首と胴体が切り離され、死んだはずのジンだったが、首だけになった状態で笑みを浮かべていた。それを見たフリーザが驚くのも無理は無かった。
「ば、馬鹿な!?ど、どうして、こいつは笑っているんだ!?たまに首を刎ねられても生きてる奴は居るが、それは僅かな時間のみ生き長らえただけで、とても笑っていられないはずだ!」
「間抜けめ。俺がこれ位で死ぬと思っていたのか?」
「何だと!?」
フリーザが仰天している間に、首の無いジンの胴体は、自分の首を拾い上げて胴体との切断面に置いた。すると首と胴体が繋がり、ジンは元の状態に戻った。
「・・・な、なるほど。分身は首を刎ねられると死んでいたが、オリジナルは平気な様だな」
「そうだ。俺は究極生命体。そう簡単に死ぬはずなかろう。当てが外れて残念だったな」
フリーザがジンとやり取りしている間に、悟天とレードが彼等の側に近付いて来た。悟天は、ジンとの実力差を痛感していたが、それでも倒す気満々だった。レードは、もう一人で戦おうとは考えていなかった。これ以上、意地を張って一人で戦い続けるよりも、皆と共に闘って、より確実にジンを倒すつもりだった。
「くっくっくっ・・・。さあ来い!お前達の結束した力を見せてみろ!」
まずセルが右のパンチを繰り出しが、ジンは飛び上がってパンチを避けた。次にフリーザが飛び蹴りを、レードが破壊光線を放ったが、ジンに両方とも回避された。最後に悟天が十倍かめはめ波を放ったが、ジンは右手で受け止めた。ところが、悟天の隣にセルが立ち、超かめはめ波を放った。二人のかめはめ波は合体して特大かめはめ波となった。流石に右手だけでは支えきれず、ジンは左手も使おうとしたが、間に合わずに右腕を吹き飛ばされてしまった。
「千切れたのではなく、吹っ飛んでしまっては、もう接合出来まい。片腕が無い状態で闘っても勝ち目は無い。貴様は、もう終わりだ!」
「ふっ。それはどうかな?」
ジンが右腕のあった箇所に力を込めると、新たな右腕が生えてきた。ジンには切断された体の部位を繋げるだけでなく、失った体の部位を再生する能力もある事を知り、悟天は悔しがった。セルの力もあったとはいえ、自分がジンに致命的な一撃を与えたと思ったからである。
「孫悟天君。ガッカリしたかね?」
「ちっ。自らを究極生命体と言うだけあって、再生能力もあるという事か・・・。しかし、流石にダメージはあるようだな。先程に比べて気が減っているぞ。体力までは回復出来ないらしいな」
先程の悟天の十倍かめはめ波を、ジンは片手だけで防ごうとするから、セルの超かめはめ波と合体した特大かめはめ波に右腕を吹き飛ばされてしまった。もし最初から両手を使っていれば、防ぎ切る事までは出来なくても、弾き飛ばす程度は出来たはずである。また、四人同時に掛かって来るよう挑発しておきながら、四人相手に上手く対処し切れていない。以上の点から判断して、ジンには付け入る隙があるから、悟天は、この先も自分が活躍する機会はあると思った。
ジンが悟天やセルの相手をしている間に、レードとフリーザが別の動きをしていた。彼等は、協力して一つの巨大なエネルギー球を作り、それをジンの背後から投げつけた。対するジンは、エネルギー球の接近を察知し、振り向いて巨大な気功波を出して応戦した。しかし、側面から悟天がエネルギー波を放ち、それがジンに当たって注意を引き付けた。その一瞬の隙が致命的となり、ジンは、競り負けてエネルギー球に全身を飲み込まれた。
ジンが立っていた場所を中心に大爆発が起き、その近くに居た悟天は、後方に吹っ飛ばされてしまった。レードとフリーザは星の中心部を傷つけないよう調整しながらエネルギー球を放ったので、星が爆発する事はなかった。ただし、地面に大きな穴が開いた。そして、ジンの姿が見えず、気も感じられなかったので、レード達は、ジンが死んだと判断した。
「こんなに呆気無く終わるなら、最初から四人で闘うべきだった。そう思わないか?」
「いや。最初に俺が一人で闘い、ジンが想像以上に恐ろしい敵だと全員が認識したからこそ一致団結した。最初から全員で闘えば、数を頼りに油断し、全滅していたかもしれない」
「飽くまで自分の作戦が正しかったと主張したいのか?詰まらない事を気にするんだね」
