完全に石化するのを防いだレードだったが、すぐには戦闘を再開しなかった。自分の元に歩み寄るジンを見据えつつ、レードは、今後の対策を考えていた。ジンのオリジナルが使う特技が事前に分からなかったから、まず自身が単独で闘って様子を見たが、予想以上に手強い敵であると分かった。まだ特技は二つしか判明していないので、この先も自分一人で闘うべきか、あるいは悟天達も加えて全員で闘うべきかで心が揺れていた。
そんなレードの迷いを見抜いたジンは、レードの目の前まで来ると、レードを挑発した。
「攻め倦ねているようだな。お前一人で手に余るなら、仲間の力を借りたらどうだ?」
「余計なお世話だ!戦士としての誇りがある者なら、すぐに手助けを求めたりしない」
「誇りだと?下らん。過程はどうあれ、結果として死んでしまっては、誇りも糞も無い。お前が意地を張って一人で闘い続けるつもりなら、後悔させてやるまでだ」
「俺を甘く見るなよ!ど素人が!」
激怒したレードは、仲間と共に戦う選択肢を捨てた。後退してジンと距離を置くと、右手の人差し指をジンに向け、無数のエネルギー弾を放った。ところが、ジンは自身に向かってくるエネルギー弾を全て躱した。エネルギーの無駄遣いになると判断したレードは、直ちに攻撃を止めた。感情に走ったレードを、ジンは冷笑した。
「大分焦っているな。接近戦で勝ち目が無いから、距離を置いて戦えば勝てるとでも思ったのか?あんな攻撃をするようでは先が見えたな」
「くそっ!当たりさえすれば貴様なんか・・・」
レードは苛立っているせいか攻撃の仕方が単調であり、いつもの冷静さが無かった。観戦している悟天は、レードの身を案じていたが、同じく観戦しているフリーザとセルは、レードを扱き下ろした。
「レードの奴、最初は一人で闘うと言い張るから任せてみたが、あんな無様な闘い方しか出来ないのか?このまま続けても、レードが逆転するとは思えんな」
「だからと言って、今すぐ加勢するのは早計だね。レードも僕達の助けを求めていないはずだ。僕達は、もう少し様子を見て、ジンの特技を見極めるべきだ」
「それまでレードが生きていれば良いがな」
ここでレードとジンの闘いは、新たな局面を迎えようとしていた。
「お前からは色々と学ばせてもらった。お返しに俺の新たな技を見せてやろう」
ジンは上体を反らすと、ジンの胸部と腹部の間に穴があるのがレードに見えた。そして、その穴から白い液体が噴出された。液体はレードに向かって飛んでいったが、レードは苦も無く避けた。液体が地面に落下すると、その部分の土が溶けて無くなった。白い液体の正体は、強い溶解力がある消化液だった。ジンは消化液を続けて噴出したが、またもやレードは避けた。
一方、フリーザとセルは、ジンの行動に首を傾げていた。
「あれは栽培マンが使っている技に似ている。まともに喰らえば致命傷だが、あんなのをレードが喰らうとジンは本気で思っているのか?あんな低レベルな技を使うようでは、高が知れる。ジンの事を少し買い被り過ぎていたのかもしれないね」
「スピードは速くないし、正面にしか飛ばせないようだ。レードでなくても余裕で躱せるだろう。しかし、ジンは知恵が回る。あれにも何か意味があるのかもしれない」
レードに全く当たらないにも拘らず、ジンは消化液を出し続けていた。疑問に感じたレードは、避けながらジンに質問した。
「何時までこんな下らない攻撃を続けるつもりだ?」
「ふっふっふっ・・・。無論この程度の技で、お前を倒せるとは思っていないさ。今までは単なるお遊び。これからが本番だ」
ジンが消化液を出すのを止めると、消化液が出ていた穴から半透明の白い玉が飛び出してきた。玉は、レードに向かって漂いながら飛んでいき、レードの手前に来ると破裂した。液状となって四方に飛び散り、その一部がレードの体に付着した。すると、付着した箇所の肉が解けてしまった。レードは、激痛に苦しみながらも、玉の正体を見極めた。
「い、今の玉は、先程の消化液を球状にしたものか!ゆ、油断した!」
