其の九十三 元素戦士掃討戦

迫り来る元素戦士の大群を迎え撃つ為、悟空・ベジータ・トランクスは超サイヤ人5に変身した。ピッコロは重いマントとターバンを脱ぎ、ウーブは魔人化した。リマは四身の拳を使って四人になり、更に変色拳で四人とも肌の色を黄金色にした。黄金色は、エネルギーの消費量が多いが、全ての能力を最も上昇させる。各々が初手から全力で元素戦士の軍団に立ち向かった。

一方、パンと餃子は後方に下がっていた。これは事前に決めていた作戦で、もし真実の目が何らかのトラブルにより不発で、元素戦士と全面衝突する事になったら、パンと餃子が後方支援するように指示されていた。二人は、悟空達の内の誰かが傷付き倒れたら、その者を餃子が回復し、それが終わるまでパンが無防備状態の餃子と怪我人を守る段取りとなっていた。

戦闘が始まった頃、天津飯を連れ去ったボラリスは、基地の中に入っていた。ボラリスの体は光を失い、ただの白色となった。元からボラリスの全身は光を放っていたのではなく、天津飯の真実の目を封じる為に一時的に光っているだけだった。ボラリスは、天津飯を抱えたまま司令室に入り、そこでドクター・ストマックと対面した。

「只今、戻りました。確かに光り輝いていれば、元の金属に戻されずに済みました。流石はドクター・ストマック。よくその事に気付きましたな」
「簡単な事だ。目を使って何かをする場合、必ず裸眼でなければならない。相手の目を見て意のままに操る催眠術を掛けるのが、その良い例だ。サングラス越しでは催眠術の効果が無い」

地球での闘いを観戦していたドクター・ストマックは、光で天津飯の視界を封じれば、元素戦士を元に戻す術を使えなくさせると思い付いた。その為に元素戦士ボラリスを形成する元素コアに、発光する能力をプログラムで追加していた。

「ところで、闘いの方は、これもドクター・ストマックの読み通り、こちらの旗色が悪いですな。元素戦士達が次々と倒されています」
「あのジンすら倒した連中だ。従来の元素戦士では束になっても勝てないと考える方が自然だろう」

ドクター・ストマックとボラリスは、目の前にあるモニターを通して、悟空達が元素戦士達を相手に優勢に闘っているシーンを観ていた。しかし、二人とも焦っている様子が微塵も無かった。

その頃、悟空達は元素戦士を次々と倒していた。先日、地球に現れた二人の元素戦士より強いのが居なかったのが幸いした。しかし、多勢に無勢で、悟空達が攻撃を受ける事も度々あった。

悟空達が火や水の元素戦士を倒す際、わざわざ宇宙に吹っ飛ばしてから倒したので手間が掛かった。ここは地球でないから、大地が焦土と化しても水没しても問題無かった。しかし、元素コアを製造する為に協力者として働かされていた者達に被害が及ばぬよう気を配っていた。一方、火や水以外の木や金や土の元素戦士は、地上で倒しても問題無いので、宇宙まで吹っ飛ばさずに倒していた。その為に周囲は木や金が散乱し、地形が変わる程の土が盛られた。

後方で観戦していたパンや餃子を狙う元素戦士も居た。しかし、そういう者は、見えない結界に捕らえられて動きを封じられ、結界の内側からパンの衝撃波で結界の外に押し出されていた。全方位の結界を何重にも張って強固にする程の時間的余裕があった訳ではないので、元素戦士が結界に捕らえられても、時間さえ掛ければ容易に破れただろう。だから元素戦士に結界を破られる前に、パンが手を触れずに元素戦士を外に押し出していた。

戦闘が進む中、ピッコロが傷付いて倒れた。餃子は、テレポーテーションでピッコロの元に移動し、回復を開始した。パンは、唯一結界を張っていない箇所を通って結界の外に出、二人を警護した。そして、完全回復して立ち上がったピッコロは、すぐに戦闘に復帰した。一方、パンと餃子は、先程の結界が張られている場所にテレポーテーションで戻った。

餃子は、周辺の一箇所だけ故意に結界を張らなかった。そして、その一箇所を知っているパンが、そこを通って結界の外側に出ていた。結界は目に見えないし、結界が張っていない箇所を示す目印など当然無かった。何処に結界が張られていて、何処に結界が張られていないかは、見ただけでは分からなかった。

ウーブは、負傷すると魔力を使って回復していたが、その魔力が枯渇して人間の姿に戻ると、元素戦士の集中攻撃を浴びて倒れた。ウーブの危機に逸早く気付いたパンは、結界の外に出てウーブを警護し、その間に餃子がウーブの元に移動した。そして、傷ばかりでなく体力や魔力も回復してもらったウーブは、再び魔人化して戦線に復帰した。一方、パンと餃子は結界の内側に戻った。