フリーザがレードと共同でエネルギー球を作ったのは、存在自体が危険なジンを一刻も早く消したかったからである。ジンを危険な存在だと思わなければ、レードが一緒にエネルギー球を作ろうと提案しても、フリーザは素直に応じなかった。何故なら、フリーザの望みは、レードとジンの共倒れだからである。ジンとの戦闘前、レードが殺された後からが自分の本格的な出番だとフリーザは考えていた。
そんな邪な企みをレードが見抜いた訳ではなかった。しかし、幾ら父親とはいえ、先日まで敵だったフリーザを、レードは心から信頼していなかった。悟空の様に裏表が無い人間ならまだしも、フリーザは何を考えているか分からない。そんなフリーザと共闘する為には、彼に危機感を抱かせ、自分と手を取り合う以外に生き残る道が無いと思わせる必要があるとレードは考えていた。
「それよりもゴカンが気になる。あいつはセルジュニア達と共に、現在ドクター・キドニーを探している。あいつ等と合流しよう。ドクター・キドニーを取り逃がす訳にはいかない」
「良いだろう。頼りとするジンを失ったドクター・キドニーの残された手段は、逃げる事しか無いからね」
レードとフリーザは、ゴカン達の気を感じられる地点まで飛んで行こうとした。悟天やセルも彼等の後に続こうとしたが、この時に悟天が異変に気付いた。何と飛び散ったジンの肉片が、空中で一箇所に集まりだしたのである。
「レード様!待って下さい!ジンは、まだ死んでいません!」
「何!?」
レードが驚き、立ち尽くしている間に、ジンの肉体は再生され、やがて完全復活した。レードは無論、フリーザやセルも大いに驚いていたが、唯一悟天だけは冷静だった。これまで魔人ブウや一神龍、ジフーミや魔神龍と、体が四散しても復活する敵を何度も見てきたので、いい加減に見慣れたからである。
「あのフリーザ達の攻撃でも、ジンの核を破壊するには至らなかったのか!?」
「いや。ジンは、お前の様に核を破壊すれば死ぬ奴じゃない。肉体の再生が核からではなかったからだ。おそらく細胞一つ残さず完全に消し去らないと、何度でも復活するだろう。俺は、そういう奴を何人も見てきた」
「細胞一つ残さずだと!?恐ろしく厄介な敵だな・・・」
対するジンは、もう少しで消滅していたにも拘らず、余裕の笑みを浮かべていた。
「ふふふ・・・。お前達の力を見縊り過ぎていた。これからが本番だ」
「何が本番だ。今度こそ殺してやるよ。僕達の力なら、訳も無い」
「ふっ。果たしてそうかな」
ジンは、一瞬でフリーザの背後に回ると、フリーザの後頭部を殴った。殴られたフリーザは、前のめりに倒れた。フリーザの隣に居たレードは、すぐにジンに飛び掛かったが、あっさり背後に回られた。そして、レードはフリーザ同様に後頭部を殴られ、フリーザの上に覆いかぶさって倒れた。一連のジンの動きに、悟天とセルは仰天していた。
「先程までのジンより速く、強くなっている!こ、これは、一体どうなってるんだ!?」
「ほう。よく気付いたな。確かに俺は、より速く、より強くなった。死の淵から甦る事によってな」
「死の淵から甦るだと!?ま、まさか貴様の体を構成する細胞の中には、サイヤ人の細胞もあるのか!?もしや捕らえてある孫悟飯の細胞か!?」
ジンは、複数の生物の細胞が元になり、更に細胞を遺伝子操作して誕生した生命体である。その細胞の中に、サイヤ人が含まれているとセルは考えた。
「いいや。孫悟飯の細胞は、ドクター・ハートという者が所有しているが、まだ彼女から譲り受けていない。しかし、俺を創る際に使用された無数の生物の中には、祖先がサイヤ人である者が居たのかもしれない。現時点では、この銀河以外に生存するサイヤ人の姿は確認されていない。しかし、これまで征服した銀河の何処かに、先祖にサイヤ人の血が混じっている者が居て、その者の細胞を運良く獲得していたのかもしれない」
サイヤ人は古い時代から生息していた事が、ドクター・ハートの研究で確認されている。中には悟飯や悟天の様に純血ではないサイヤ人が生まれたかもしれない。そうした者が代を重ねると、サイヤ人の血は薄れていく。そして、長い歴史の中で姿形が変われば、最早サイヤ人と見なされない。ジンの体を構成する細胞の中には、その者の細胞が使われている可能性があった。
「ちっ。フリーザ達の中途半端な攻撃が、却って貴様を強くしてしまった訳か・・・。これでは迂闊に攻撃出来んぞ」
只でさえ強いジンが、更に強くなった。レード達は、一転してピンチに陥った。
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