前を冠するだけの事はある。準備運動とはいえ結構楽しめた。そろそろ本気で行かせてもらうぞ!」

ゴジータもロボベジットも変身前とはいえ、双方共に本気からは程遠い力で闘っていた。ゴジータの本音を言えば、もう少し時間を掛け、二度と実現しない頂上対決を存分に楽しみたかった。しかし、合体していられる時間が限られているので、早くも本気で闘う事にした。

ゴジータは、超サイヤ人5に変身した。同じくロボベジットも超サイヤ人5ではなく、超サイヤ人5もどきに変身した。そして、お互い気を大幅に高めた所で戦闘を再開した。

ゴジータは、飛び蹴りしたが回避された。しかし、素早く体の向きを変えてロボベジットの顔面を蹴飛ばした。ロボベジットは、すぐさまパンチを出して反撃したが、ゴジータは、左手でパンチを受け止め、ロボベジットの額に頭突きした。ロボベジットの額から血らしきものが流れ出た。ゴジータは、何度も頭突きし、ロボベジットの額から血らしきものを噴出させた。ロボベジットは、ゴジータの腹部に膝蹴りし、ゴジータが思わず手を離すと、ゴジータから距離を置いた。

ゴジータは、間髪入れずにロボベジットとの距離を詰め、頭を蹴ると見せかけて腹部を蹴った。続けてロボベジットの頭に肘鉄を喰らわせた。ロボベジットは、悶えながらもゴジータから離れた。

「本来ならゴジータよりベジットの方が強いんだが、半年の差は予想外に大きかった。この半年の間、孫悟空もベジータも必死に修行したからな。これなら合体が解ける前に決着がつくかもしれない。それが無理でも、後の戦闘が有利になる様に大ダメージを与えれば良い」

戦闘前のゴジータは、ロボベジット相手に多少は有利に闘えるかもしれないが、流石にここまで優勢に闘えるとは思ってなかった。これはゴジータにとって嬉しい誤算だった。しかし、何故かロボベジットは笑っていた。

「ふっふっふ・・・。大した強さだ。だが、勝った気でいるのは早いぞ。全宇宙でも三本の指に入る頭脳を持つドクター・ラングが、この状況を予想していなかったとでも思ったのか?」
「ほう。だったらドクター・ラングは、この劣勢をどうやって挽回させる考えだ?」
「なーに、簡単な事だ。超サイヤ人6になれば良いのさ」
「何だと!?・・・こ、この気は!?」

ロボベジットが気を溜めると、ゴジータが思わず狼狽える程、膨大に気が上昇した。それと同時に、ロボベジットの体に変化が生じた。顔と手の平と足の裏を除く体の表面が毛に覆われ、超サイヤ人3の様に顔から眉毛が消えた。その姿は、体の大きさこそ違うが、顔以外が大猿に酷似していた。更に体の周囲を飛び交う火花の量が倍に増えた。ゴジータ及び後方で観戦していたピッコロ達がロボベジットの変貌に驚いたのは、語るまでもなかった。

「これが超サイヤ人6だ。正確には擬似超サイヤ人6と言うべきかな?」
「ドクター・ラングは、孫悟空の記憶を元に、お前を造ったんだろ?だから超サイヤ人5にまで変身するのは理解出来る。しかし、孫悟空は、まだ超サイヤ人6になれないばかりか、見た事すらない。なのに、どうして超サイヤ人6にまでなれるんだ?もっとも、それが本当の超サイヤ人6と瓜二つなのかどうか定かでないが・・・」

悟空の記憶に超サイヤ人6の姿形は無い。本物のサイヤ人ならともかく、幾ら強くても所詮は人工物の存在であるロボベジットが擬似とはいえ未知の超サイヤ人になれるはずがない。ゴジータの疑問は、至極当然だった。その答えをロボベジットは、得意気に語り始めた。