「そうだ。正体を見極めるのが遅かったな。まっすぐ向かってくる液状の時とは違い、球状だと空中を漂うから、呆気に取られて動かないだろうと読んでいた」
「な、なるほど・・・。しかし、種が分かってしまえば、もう通用しない」
「ふっ。それはどうかな?」
今度はジンの腹の穴から、たくさんの白い玉が飛び出してきた。レードは慌てて上空に飛び上がった。玉より高い所に移動すれば当たらないだろうと予想したからである。ところが、今回もジンの方が一枚上手だった。ジンが両腕を上に勢いよく挙げると、その衝撃で全ての玉が急上昇し、レードの体に触れて次々と破裂した。レードは、直前で防御したが、全身に傷を負って地面に墜落し、うつ伏せに倒れた。
観戦していた悟天は、一刻も早くレードの助っ人に行くべきだと思ったが、同じく観戦していたフリーザは、違う事を考えていた。レードの資産を狙っているフリーザにとって、この闘いの理想の決着は、レードとジンの共倒れである。難敵ジンが死ぬのを望むのは当然だが、レードも同時に死んでくれれば、フリーザは苦労せずにレードの持つ全てを引き継げるからである。なので救援が遅れた風を装ってレードを見殺しにし、それから参戦するつもりだった。
「こ、このままでは、レード様が殺されてしまう!早く助けに行かないと!」
「待て、孫悟天!まだレードが負けた訳ではない。もう少し様子を見て・・・」
「そんな悠長な事を言ってる場合じゃない!俺は行くぞ!」
悟天は、超サイヤ人5に変身すると、フリーザの制止を振り切り、ジンに向かって飛んでいった。これはフリーザにとって喜ばしい事ではなかった。フリーザの計画では、悟天を悟空に匹敵する位に強くし、それから悟空と血みどろの親子対決をさせる事だった。しかし、この場で悟天が死んでしまったら、その対決が見られなくなる。そうなっては面白くないので、フリーザはセルを伴って、渋々参戦する事にした。
ジンに向かって行った悟天は、まず飛び蹴りを喰らわせようとした。対するジンは、悟天の動きを事前に察知し、悟天の蹴りを容易く躱した。続けて悟天は、パンチを何度も繰り出したが、ジンには全く当たらなかった。それどころか、ジンは、悟天のパンチを搔い潜り、悟天に一撃を見舞った。悟天は、地面に何度も跳ね返りながら吹っ飛ばされ、後方にあった岩山に減り込んだ。超サイヤ人5になって相当強くなった悟天だが、それでもジンとの実力差は大きかった。
次にセルが正面から飛び掛かった。セルは、ジンと手四つの体勢となり、ジンと力比べを始めた。両者の力は拮抗しており、どちらも一歩も引かなかった。しかし、ジンは、セルと純粋に力比べを続けるつもりはなく、手四つの体勢のまま体の穴から消化液を噴出した。セルは、避ける間も無く消化液を浴び、胴から下が溶けて無くなってしまった。
この時、ジンの斜め後ろから気円斬が飛んで来て、ジンの首を胴体から切り裂いた。気円斬は、セルの横を通過し、何処かに消え去った。気円斬を放ったのは、フリーザだった。再生能力のあるセルが囮となってジンの動きを止め、その間にフリーザがジンの止めを刺す連携であった。思惑通りに事が運び、勝ち誇ったフリーザは、セルの元に歩み寄った。
「大丈夫かい?セル」
「ふっ。こんなの問題ない。はあっ!」
セルの胴体から、消失した肉体の部分が再生された。
「どんなに頭が良くても、戦闘の経験が乏しければ、次に何が起こるか想定出来まい。所詮、私達の敵ではなかった」
「同感だね。慎重になって相手の出方を窺うよりも、こちらが先に仕掛けるべきなんだ。相手がどんな力を持っていようと、それを使わせなければ良いんだからね」
フリーザは、得意気になり、足元に転がっているジンの首を踏みつけようとした。ところが、死んだはずのジンが笑みを浮かべたので、フリーザは足を上げたまま仰天した。
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