襲撃してきた二人の元素戦士を返り討ちにした悟空達は、リマ達三人を伴ってカプセルコーポレーションに移動した。ピッコロは、マズを倒して入手した元素コアをブルマに渡し、その解析を依頼した。そして、元素コアから元素戦士の弱点を見つけられるかもしれないという淡い期待を抱いていた。
ブルマが元素コアの解析をしている間、別室に移った悟空達は、これまでのジニア人との争いの経緯をリマ達に話した。ジニア人の知能の高さや野望の大きさに、三人ともショックの色を隠せなかった。
「以前、ウーブが魔王の座を狙った理由が分かった。それにしても水臭いぞ、悟空。何でジニア人の事を隠してたんだ?」
「おめえ達を巻き込みたくなかったからだ。しかし、今はそんな事を言ってられねえ。ジニア人に対抗する為、力を貸してくんねえか?天津飯、餃子。おめえ達の力が必要なんだ」
悟空は、天津飯と餃子に協力を依頼した。それも唯一無二の貴重な戦力としてである。過去に幾度も共闘してきたが、ここまで熱い期待を寄せられたのは、流石に初めてだった。二人に拒む理由は無かった。ところが、天津飯が応じる前にリマの横槍が入った。
「勝手な事を言うな。天津飯と餃子は、俺の部下だ。二人の力を借りたければ、俺を通してからにしろ」
「そうか。じゃあ天津飯と餃子を貸してくれ。おめえも加わってくれると助かる」
「ふっ。答えはノーだ。ジニア人とやらは、お前達だけで倒せ。俺達には関係無い」
リマのつれない返事に、悟空は軽い怒りを覚えた。しかし、ピッコロが助け舟を出した。
「ジニア人は、何千億もある銀河を全て手に入れようと企む強欲な連中だ。魔界の存在を知れば、間違い無く魔界も支配しようと攻めてくるだろう。それでも良いのか?」
「そ、それは困る」
「だったら俺達に協力しろ。大魔王にまでなった貴様は、大きな戦力になる」
「ぐ・・・仕方ない」
リマは、悟空達と共に闘うのが心情的に嫌だった。だから悟空の申し出を断った。しかし、魔界を治める者として、魔界を脅かす存在を無視する訳にはいかない。自分達の力だけでジニア人を撃退する自信が無ければ、悟空達と共に対抗せざるを得なかった。なので渋々ながら申し出を受けた。こうしてリマ達三人は、悟空達と共に闘う事になった。
この時、研究室で元素コアを解析していたブルマが、ブラを連れて部屋の中に入ってきた。
「ピッコロ。悪いけど解析は無理ね。これを作ったドクター・ストマックって人は、知能指数が七千五百もあるんでしょ?とても解析出来る様な代物じゃないわ。でも、色々と実験して分かった事があるの」
ブルマが元素コアの解析を試みる過程で、どんな元素戦士が存在し得るか実験していた。まず庭に出て薪に火を付け、その火に向かって元素コアを投げた。すると元素コアが火を吸収してマズを形成した。しかし、ブルマに随伴していたブラがマズを殴ると、マズは元の火に戻った。元素コアは火から離れ、近くの土の上に転がった。この話を聞いて、トランクスが血相を変えた。
「俺達抜きで、そんな実験をしたら危ないじゃないか!」
「平気よ。軍手を着けていたから火傷してないわ」
「そういう問題じゃない!火が小さかったから良かったが、もしブラの手に負えない元素戦士になっていたら、二人の身が危なかったじゃないか!」
「大事な話をしてたんでしょ?途中で邪魔したら悪いじゃない」
ブルマもブラも命知らずというか、楽天的だった。興奮するトランクスを余所に、ブルマは話を続けた。
「土の上に転がった元素コアを見て、私は疑問に思ったの。何で土に反応しないのかなって。そこで土から泥団子を作って、その中に元素コアを入れると、土の元素戦士が出来たの。他にも木や金も元素戦士にしようと思って、元素コアを触れさせたんだけど、何の反応も無かった。でも、穴を開け、穴の中に元素コアを入れると元素戦士になったわ。全員ブラが倒したけどね。つまり元素コアを接触させるだけでは駄目で、内部に入れないと元素戦士にならないわ」
悟空達は、ブルマ達の大胆さに飽きれていた。ブラでも倒せる程度の元素戦士だったから良かったものの、下手をすれば二人とも殺されていた。悟空達の内の誰か一人でも側に居れば問題無かったが、そんな事すら思い付かない程、二人は元素コアの実験に夢中になっていた。いずれにしても悟空達にとって有力な情報を得られなかったが、どんな種類の元素戦士が居るかが少し分かった。