「そういえば言い忘れていたな。俺を造ったのは、ドクター・ラングだけではない。ドクター・ラングと同等の頭脳を持つドクター・ハートが共同開発した。ドクター・ハートは、孫悟飯の体からサイヤ人の強さを調べていた。その過程で超サイヤ人の各形態の情報を入手した。そこから超サイヤ人6の強さや体の変化を予測した。その予測を俺を造る際に応用した」

悟空の記憶や強さのデータを入手しても、それだけではデータ入手時点での悟空の強さを元にしたロボベジットしか造れない。データ入手後も悟空達は修行して強くなるし、何時ロボベジットが悟空達と闘うか分からなかった。そこでロボベジットが劣勢になっても、それを打破する策として、一段階上の超サイヤ人にさせる事をドクター・ラングは思い付いた。そして、悟飯の体を通してサイヤ人の強さを研究していたドクター・ハートにより、それが実現可能となった。

「お喋りは、ここまでだ。早速試させてもらおうかな。超サイヤ人6の強さを」

ロボベジットは、一瞬でゴジータの背後に回りこんだ。気配を察知したゴジータが腕を後ろに振って攻撃したが、避けられた。ロボベジットは、振り返ったゴジータの顔面を殴った。ゴジータは、殴り返そうとしたが、またもや避けられ、腹部を蹴られた。ならばと一旦後退し、気を溜めてからビッグバンかめはめ波を放ったが、ロボベジットは、それを片手で弾き飛ばした。早くも形勢は逆転していた。それだけ超サイヤ人6と超サイヤ人5の力の差が大きかった。

ゴジータの劣勢に、観戦していたピッコロ達の表情は青ざめていた。

「このままでは不味い!こうなったら、ゴジータも超サイヤ人6にならなければ・・・」
「いや。ゴジータに超サイヤ人6になる力はあるかもしれないが、まだ試した事すらないのに、ぶっつけ本番では無理だ。それにロボベジットが、そんな時間を与えるはずがない。それよりも真実の目でロボベジットの変身を解け!奴の傍に居るゴジータの変身も解いて良い。お互いに変身していない状態なら、力で勝るゴジータが勝つ!」

天津飯は、ピッコロの言に従い、真実の目でロボベジットの変身を解こうとした。ところが、ロボベジットが天津飯の額の目を狙い、遠くから剣の形をした気を放った。ロボベジットは、目の前のゴジータだけに意識を集中しておらず、観戦していたピッコロ達の動向にも気を配っていた。天津飯は、慌てて体を反らして貫通こそ免れたが、瞼を切られてしまった。その結果として天津飯の額の目が閉じ、真実の目が使えなくなった。

天津飯の真実の目は、ロボベジットにとって危惧すべき技の一つだった。ドクター・ラングは、擬似超サイヤ人6の変身を解かれる事を懸念し、天津飯を殺すようロボベジットに指示していた。そして、ロボベジットは、自分の力に慢心せず、確実な勝利の為にドクター・ラングの策を受け入れていた。敵はロボベジットだけではなかった。この場に居なくても、ドクター・ラングの頭脳は悟空達にとって大いなる脅威だった。

天津飯の真実の目を封じたロボベジットは、続いて餃子に向けて光線を放った。その光線の余りの速さに、餃子は、反応すら出来なかった。ロボベジットは、早い段階で餃子を消してしまおうと考えていた。これもドクター・ラングの入れ知恵だった。かつてのフリーザにとってのデンデがそうであったように、仲間の傷を回復出来る餃子は、敵方であるロボベジットにとって厄介な存在だった。

ところが、別の角度からエネルギー波が飛んできて光線に当たり、餃子は危うく命拾いした。ロボベジットは、エネルギー波が飛んできた方角を見ると、そこには到着したばかりのレードが居た。レードは、地球に送り込んだ科学者兼スパイ達から悟空達の情報を随時受け取っていたので、餃子が他人を回復させる能力を持つ事を既に知っていた。そして、そのレードの背後には、悟天やフリーザやセルが立っていた。

「役者が揃ったか・・・。ふっ。纏めて消すまでだ」

コメント

タイトルとURLをコピーしました