ところが、パンが結界の外に何度も出る光景を見て、一人の元素戦士が結界を張っていない箇所を見抜いてしまった。その者が結界を張っていない箇所を通って二人に迫ると、餃子はパンの手を握って近くの場所にテレポーテーションした。しかし、結界の外に出た二人を狙い、元素戦士が大挙して押し寄せた。餃子は、テレポーテーションを連発して逃げ回った。悟空達は、二人の危機に気付いていたが、目の前の元素戦士の対処に追われて助けに行けなかった。

餃子がテレポーテーションの使い過ぎによる疲労で立ち止まると、パンが超サイヤ人2となり、餃子の手を握ったまま逃げ回った。しかし、元素戦士の方がスピードは上なので、すぐに追い付かれてしまった。そして、元素戦士の攻撃を受けて気絶させられた二人は、天津飯同様に基地内に連れて行かれようとした。しかし、颯爽と現れた悟空が二人を捕らえていた元素戦士を倒して救出した。悟空は、二人をそれぞれ脇に抱え、足だけで元素戦士と闘った。

ようやく全ての元素戦士を倒した悟空達だったが、誰もが疲労し、ダメージを負っていた。厳しい戦いではあったが、一人も欠けずに済んだのは、単なる幸運ではなく厳しい修行の成果であった。悟空は、パンと餃子を地面に下ろして一息付いた。ところが、悟空の目の前にボラリスが再度降り立った。仲間の元素戦士が全滅させられたのに、ボラリスに苛立った様子は無く、余裕の表情で悟空達の労を労った。

「屑共の掃除、ご苦労」
「また、お前か。あれ?光ってねえな」
「先程は、元に戻されないよう光っていただけだ。これが本来の俺の姿だ」
「そうか・・・。サングラスを掛けたままだと闘い難いから、その方が都合良い。それより天津飯は?まさかドクター・ストマックが惑星ジニアに連れてったのか?」

悟空達と元素戦士との闘いは、長時間に及んだ。その間に、ドクター・ストマックが天津飯を惑星ジニアに連れて行く時間は充分あった。もし連行していたら、天津飯の救出が不可能になるだけでなく、ドクター・ストマックから惑星ジニアの場所を聞き出せなくなっていた。

「奴は基地の中で眠っている。あり得ない話だが、俺に勝てれば救出出来る」
「大した自信だな。まあ良い。ところで、何故お前は、他の元素戦士と一緒に闘わなかったんだ?仲間じゃねえのか?」
「ふっ。お前達に他の元素戦士を倒させた理由は、お前達の足元にある」

悟空達が足元を見ると、木や金の他に、たくさんの元素コアが四方に落ちていた。これ等の元素コアは、倒された元素戦士を形成していた物だった。

「お前達如きに倒される弱い元素戦士は、もう必要ない。『これからの元素戦士は、ボラリスさえ居れば良い』とドクター・ストマックは言った。俺も同感だ。ドクター・ストマックは、ポラリスを大量生産し、それを元素戦士にする腹積りだ。その際、足元にある元素コアを使う。宇宙空間に吹っ飛ばされた元素コアは回収出来ないのが残念だがな。お前達を倒した後、その計画は実行される」

元素コアは一つ作るのに時間も手間も掛かる。新たに元素コアを作るより、従来の元素戦士を形成していた元素コアを使えば、後はポラリスを用意すれば、最強の元素戦士の軍団が出来上がる。その為に悟空達を利用して、従来の元素戦士を倒させていた。

「だったら天津飯を連れて行かないで、真実の目を使わせれば良かったんじゃねえのか?そうしたら全ての元素コアを回収出来るはずだ。おめえがオラ達に勝ったらの話だけどな」
「そうしたいのは山々だったが、元素戦士とて馬鹿ではない。元の素材に戻されると分かっていて、素直に奴の術に掛かると思うか?元素戦士にとって元に戻る事は、死ぬのと同義だ。元に戻されまいと抵抗もするし逃亡もするだろう」

元素戦士が意思を持たないロボットの様に命令された事を忠実に行うだけの存在なら、わざわざ天津飯の真実の目に頼らずとも、元素コアを渡せと言われれば素直に応じている。しかし、意思を持つが故に自分の死に直結する命令には応じ難い。天津飯が真実の目を使っているのを見れば、例え命令に反してでも、それを避けようとするだろう。だから全ての元素コアを回収出来ないとは分かっていても、悟空達に元素戦士を始末させたのである。

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