その頃、地球から遠くない星に、ドクター・ストマックの基地があった。その基地の内部では、ドクター・ストマックが食事をしていた。「宇宙一のグルメ」を自称する彼は、美味しい物を食べ過ぎて肥えた体型だった。白衣を着ているがボタンを留められず、太鼓腹が露になっていた。しかし、当の本人は自分の体型を気にせず、征服した星々から集めた食材で作られた絶品料理に舌鼓を打っていた。
ドクター・ストマックの側には、マズが立っていた。同じマズでもピッコロが闘ったのとは違い、弱火を元に形成されたので、近くに居られても温かい程度だった。落ち着かない態度のマズとは対照的に、ドクターストマックは、至って冷静で、スープをスプーンで掬って飲んでいた。つい耐え切れなくなったマズは、ドクター・ストマックに質問した。
「ドクター・ストマック。どうして落ち着いていられるのですか?サイヤ人達が今にも攻めて来るかもしれないのに。奴等の内の一人は、元素戦士を元に戻してしまう技を持ってるんですよ。元素戦士が居なくなれば、あなたの身も危うい」
ドクター・ストマックは、スプーンをテーブルの上に置き、ナプキンで口を拭ってから答えた。
「落ち着け。俺が何の為に二人の元素戦士を地球に送り込んだと思っているんだ?奴等を皆殺しにする為じゃない。奴等の力を探る為だ。そして、その収穫は大きかった。元素戦士を元に戻してしまう技があるなら、それに対処すれば良いだけだ。全面対決になる前に知れて良かったではないか」
「おお!それでは奴等が攻めて来ても、俺達は元に戻らず、奴等を皆殺しに出来るという訳ですな?」
天津飯の真実の目の対処法があるならば、後は小細工抜きの総力戦となる。そして、人数差で悟空達を圧倒出来ると思い、マズは安心した。しかし、ドクター・ストマックは冷笑した。
「お前達が全員で闘っても、確実に勝てるとは限らんぞ。奴等の力を甘く見るなよ」
「え!?まさか俺達全員で闘っても、負けるかもしれないんですか?だったら、どうして落ち着いていられるんですか?」
「ふっ。良い物を見せてやる。付いて来い」
ドクター・ストマックは、食事を中断し、マズを連れて別室に移動した。その部屋の中には、直径二メートルもある白い球が置かれていた。そして、その球の中央には、小さな穴があった。
「マズよ。これを持ち上げてみろ」
ドクター・ストマックは、マズに白い球を持ち上げるよう促した。マズは、言われるがままに持ち上げ、その余りの軽さに驚いた。
「な、何だ、この軽さは!?まるで綿を持ち上げているようだ・・・」
見た目とは裏腹に、白い球には余り重さが無かった。マズは、訳が分からないまま白い球を床に置いた。
「では次に、こいつを殴ってみよ」
「え!?良いんですか?壊してしまいますよ」
「構わん。思いっ切りやれ」
マズは、言われた通りに白い球を本気で殴った。ところが、次の瞬間、マズの拳に激痛が走った。一方、白い球には罅一つ入らなかった。
「軽いくせに恐ろしく硬い・・・。これは一体何ですか?」
「これは俺が作った宇宙で最も軽く、最も硬い金属であるポラリスだ。お前も知っての通り、ドクター・キドニーが敗れ、俺がサイヤ人を倒すよう指示された。相手はジンを倒す程だ。既存の元素戦士では束になっても勝てないかもしれないと思い、このポラリスを作った。このポラリスが元素戦士になったら、どうなると思う?」
ジンは、ジニア人の間で、比類なき強者として知られていた。そのジンの敗北は、ミレニアムプロジェクト開始以来の最大のニュースとなっていた。知能指数ではドクター・キドニーを大きく上回るドクター・ストマックですら警戒心を抱かせる程に衝撃的なニュースであり、自分にお鉢が回って来た時も、これまでと同じやり方ではドクター・キドニーの二の舞になると思い、新たな金属創りに着手した。
「軽さ故にスピードがある。硬いから防御力が高い。その硬さやスピードで繰り出される攻撃は、想像を絶する破壊力となる。正に完璧な戦士が誕生する」
「そうだ。俺が余裕でいられる理由が分かったかな?サイヤ人達が攻めてきたら、その時が奴等の最期となる」
ドクター・ストマックは、中断した食事を再開する為、足早に部屋を出て行った。後に残ったマズは、自分達の勝利を確信し、声高に笑った。
コメント